7.

昔も雪が降ったことに犬のように喜んで、寒さにも負けず雪だるまを一生懸命作っていたことをおぼろげに思い出す。

あの頃は第二の性という言葉も知らずに無邪気に遊んでいた。


ずっとそのままでいたかった。


だが、そう思うと大河の存在を否定しているようにならなくて、その考えを打ち消した。


それから、どうにかこうにか体の部分ができ、そして、頭の部分も時間をかけてできたのを、小口に手伝ってもらいつつも、体の上に乗せた。


「形はまあ、ご愛嬌としてどうにか出来ましたね」

「はい」

「これだけでは寂しいと思いますので、目と手になりそうなものを探してきましょうか。わたしは目を探してきますので、姫宮さまと大河さまは手を探して来てください」

「⋯⋯あ、はい」


先ほどは小口も一緒にいたから何とか話せたが、二人きりだと話せるだろうか。

一抹の不安を抱えつつ、さっさと離れる小口の背を最後まで見ることなく、俯いたままでいる大河に身を屈めた。


「ママと一緒に枝を探しに行こうか」


それが合図だとでも言うように、大河は一人で行こうとした。

が、二、三歩歩いたところで雪が足に絡んだのだろう、転んでしまった。


「大河⋯⋯っ!」


足が取られるだなんて考えていられない。とにかく、大河の元へ急いだ。


「大河、大丈夫? まだこの辺りはふかふかだから大丈夫かもしれないけど、どこか痛くない?」


起こした大河に付いた雪を払いつつ、細かいところまで見た。


「見た限り大丈夫そうだけど⋯⋯。大河、雪のところはいつもよりも危ないから、一人で行っちゃダメだよ。ママと手を繋ごうね⋯⋯」


そう言って、手を差し出したが、どことなく眉を潜め、不服そうな顔を見せたのだ。


私とそんなにも手を繋ぎたくないんだ。


そう思ってしまうぐらい、再び、けれどもさっきよりかは慎重に一人で行こうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る