第21話
食事を終えて部屋を出ると、さっきまではいなかったはずの朔くんの姿が、階段に見えたような気がした。
追いかけるように階段を下りてみると新聞記事が貼り付けている壁とにらめっこするように、真剣に見ている朔くんがいた。
昨日、血を体につけたまま抱きしめてきた彼の事が、私はなんだか忘れられなかった。
気を失ったけどベッドに眠っていたのは、朔くんが運んでくれたからだと思うし。
いつのまにかべったりついていた血も拭き取られていた。
さすがに着替えてはなかったから洋服にはついていたけど。それでもほとんど感じられないくらいには綺麗だった。
「お風呂、入っちゃったら?」
俺の食べた食器を片付け終わったのか海琉さんが後ろから小声で話しかけてきた。
朔くんを考えていた思考はそこで停止された。
そういえばこの家に来て、まだ風呂に入っていない。まだ3日しか経っていないけれど、昨日の血だけは気になる。
「パジャマは部屋に置いておいたよ。あと風呂の位置だけど、俺今忙しいから、朔に聞いてくれる?」
海琉さんはそう言って食器を洗いに2階に戻って行った。
ひとまず部屋に戻れば白いシルク素材のパジャマが畳んでおいてあって、歯ブラシ、タオルなんかも白で統一されて置いてあった。
それら一式をもって、もう一度リビングに戻る。
未だじっと新聞記事を見つめている朔くんの肩を叩く。
まだ少しだけ、いや、かなり、彼のことが怖い。昨日の血まみれの姿を見てしまったら、連続殺人をしているんだと実感してしまい一気に恐怖が募る。
それでも、私がまだ生きていくためには、この人の言う通りに生きて、この家に居なくちゃいけないから。
険しい顔をしていた朔くんは、振り向いて私の顔を見ると、表情をやわらげた。
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