第27話

「あ、成世ちゃん!そういえば今度SE部門から営業に転任してくる子がいるんだけど、その子も春闘大会くるらしいよ?」



マリア先輩が、後ろから私の顔を覗き込んできた。



明るいキャラとは裏腹に、色香を放つ目元が麗しい。この人のように自然と表情を変えられていたら、処女をいつ断とうか、なんて悩みもなかったことだろう。



処女卒業のことを引きずってるみたいでやだやだ。



「SEから?…SEなんて技術職じゃないですか。」


「ねえ、びっくりだよね?!そんなに営業がやりたかったのかなあ。」


「逆じゃないですか?SEが嫌だったんじゃないですか?」


「でもその子も販売士の試験、満点だったらしいよ!」


「………へえ」


「成世ちゃんと同期らしいけど、知ってる?」



マリア先輩が社内報の転任者箇所を指し示す。能面の私が葬儀写真のように写っている。



それはさておき、その斜め下に載っている白黒写真は、ゆるいパーマのマッシュヘアに丸眼鏡をかけている男性社員だ。前髪も長めで、目元がよく見えない。



写真の下にはこう記されていた。 


      

七三倉なみくら ばん



…ば…バン……



笑いそうになるのをこらえる。

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