二話 三

 最後の方は重力を使わ無かったが、とにかく、何とか連れてきた。

 ポケットに突っ込んだ小型ドローンも一緒に渡す。


 その後、待合室で待っている途中だ。

 ちなみにファイアピッグは先に換金した。


 そうして数十分程経った頃、係員が来た。


 月雪澪の救助に感謝述べて、そのまま解散。

 大きめの病院に運ばれたらしく、そこから先は俺の知る由も無い。


 普通に意識があったことに驚きだが、回復力が桁違いだな……


 現在は午前三時半。

 かなり時間を食った。


 係員もいなくなったので、受付所を出て、家に帰り始めた……




 now loading……




「……はぁ」

 流石に疲れた。

 スキルの操作には、結構色々と気を遣うのだ。

 特に今日は、朝にも使ったから当然である。


 ちなみに朝のスキルの使用は、報道機関対策なので割と仕方なく、だ。

 そもそもスキルとは別に、人工知能を利用した様々な魔力の利用方法がある今、あの程度ではスキルかセントラルかそれとも人工知能かは特定されない。

 ただしダンジョンは、人工知能の持ち込みは禁止されている。モンスターが使い方を覚えれば、大規模なインフレが起きると予想されているからだが。


 家。都内で一人暮らしで、結構高めのマンションの角部屋。

 尚、実態は心霊物件である。激安の家賃で住まわせてもらっている。

 とはいえ電気をつけたら電気代がかかるし、風呂を沸かしたら水道代が掛かる。


 料理なんてまず俎板と包丁と鍋と皿を買わなきゃいけないので、全部カップ麺で済ませている。

 ちなみに、最近ようやく金が貯まり、湯沸かし器が買えて便利だ。


 そうしてカップ麺を食べ、シャワーをさっと浴び、薄っぺらいパジャマ一枚に着替える。

 珍しくやることがなくなってしまった。


 昼寝でもしよう。




 now loading……




 翌朝。


 俺は、目が覚めた。

 今日も学校だ。面倒だが、行かないといけない。


 朝飯はいつも通り抜く。億劫ながらも制服に着替え、登校を始めた。


 フォン学園は最寄りから三駅分。ちなみに最寄りまでは徒歩六分とかなり近い。

 満員電車に乗って学校へ行くと、教室の中は始業前にも関わらず、活気に満ち溢れていた。


 千人近くを受け入れるこの学校は、この時期は歓迎祭の準備に忙しい。

 新入生は普通授業が続くが、二、三年生は新入生に向けて色々と用意するのが定番である。

 といっても、どうやって歓迎するのか、とかは昨日話し合ったらしく、聞いてない俺にとってはどうしようもないことだ。


 早速登校したので、いつものところに座って睡眠を始める。

 去年も同じ位置だった気がする、と、眠気に溺れながらもそう思い出して。

 その記憶が、最後だった。




 now loading……




「……あの……」

「……………………ん?」


 何とか起き上がる。

 まだこんな時間だ。もう少し寝かせてほしいのだが……


「どうかし――ぁッ!?」


 俺が叫ぶ前から、他の人は注目していたらしい。

 何やら見られていると思って顔を上げた瞬間、思いっ切り驚いてしまった。


「つ、月雪さん……? ど、どうか……したのか?」


 しどろもどろになりつつも、何とか答える。


「影宮さん。連絡先、交換しませんか?」

「え、なんで……?」

「詳しいことはそっちで話したほうがいいかと思いまして」


 普段の月雪澪。

 魔力の影響により髪の色や目の色などが変わるのだが、普段の月雪澪は、普通に黒髪黒目だ。

 着物じゃなく制服を着ていて、着物では分からなかった、巨大過ぎる胸の膨らみが強調されている。


「俺のでいいなら、いくらでも差し上げますので……」

「では……」

 と、スマホのQRコードが映し出される。

 俺はそれを読み取る。

 そして、妹と叔父しか無い連絡先に、新しく月雪澪が追加された。


「では、またこっちの方でお話しますね」

「あ、ああ……」




 now loading……




 あの後、朝のホームルームが終わると、俺は寝てしまった。

 他の生徒は皆準備しているが、今更俺が出て行っても仕方がないだろう。

 というか無能は干渉しないほうがいい。


 そうしてあっという間に、帰りの時間になった。


「……」


 スマホには通知が一件。


 月雪澪から。


 さて、意を決して開くと、そこにはこう書いてあった。


『こんにちは、影宮さん』

 に始まり、内容が綴られている。

 要約すると、今朝は助けてくれてありがとう、お礼がしたいんだけどいつどこでしますか?

 といったものだった。


 どう返すか……


 少し悩んだが、単純に返すことにした。


『礼はいらないです』


 すると、すぐに返信が返って来る。


『いえ、そこをどうにかお願いしたいのです。

 勿論、どうしても嫌なら断って頂いて構いません。もう一度考えてくださいませんか?』


 ここまでの文面で断るのは難しいだろう。

 流石にこれには、『分かった』と返した。


 その後、幾度かのやり取りを経て、今晩、俺の部屋に、月雪澪が来ることになった。


「……」


 スキルについて聞かれたらどうしようか、と。

 俺は、頭を悩ませた……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る