第6話 三振りの刀
本題……あっ
「イケメンなだけのあいつ?」
思わずもれる本音を口にすると、皆の視線が私に集まる…………なんで?
「ウァハハハハ!」
「はっきりいうなよ〜」
「……やる……」
先生は腹をかかえて爆笑し、 ムツが呆れかえり、目を点にする志村。
えっ、私なにか言った。
「俺は怖くていえないすよ」
志村も黙っていたのか……察していたみたい。
「わかる。わかる。ヒドイからね」
先生は心底同意したとうなずく。
言葉をにごしているけど、裏をいろいろと知っているのか。
あいつ、私をバカにしてるし……ハラたつ。
「下手なくせに俺達をバカにするのは許せないす」
志村が手のひらをにぎりしめていた。
そのくやしさはわかる
私も許せない……
「おまえさんもどっこいだろ?」
先生の非常にツッコミにも、志村は首をふった。
「俺はしょうがないけど、ムツ先輩をバカにしてるのは許せないす」
志村はいら立ちをかくさない。
おいおい、志村くん、そこまで先輩愛強くない。
というか……志村はワンコ属性?
自分がバカにされるよりムツか……とうのムツは恥ずげに頭をかいていた。
そうなるよね……。
「今は名あり事務所が強いからな」
ダンサー業界もそうだ。下手なアイドルをたて踊る。あいつらは大手というだけでおごり、業界によりかかって腐敗している。
それは裏から後ろから見ていてもイヤになる。
まるで、寄生虫みたい……
「たいした事ない事務所なのに」
業界から見れば下の方から数えたほうが早い。
けど、私たちはそれ以下のよせあつめ……
ここで、便利に使われ続けるのはイヤだ。
「だから、ひっくり返したい」
ムツは瞳を輝かせて提案した。
別の何かをみるように。
「どうやって?」
私が好奇心をおさえきれずたずねてみた。
「背景が目立つアクションしようぜ」
ここで、ムツは悪い顔をする。
つられて、私もゲスい笑みを浮かべた。
これは悪の帝国みたいだ。
「道具を用意してみた」
ムツがとりどしたのは三つの武器だった。
並べると凸凹な刀達。
私の前に置かれたのは。全体で30センチほどのアラビア短刀、おもちゃの宝石がこれでもかと飾られ遠くからでも目立つ、これは落としてはいけない。私のミスが見抜かれるかも……
冷や汗が流れる。
次に白い鞘の脇差 、これが一番マシ。けど黒の袴の上からなら目を引くな。
「カシュー漆と卵の殻で作ってる。小道具も苦労したらしいぜ」
ドヤ顔で口にするムツ。この脇差はムツのか……
「それより」
一番に注目をむくのは志村の刀か。
おもわず志村の目がキラキラ子供のように輝いていた。
私はあっけにとられる。
長い刀だった……佐々木小次郎もクレームいれそうなほどに長い。小学生高学年ほどの身長あるかも……
全体で140センチほどの赤い鞘の刀。これは目立つ。
「おい、善が使えるのかよ?」
先生が呆れ果てて行った。
いや、使う前に抜けるの、こんな長いの?
けど、ムツは笑顔でいる。
「刃だけなら、三尺三寸居合師には魅力的だろ? 」
三尺三寸は1メートル 普通の刀で二尺三寸 70センチほどだそうだ。
そういえば、志村は居合い出身とか言ってたけど。
無茶じゃあ……ない?
「うす、さすが先輩わかってるすね」
志村は笑う。
けど、それって背景で一番に目立つのは志村?
こいつは居合いは段持ちだけど殺陣は級も持ってないのに、本当に大丈夫?
思わず、不安がもれた。
「ねぇ。シンを善に集めるのは危なくない」
しかし、ムツと先生がきょとんと目を点にしてる。
また、おかしなこといったらしい。
「本当のシンはお前、ちいたんだよ」
先生がすんなりと口にする。
私の息が閉じて、脳裏が止まった………
やがて、ポロリと声がもれた。
「えっ?」
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