One∶ 🐜

第7話

深夜2時。休日前の仕事は、いつだって終わりを楽しみに熱が入りすぎて、身体を酷使してしまうもの。



「ミウちゃん、本当に辞めちゃうの?ミウちゃんがいなくなったらQUONの売上ガタ落ちなのよぉ。」



オネエの店長、茂道しげみちさんに涙目で見つめられる。もうアラフィフらしいのに、深夜帯でも肌のキメが細かすぎて思わず見つめ返してしまう。



「何言ってるんですか。QUONにはサヤ姉もコマキちゃんもいるし、Mo-menntoの誰かさんの売上で補填することだってできるじゃないですか。」


「あら、Mo-menntoとは散々張り合ってきたってのに、随分と信頼してる言い草じゃない?」


「もう辞めるんでね。どうでもよくなっただけです。」


「んもう!ミウちゃんったら、ほんっとクールなんだから!お客さんにもメンバーにも何も言わずに辞めちゃうなんて!」


「てへ。」



店長には最後に暑苦しい包容をされて、耳元でこう囁かれた。



「今後もヘルプで呼ぶかもしれないから覚悟なさい。」



いくら裏社会の圧をかけられたところで、私の中での線引はキッチリしている。線引を到達した時点で、もうこの世界に用はないのだ。



だからここでは、必要以上にメンバーとは関わってこなかった。



それなのに、なんでこいつは顔を合わせる度に突っかかってくるのか。

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