第24話 ミスリルの特徴
レネとエクレスクへみせた宝石はいろいろな形状があった。
カットは楕円形のオーバルカット、しずく型のペアシェイプカット、猫目型のマーキスカット、ハート型のハートシェイプカットを各2個ずつ作った。もちろんカット面同士の頂点がずれないように、気をつけて鉱物加工を唱えた。
「ふたりとも喜んでくれてうれしい。ほかにスピネルとトルマリンが作れるから、今度来るときにでももってくる」
「それは楽しみだ。せっかくだから少し岩を掘ろう。鉱物をスキルで収納できるようだから、好きなだけ詰め込んで構わない」
エクレスクがドラゴンの姿に戻って、爪で壁を引っかくと簡単に壁が崩れる。俺の背丈以上の山がいくつもできて、掘り終わったさきから収納空間へ移動させる。
思った以上にミスリルの量が増えてくれたので、これなら俺とレネの武器を作れそうだ。もちろん宝石関連の鉱物もたくさん収納できた。拠点に戻ってからも武器を作れるが、完成品をエクレスクにも見せたい。
『大量のミスリルが入手できたから、この場で武器を作っても構わないだろうか。平気なようなら短剣も作るので、要望を教えてほしい』
『ミスリル製品を早く見たいですから、この場での作製には賛成ですわ。短剣ですが投擲用はかさばらないように幅を小さくして、接近用はいろいろと試したいので両刃で種類を変えてほしいです』
レネの了解も得られたので、この場で武器を作ろう。
「これだけの量があれば、宝石や武器に使用できて拠点も充実できそうだ。これから武器を作るから、エクレスクにも見ていてほしい」
「何も道具はないがスキルで作るのか」
「その通りだ。鉱物関連なら収納以外にも応用が効く」
「どのような武器を作るか楽しみだが、キュウヤのスキルは特別に思える。あまり人前で見せないほうがよさそうだ」
エクレスクとは会ったばかりだが、いろいろと教えてもらってうれしい。
「スキルを使うときは注意する。さっそく武器を作ってみる」
最初に頭の中でミスリル原石を鉱物加工でインゴットの塊にする。鉱物鑑定で確認すると、すべてが高品質の状態だった。
ミスリルは硬い鉱物だとは思うがもっとよくするために炭素鋼を思い出して、炭素を使って鉱物合成を実施した。どのような名称に変化したかと思って鉱物鑑定で確認すると驚きの結果だった。
「まさか、炭素が不純物になるとは思わなかった」
「どうしたのですか」
俺のつぶやきにレネが反応した。
「ミスリルを強化するために炭素と一緒に鉱物合成を行ったら、不純物が少し入っているミスリルになった。鉄と炭素の鉱物合成は炭素鋼になったが、ミスリルは異なる特徴があるようだ」
炭素以外に鋼玉や尖晶石も試してみたが、結果は同じで不純物と表示された。
「ミスリルは合成がむずかしいのかしら」
レネの言葉にうなずける部分もあった。俺にはミスリルの特徴を知らないから、元の世界の常識では対応できないのかもしれない。元技術者としては効率的にミスリルの特徴を確認したいが、いまは情報が何もないから総当たりを試すことにした。
手持ちにある鉱物を試しても駄目で、新たに入手した沸石や雲母も結果は不純物であった。のこりはルビーとサファイアなので、ルビーでも鉱物合成を試す。
「ミスリルの表示が、不純物から鉱物強化が中、炎威力・耐性強化が中となった」
「どの鉱物を試したのかしら」
「鉱物でなくてルビーで鑑定結果が変化した。ミスリルは宝石となら性能が変わるのかもしれないから、ためしにサファイアでも試してみる」
結果は予想通りで、鉱物強化が中、水威力・耐性強化が中の結果となった。新たに紫色のファンシカラー・サファイアを作って鉱物合成をしたら、鉱物強化が中、耐久性強化が中になったので、ふたりに結果を説明した。
「この世界の鉱物は面白い法則があるのかもしれません」
「ミスリルと宝石の合成とは今まで聞いたことがない。キュウヤのスキルはわしの知識以上に特別なのかもしれない」
レネもエクレスクもおどろきの声を上げていた。俺も自分のスキルながらおどろきを隠せないが、合成のミスリルは実用的な追加効果がうれしかった。
「詳細はほかの宝石を作って試してみたいが、いまは武器作りに専念したい」
「完成を楽しみにしていますわ」
「さっそく作ってみる」
前回は刃と柄で材質を変えたが、今回はすべてを合成のミスリルとしたい。追加効果は炎や水の影響が不明なため、鉱物強化と耐久性強化で統一して、接近用の短剣から作り始める。
刃の片側をノコギリ形状にしてレネの希望を取り入れた。鍛造や焼き入れは道具がなくてできないが、刃の部分のみ鉱物加工を使ってミスリル組織を変える。鉱物空間の機能を生かして、ミスリル組織の状態も確認した。
想定通りに作れたので、使い勝手はあとでレネに聞いてみよう。
鞘は炭素鋼を細い針金状にして、2重の網目模様で作った。外から中が見えづらくなって、軽量だけれど強度を保てる作りにした。
投擲用の短剣は幅を1センチと細くして、空気抵抗を減らす流線型を心掛けた。ミスリルが強度を確保してくれるので、極限まで軽量化を図った。
鉱物加工で作った短剣を鉱物収納で取り出した。
「接近用と投擲用をそれぞれ作ったから、使用感を教えてほしい」
「さすがキュウヤ、作るのが早いです。さっそく感触を試してみますわ」
レネが短剣を手にとって少し離れた位置へ移動した。かわりにエクレスクが俺の前に歩み寄ってきた。
エクレスクは視線をレネに向けていた。レネは石を放り投げて短剣の切れを確認していて、短剣に切られた石はきれいにふたつへ分かれて地面へ転がった。切れ味は問題なさそうで、耐久性は使いながら確認していきたい。
「さきほどの岩が武器に変わるとは驚くばかりだ。宝石もすごかったが、今の短剣も高品質で一流の部類に入るだろう」
「エクレスクがよいと判断してくれて作り甲斐がある。実用的な武器が作れたと思うから、魔物討伐もいままで以上に楽になりそうだ」
レネが軽く振っただけで簡単に石が割れて、ミスリルは武器と相性がよかった。
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