第31話
気づけば俺は自室のベッドの上で眠っていた。
横を見ると、椅子に座り眠る海琉がいて、状況を把握出来ずに海琉の肩を揺さぶる。
昨日は確か、百合から好きになったと言われて、抱きしめて、そこから?なにがあたのか思い出せない。
「やっめろ、なんだよ?」
大きく伸びをして海琉は目を覚まして、肩を揺さぶる俺の手を雑に払い除けた。
「百合は?俺、昨日百合といたよな?」
「死体、とりあえず地下室に置いて、屋敷に戻ってきたら朔と百合が抱きしめ合いながら2人して寝てるから、俺が運んで寝かせたんだよ。百合は軽かったけど朔は重くて腰が痛い、感謝しろ。」
それだけ言って、海琉は部屋を出ていこうとする。
「死体、片さないと。」
「どこに?この殺人がバレたら、今までの悪事もバレるかもしれない。慎重にやらないと駄目だ。朔、お前さ百合に執着しすぎなんじゃないのか。」
海琉は振り向きざまに俺を一瞥しそう言った。
あんなに仲良くしていた人間を、百合を傷つけたからと言って躊躇なく殺した俺に、身の毛がよだったらしい。
「あいつは、良い奴だったよ。でも、俺の一番は百合なんだよ、傷つけたら、たとえ海琉でも、殺していたと思うよ。死体のことは明日ゆっくり考えよう。」
俺は海琉にそう言うと、海琉はわかったと言って、朝食を作りに部屋を出ていった。
ぼうっとしてちゃいけない。
海琉の後に続いて俺も部屋を出て、洗面所に向かう。
前まで家になかったものは、大量のスキンケア用品。俺も海琉も水で洗うだけだから、前まではなかった。
百合はスキンケアをしっかりしたいと俺らに遠慮して言わなかったが、俺が百合の肌を守りたくて特注でとびきりいいものを取り寄せた。
百合が驚いた顔とふわっと笑って買いすぎだといったあの時を忘れないだろう。
顔を洗って、洗面所を出て、俺は恒例のごとく、新聞記事に目を通す。
貼ってあるものは全て、俺が犯した犯罪だ。
幅広い年代を殺して、遺族から恨まれてきた。
テレビで報じられる度、頭がおかしい、狂っているなどの暴言を吐かれて、俺は1度だけ、遺族にまで手を出してしまったことがある。牽制も込めてだったが、単純に気分が悪かった。
ターゲットを決めている訳じゃないから海琉も止めなかった。
その時の記事には、遺族にまた悲しみを、の言葉が大きく書いてあって、怒りを通り越して悲しいです、どうして、と報道陣の前で語っていた男を思い出す。
まず娘を殺していたから、その時殺したのは、母親だったな。
その3年後、残された父親と息子が無理心中したいうニュースも話題になった。
ひとつの家族を消滅させた、殺人犯。
俺は初めて、家族全員を殺した。
だからこの事件だけは、忘れようにも忘れられないし、俺が今まで犯した罪の中で最大のものと言える。1番目立つところに貼って、毎日、このことを思い出すのだ。
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