第12話

少年院を出られたのはそれから約3年後、18歳の時だった。

出てからすぐ行方をくらまし、俺は60代の男を殺した。

人があまり通らない道をたまたま散歩してしまった彼を、無差別に、殺した。

この道を通る人なら、誰でも良かった。とにかく早く人を殺したかった。

手袋をはめて、ナイフを腹に突き刺した。

豆腐のような感覚に、胸は踊って、俺は飛び散る血も気にせずに、刺し続けた。

あの時感じた快感がよみがえる。


また、バレる。また、捕まる。


そのスリルも堪らなく胸を躍らせた。

行為を終えて気づけば男は白目を向いて死んでいて、俺には、血が飛びまくっていた。手に付く血も気にせず汗を拭った。



「それ、バレたくないんでしょ?」


俺と同じくらいか、少し背丈が小さい男が通り掛かり、俺に任せろと、現場をなにやらいじり出した。これが、俺と例の運転手の出会い。

俺を信じろ、ただそういう彼について行った。

次の日、俺はまた捕まるかもしれないという恐怖に怯えていた。

素性も知らない男のいうことを信じて、ここまで来てしまった。いつ裏切るかわからない。

しかし俺の気持ちとは裏腹に犯人特定に難航している、というニュースキャスターの言葉に、ぞわっと心が動いた。


そこから3人目からは、簡単だった。

俺が殺して、こいつが証拠を消す。得体のしれない奴だったが仕事ぶりは惚れ惚れするものだった。

4回目の殺人が完成する頃にようやく、俺のことはカイルと呼べと、彼は一言そう言った。

カイル?と聞き返せば、海に琉と書くらしい。

お前何者だよと聞いてみても、それは教えられないと頑なに言うから、そこまでにしておいた。

海琉が何者だろうとよかった。ただ俺を裏切らなければ。



10人。20人。30人。



着実に数が大きくなっていく度に、心は震えて、歓喜していた。

スリルと快感がたまらなかった。

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