第25話

結局家に着いたのは、9時15分だった。

海琉が車を飛ばしたおかげで、予定よりはだいぶ早く着くことが出来た。

ただ不安が的中するように、玄関のドアは閉まりきっておらず、耳をすませば中から百合の苦しそうな声が聞こえてきた。

「百合!?」


勢いよくドアを開ければ、そこには顔をぐちゃぐちゃにして泣き苦しむ百合と、百合の首を絞めながら馬乗りに覆いかぶさった、いつもの配達員がいた。

頭が、真っ白になった。俺は勢いよく配達員を百合から剥がして、百合がいることなんて気にもせず無我夢中で彼の喉を掻っ切った。

頬の辺りに血が飛び散り、男は白目を向いて倒れた。

海琉は一瞬信じられないとでも言うような顔をしたけど、俺の心中を察したのか顔つきを変えた。

百合の目になるべく入れないように、配達員の死体を担いで部屋の外に出て行った。



ばたん、とドアが閉まって、俺はようやく真っ直ぐ百合を見る。

俺がプレゼントしたシルクの白いパジャマは、ボタンが飛び前は全てはだけていた。

ズボンは下ろされかけており、下着は脱がされてはいなかった。ただ首には赤い印が沢山つけられていて、腹には数個の歯型が残っていた。

「や、やだっ…なんでぇ、」

涙の止まらない百合の体を起こして今までで1番強く抱きしめる。


「百合、ごめん、ごめんね、俺が悪かったよ。伝えておけば良かった、百合、怖かったでしょ。ね、ごめん。」

「痛いっ…誰、なの、あの人っ…私、こわくっ…て、…やだったの。」

もはや俺のことを殺人犯だということを忘れているかのように、俺の背中に爪を立てて、縋り付くように手を添えてくる。

俺の腕の中で泣きじゃくる百合の声を聞いて、百合に断りも入れずに唇に初めて、キスを落とした。

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