第4話
ぼんやりと意識が浮上した。まだ、外は暗い。
もう少しで陽が昇るのかな、とそんなことを考えながら一度体を起こした。
時計に目を向ければ、まだ深夜の3時だった。
なんだか目が冴えてしまった。寝る時間が早かったからだろう。
水でも飲みに行こう、そう思って階段を下っていると、お母さんさんの叫ぶ声が聞こえた。
「百合!来ちゃダメ!部屋に戻って!」
あまりの剣幕に、私は勢いよく階段を下って、リビングのドアを開けた。
私の目に映った光景は、あまりに非現実的で残酷で、私は動けなくなった。
全身黒ずくめの姿をした身長の高い男が、お母さんの首筋にナイフを擦り当てていた
お父さんは今、出張中で家にいない。
よく見れば、お姉ちゃんは手足を拘束されて、床に転がるように苦しい顔を浮かべていた。
涙目ながらに必死に首を振り、私に逃げろと訴えていた。
私はすぐに理解した。
この人が、例の、連続殺人犯だと。
「来ちゃダメ…百合まで、殺されるっ…」
お母さんの弱った声を聞いて、私は怖かったけれど、何とか震える手足を動かした。
殺人犯の正面まで歩いていって、震えながらに声を出した。
「お母さんを、殺すなら、私を殺して。」
殺人犯は黒いメガネにマスクをしていて、顔が見えなかった。
だけど私がそういった瞬間マスクの中で口角が上がるのはわかった。
何言ってるの、やめなさい!とお母さんが叫ぶ声と、お姉ちゃんの声を出そうと必死な口篭りが聞こえる。
ああ、殺されるのか。怖いけれどお母さんとお姉ちゃんを守れるなら後悔はなかった。
ごめんね、先に死んじゃうのを許して。
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