第46話

今日も纏まりつくように私の横から離れない朔くんにはもう慣れた。適当にあしらっても朔くんは気に留めず横にいた。

私は監禁状態にある桔梗のことが心配でたまらなかった。

彼女たちの部屋には絶対に行くな、その誓いを破ろうとは思わなかった。

だけどせめて元気な姿を1回でいいから見たかった。

テレビからは、連続殺人完結か、とアナウンサーが話しているのが聞こえる。

「完結なわけないでしょ。今は休憩中なだけ。ね、百合。」

「朔くん。」

「ん?なに?」

「桔梗、たちは、元気?」

桔梗、その言葉に朔くんは反応して私の唇を自身の唇で覆った。

「んっなが、い。」

「桔梗ってもう二度と言わないで。大丈夫だよ、海琉が面倒見てくれてる。」

その言葉を信じることにして、私は、そっか、と言葉を返した。

実際、朔くんは1度も監禁部屋に行っていない。

食事を渡しているのも、着替えの服を渡しているのも、全部海琉さん。

でも私は、海琉さんに少しだけ疑問を持っていた。

なんで桔梗を刺したあの時、顔が青かったんだろう。

朔くんと同じ側の人間なら、人を刺すなんて食事をするくらい簡単なことだと思っていたのに。

未だにそのことは海琉さんには聞けていない。

答えを聞いたら何かが変わってしまいそうだったから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る