百合Side
第34話
3人でショッピングモールに行く日の朝。
私はいつもより少しだけ朝早く目覚めた。
この家に来てまだ一番乗りで起きたことがない。
これはもしかして、私が1番なんじゃない?とワクワクしながらまず海琉さんの寝室に向かってみると、海琉さんはもういなかった。
まさかと思い朔くんの部屋にも行ってみるけど、誰もいない。
リビングに通じるドアを開けると、既にそこには準備が終わっている2人がコーヒーを飲んで座っていた。
「百合、おはよう。」
「はやいね、今日は。朝ごはんにしようか。」
と海琉さんが立ち上がる。
「ね、ねえ、まだ6時だよ?なんでもう準備してんの?早すぎるって。私が1番だと思ったのに。」
「俺たちの準備はどうでもいいんだよ。百合、ご飯食べたらさ、顔、いつもより念入りにスキンケアしてきて。髪もまとめ髪にしてきて。」
「えっなんで?」
「いいから、お願いね。」
ほら食べといて、と手であしらわれるから、私は仕方なくわかった、と返事をして海琉さんについていった。
いつも通り豪勢な朝食を食べ終えて、私は言われた通りいつもよりスキンケアを念入りにした。
髪をまとめるってお団子にしたらいいのかな、高い方がいいのかなと試行錯誤しながらなんとかまとめ終わり朔くんがいるリビングに戻った。
「可愛い。百合、こっちおいで。」
腕を広げて私の名前を呼ぶから、朔くんの方に向かうと、腕を引かれて私は彼の足の間に座らされた。テーブルの上には、ドライヤーやワックス、メイク道具が沢山並べられている。メイク道具に関しては、私が使っているものよりも高価だけどいくつかしか並べられていない。
「何するの?」
メイクなら自分である程度はできるのに、と不思議に思い聞くと、海琉さんも洗い物が終わったようで、朔くんの隣に座った。
「百合の顔はもう有名人だからね、出かけるって言っても、バレちゃったら俺たちは一緒に暮らせなくなるでしょ?それは俺、絶対避けたいの、分かってくれるよね。」
そう言われ、私はよく分からないままうん、と答える。
「だから、百合を男の子にしようと思って。」
「え!なんで!?」
「これは俺も朔に賛成。男の子になれば、バレることもないでしょ?百合は綺麗な顔だから、男の子でも全然いけると思うんだよ。」
「嫌!絶対嫌!可愛い恰好できると思ったのに。」
私は逃げようと朔くんの足の間で必死に身をよじるけど、ぎゅ、と足で固定されて、後ろから腕が回ってくる。力の差なんて歴然だから無駄な抵抗で終わった。
「絶対かっこよくなれるのに。なんで嫌なの。」
かっこいいとかそういう問題じゃないのに、と思いながらも話が進まないから、私は仕方なく受け入れるしかなかった。
海琉さんによって私はいつもと違うメイクをされる。髪の毛は朔くんがウィッグをかぶせてくれワックスとドライヤーを巧みに使ってセットしてくれる。
「やっば、かっこよくなったね。」
百合、終わったよ、と言われて鏡を見れば、そこにはいつもの自分の姿はなかった。
こんな時に中性的な顔が役に立つなんて。
「服、沢山買ってもらうから。」
どうしてもふてくされたようになってしまったのは許してほしい。
当たり前でしょ、全部買ってあげるから、と朔くんが笑ったから、私も許してあげた。
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