第5話 ダンサーと殺陣師の間
気持ちいい〜
思いっきり動くのが、こんなに楽しいなんて……
最後の抜き胴が決まるときは、かなり爽快。
「やる……」
志村が言葉をもらしていた。
それだけに歓喜が持ち上がっていく。
けど、ムツは何かを考えるみたい。
「どう」
ムツは竹光をながめ思うことがあるようだ。
あの止めることができなかった一撃で竹光が凹んだとか?
「 体のキレも良いいし、手順もちゃんとこなしてる。上手いよ、ちいたん……」
そうなんだ……認めてくれているんだ……けど、百点じゃない、もちろんわかる。
だけど、ここは先に怒りを表しておく。
「ちいたんいうな」
そんな小さな非難にムツは目を丸くし、私をみおろしてる。よけいにムカつく。
「けど、ちいたん……お前さんはダンサーだね」
第三者から声をかけられた。
この声は……知っている。
私がちいたん呼びをされるのはこの人のせいだ。
「先生……私のことちいたんやめてください」
私の小学生のころのダンスの先生の丸山紗里亜。そして、私にちいたんのあだ名をつけた人だ。
小さくてかわいいということだけど、今は160センチ超えてるし……小さいころのあだ名なんだから、と思いつつ逆らえない。
30を超えても、若々しい長身美女のお姉さん。
ダンサーから殺陣へとマルチで演じているのはあこがれている……私とはちがい器用だと思う。
「でも、先生どういう事ですか?」
先生に質問したのに、口を開いたのはムツだった。
「観客をみてるのはいい……けどな、俺を見てる時間が少ない」
あっ! 私はムツとの動きを体で対応してた。視線の八割は観客……
「それは思った。誰と闘ってるんだって」
それは志村も同意見みたい。観客としてみてた側の意見なら、それは正しい実感だろう。
「殺陣は演技だ。観客はのぞき見されてる程度に考えたほうがいい。けど、動きは観客を意識する」
考えたこともなかった。大きな違いに私は衝撃を受けていた。
演技とダンスは違っていた。そんな当たり前のこと。
「いや、むしろ、うれしいのさ。私が教えたことを覚え続けていることに」
先生は優しくフォローしてくれる……でも、私には痛い………
やめようとしても私を縛りつけて、次の目的地を閉じ込めようとする。
どうしたらいいのかな。
私はどこにいけばいいのかな?
暗い感覚がよぎる。
パチッン!
だれかが指を鳴ららす。
皆がハッとしてその音の発生源をしがし、その音の先はムツだった。
「俺達はここからひっくり返そうぜ」
ムツの目がこのグチャグチャな状況に燃えていた。
そのためのダメダメな背景アクション隊(今、命名した)を集めて、道を開こうとしている。
それは、今の私が向かおうとしてる世界を照らそうとしているようにみえる。
「まぁ、そんな反省を置いといて、本題に入ろうか?」
そうして、新章の幕を開いていく。
私は踊る そして、舞台は暗転す 七月七日(なつきネコ) @natukineko
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