第3話
35人という異例の数字。
連続殺人犯、という犯罪者は今までもこの世に沢山放出されていた。
だけどそんな大人数を殺した殺人犯は、今の時代、考えられなかった。
防犯カメラや科学捜査もある中で、一向に捕まらない犯人。
今日は短縮授業になる、と担任の口から聞いて、いつもより2時間早く終わった授業。
私はいつものように、桔梗と一緒に帰路に着いた。
「百合はどう思う?」
「なに、連続殺人犯のこと?」
「ほら、テレビで次はこの県!って予想してる人たちいるでしょ?それよると次は東京なんだって」
わー、こわいと桔梗は肩をさする。
長野県の山奥から始まった大量殺人。中部地方の方まで魔の手は伸びてきていよいよ、とテレビでは言っていた。
「あんなの、適当に言ってるだけでしょ?それに東京っていってもこんなところにはこないでしょ?」
今日の帰りの会話はずっとその話で持ち切りだった。
じゃあね、また明日、と桔梗と別れて、私は家に着き、鍵を開けて、部屋に入る。
いつもより帰ってくる時間が早いから、部屋の明かりが侵入してきていて、眩しい。
「あら、帰ってきたの?おかえり。」
「ただいま。うん、例の事件で。」
「気をつけなさいよ?36人目、見つかったみたいなのよ。」
テレビからは、36人目が見つかった、と報道陣が興奮して話す声が聞こえた。
場所は、東京。私たちの住む町の、2つ隣。
ここまで近くに来れば、さすがに震えた。
私もいつか殺されてしまうかもしれない。
でも家にいれば、家族と話していればそんなことは忘れて、穏やかな時間を過ごせた。
いつも通り夜ご飯を食べて、風呂に入った。
でもなんだか気分は少しだけ悪いような気がして、いつもより早めに寝床に入って、目を瞑った。
2つ隣の町の名前を連呼する声が耳を離れなかった。
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