第9話

「うっしゃ!」

 


やばい。勝った。勝ったじゃん私ぃ!!



めちゃくちゃ嬉しいせいか、思わずガッツポーズが出て、本気の笑顔が出てしまう。



思えばこんな風に表情豊かになれるのは、キャバ嬢の自分だけだったかもしれない。


 

「うっっわ。ミウさんの本気の笑顔をかわいいと思ってしまう自分を殴りたい。」


「殴れ殴れ!」


「殴り方知らないんで。」


       

キラ君は、当たり前だけど女の扱いが上手い。私に嫌味しか言ってこないかと思えば、こうして小さじ程度の甘いことをつぶやいたりもする。



だから当然、女の身体の扱いも上手いに決まっているのだ。



「キラ君、ちょっと、頼みがあるんだけど。」



カモの親子が在住する公園前で。自分の重い足取りを立ち止まらせて、深呼吸。レシピ通りに冷静さを整える。



305万円稼いだ私の全身が、今すぐベッドにダイブしたいと悲鳴を上げている。



でも覚悟を決めてきたから。ごめんね、もう少し酷使させてもらうよ。27歳、本名:成世なるせ秋奈あきなの身体。



「どうした?」 



本名も知らない、どうでもいい男。



お金さえ払えば、きっと何のしがらみもなく、後腐れなく別れられる。

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