第17話

痛くて苦しい。今の私の表情は、今までに誰も見たことのないものになっていて。かなり、必死に歪んでいるはず。



でもベテランペテン師には、今の私に、負の感情だけじゃないものが伴っていることが分かっているのだ。



そうでなければ、きっと処女にこんな無茶ぶりはしてこないだろう。



「おい、後ろ。」


「は、え?な、なに」


「う・し・ろ。バック」


「ちょ、む、ムリだって!」


「人工呼吸すれば痛みも和らぐって。」



うつぶせにへばる私。



思っていたよりもずっと清潔感のあるベッド。ちゃんと柔軟剤の香りがした。ただし行為のためだけに用意されたベッドは、処女を奪われる瞬間に人間臭さを纏った。



シーツをシワになるほど掴む姿は、それほどまでに滑稽なのか。



「ハハ、」



その笑い声と共に、自分の脚が引きずられていく。休みなしにぶつけられる肌と肌。汗ばむ自分の肌は、当分渇きを知らずに済むんじゃないかと思えそうなほど。



肩越しに、反抗の眼差しを向ければ。キラ君が口角を上げ、舌舐めずりする様が視界に入った。そんな狼さんに赤ずきんは勝てっこない。



慌てて顔を背ければ、「待て待て」と南緯90度方向に向かされてしまった。



人工呼吸という名のキスをするために。

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