第16話

「ね。ちゃんとこっち、見て。」



No.1ホストの手腕にハマるのは嫌なのに。赤ずきんに甘える狼に似せてくるのが、そう悪くないと思えてしまう。



305万という解決策がなければ、キラ君をかわいいだなんて思うことはないはずだし。きっと自分が堕ちるフリなんてこともしないはず。



堕ちる気持ち良さは、今日これっきりにしよう。そう肝に銘じながら、彼の瞳に縋った。



「後悔しても、無駄なんで。」 



ベッドの上では猶予を与えてもらえなかった。



それに、思った以上に優しくもなかった。



――――――……




「んぁ」


「おやおや?だらしねー声がダダ漏れだねえ?」


「ふゃ」



痛い。痛いけど、そんなのはスタートダッシュだけ。



「ミウさ〜ん、ミウさーん」


「な、なに、」


「源氏名より本名で呼ばせてよ」


「やだ、絶対に、おしえないっ」



身体中が、溶かされる。吸い付かれる箇所が熱いのに、空気に触れればひやりとした感触が走って。でもまたすぐに溶かされていく。



足跡を残されていくみたいに。



「宿敵に処女差し出すとか、ミウさん相当狂ってるね」


「ん、んや」


「ん?反論できる余裕ねえって?」



これでもかと怒涛のように与えられる甘い前戯は、苦しさと紙一重だということを学んだ。

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