第38話

車内の密室には、西條、野口、成世という御三家が集まってしまった。私が“郷”という名前じゃなくて本当に良かったと思う。



「くやしいけれどー♪お前にムチュウっ!」


「ギャランドゥ♪」


「ギャランドゥう!」


「ギャランドゥ♪」



西條と野口の合唱が始まった朝の9時前。はっきりとした頭で何度も左右を確認する。やっぱり…ここはまだ車内だ。パリピ会場じゃない。



そりゃあ朝からこれだけハジケていれば、アフター7は電池が切れるはずだ。いつも仕事の日の残業後は、私に「おんぶしてうちまで連れてって。」と言ってくる。(元気そう)  



 

「一夜限りの♪恋でもいいさっ、」

「ギャランドゥ!ギャランドゥ〜♬」 



 

「(死んだお婆ちゃんが喜びそう。)」 



    

西城秀樹のアカペラをBGMに1時間以上走れば、本日の春闘大会会場であるグリーンバレーに着いた。



大人用アスレチックも楽しめるアクティビティが充実した施設。イチゴ狩りまで楽しめるのだ。



「成世は練乳派?そのまま派?」



車を降りるなり、突然、西城さんにそんなことを聞かれた。



「え?イチゴ狩りの話ですか?」


「あ。やっぱいいや。成世の趣向を知ったところでオカズにもネタにもなんないし。」


「序盤はそのまま、中盤から練乳つけて、フィニッシュでまたそのままに戻る派です。」


「晴天の午前にフィニッシュとか言うな。」

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