第26話

「成世、今度の組合の春闘大会来るよな?」


「…ああ、湖で海鮮バーベキューとイチゴ狩りでしたっけ。」


「そうそう!俺と野口のぐちが幹事。」


「行きませ」


「来るなら初回特典で挨拶させるからな?」


「行きませ」


「心に染みるスピーチ、考えとけよナ?」



「バきゅん」と野口さんの指ピストルが、私のおでこに突きつけられた。たまらなく昭和を感じる。


  

正社員になれば当然色々と面倒くさいオプションがついてくる。その中でも組合はレクリエーションのイベントが満載で面倒なのだ。 


   

「てか社員になったんだから絶対来いよ?どうせBBQ代もタダなんだし。」


「…あ…マリア先輩が来るなら行きます。」



私の言葉に、西條さんと野口さんがぐっと息を呑む。



流れるゆる髪で色気のある顔立ちの峯田みねたマリア先輩。普段は明るくてサバサバしているのだが、お酒が入るとサイコマリアと化す。本人を前にして悪態を当たり散らすのだ。



西條さんと野口さんは、どうせ私をサイボーグだの堅焼きせんべいだのといじり倒すのだから、ここはサイコマリアで対抗するしかない。



「マリア先輩が参加しないなら、私も参加しませ」


「サイコマリア、参加しまーーす!!」



マリア先輩が、元気よく私の後ろから声を上げた。鼓膜に響く音量でクラクラしそうになるも、私は能面を貫いた。



本日も平和である。

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