第18話

「んっ」

「以外に舌、長いじゃん」  



ディープキスなら私にだって経験はある。


    

でもこの人工呼吸は…未経験だ。あまりにも深みがありすぎて、小耳にすら挟んだことがない。



舌を絡み取られて吸われるやつ。言い換えると、ハマれば自尊心が跡形もなく消されてしまうやつ。これが甘いかどうかは、知るだけ無駄なため考えるのをやめた。



キスの合間の呼吸が、なんでか吐息になってしまう。私が人工呼吸初心者だからなの?  



「っふ」

 

「はい、吸ってぇ、吐いてー。舌転がしてー」

 

「(イラッ)」



身体を委ねてしまうぬかるみが、こんなに心地いいだなんて知らなかった―――― 






…――――ねえミウさん。処女切っても3年セックスしなけりゃ処女になるって、知ってる?


  





「電子決済で分割払いOKなんで。ほいじゃ。」



カーテンの隙間から桃源郷がみえそうな時間帯。



私の鞄から勝手にスマホを取り出したキラ君。どうやら電子決済アプリのアカウントを勝手に交換したらしい。 



ベストもかっちりと。ベージュスーツ姿を整えたキラ君が、テーブルに私のスマホを置いた。薄暗い部屋に唯一灯る、スマホの点灯。儚く消えたのを確認する。



シャワー、浴びなきゃ浴びなきゃ…。そう思うのに、身体が思うように動かない。



一眠りしてからお風呂に入ってご飯食べてからまた寝よう。


 

そのまま眠る準備に入る私は、布団の中から手だけで“さよなら”した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る