第30話

バイオリン職人を目指していた元彼は、その道の師に弟子入りするために、渡欧するお金が欲しいと姉に縋ったのだ。いいように言われるがまま、渡欧先の費用も姉が全て工面していたそう。



ついには“初めてのア◯ム”で借金まですることになり、払いきれなくなった姉が私に縋った、というわけだ。



その金額は約1000万円にのぼる。  



何においても1位で、何をやっても器用にこなしてきたあの姉が、男にだけはどうしても金銭面で貢いでしまうのだ。



しかも、ハマる男は皆お金に汚い男ばかり。バイオリン職人=カントリーロードの概念は覆された。



キャバクラでもなんでも姉が働いて稼げばいいのだが、こうみえて姉は公務員。キャバなんて副業は持っての他。



そのため代わりに私がてっとり早く、資金をキャバクラで調達していた、というわけだ。         



「それよりも秋奈、あんな金額どうやって稼いだの?」


「頑張って稼いだの。私は合法的なことでしか稼いでないから、安心して私に感謝して。」


「ありがとう、ありがとうございます秋奈様ぁ。必ず利子つけて返しますからあ」



極めつけに、お父さんとお母さんには内緒にして欲しいと頭を下げられた。



姉は中学の教師をやっている。誰も男に入れ込むような女だとは思わないし、優等生であるイメージは、いまだ父と母にとっては健在だ。



だから私が好きだった幼馴染の男の子も、決して姉がダメ男やクズ男に入れ込んでいるとは思っていないのだ。

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