第8話

「おっと。今帰り?って、何そのしおれた顔」


「目の下にクマのあるやつに言われたくない」



すっぴんにセットアップ。という至福装備で店を出たところで、ちょうどキラ君に出くわした。



あんまりにもじっと顔を見てくるから、えげつない顔で睨んでおく。



「ねえ、自分でもすっぴんが最悪だってのは理解してるんだけど、気持ち悪いから見ないでくれる?」


「悪い悪い。褒める要素がどっかにないかと探してただけ。」


「女を見たらとりあえず褒めとけってその精神、尊敬するわ。」


「俺?女も、男も犬もアヒルもとりあえず褒めますけど?」


「アヒルにいつ出くわすの?」     

   

「あそこのな、公園の池のほとりにな、」



何気なく、同じ足取りで並んで歩いていく私たち。



キラ君が“あそこの公園”だと長い指で指し示す。ちなみにあそこの公園の池に住み着いているのは、アヒルでなくカモである。



「あーっとそれより、俺今日宣誓通り3ケタいきましたー」


「わあおめでとう100万かな?101万かな??」


「200万代ですけど?」


「……201万?」


「いんや、286万。」


「ちっ」


「え?ミウさんは?ねえ、ミウさんはぁ?」


「305万。」


「……マジ?」



すっぴんで、思いっきりニヤけた顔で鼻を鳴らしてやる。

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