第33話

野球少年だった池駒旭陽は、高校から不真面目な野球少年となってしまった。中学までは有力選手だったのに。



スポーツに強い高校に上がれば、当然のように上には上の奴らが現れて。厳しい野球の世界が、ヒシヒシと旭陽のプライドにのしかかった。



それでも推薦だからすぐには辞められず、不良落ちしそうなギリギリのラインで、池駒はなんとか野球部に在籍していた。



だから勉強では、相当手を煩わせていた。同じ高校ではなかったけれど、私が旭陽の夏休みの宿題を手伝ったこともある。



お姉ちゃんのことを散々いっておいてなんだけど、自分も旭陽に惚れた弱味で、彼の勉強を手伝っていたのだ。


 

そんな旭陽は昔、お姉ちゃんのことが好きだった。


 

「秋奈は相変わらず、能面そうで安定を保ってる感じだな。」


「それ、どういう意味?」


「昔から特に変わってなくて安心って意味。」



自分にはない、旭陽の眩しい表情。思い切り笑って、泣いて、怒って。いつだって全力で、迷いのない旭陽の表情が大好きだった。



でも告白するまでに至らず、そんな儚い恋のメロディは散ってしまったのだけれど。

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