第18話

なんとなく、朝倉さんと初めて会ったあの図書館に行こうと思った。

別に理由はない。

本でも読んで気を紛らわそうと思った。

それくらいの理由。


それなのに私は、

私たちは、また同じ場所で出会ってしまった。


「桜庭、さん。」

「朝倉さん。」



真っ黒い瞳が揺れる。

この瞳を見ていたら、意志が揺らぎそうになる。

だめだ、もう、一緒にはいられないんだから。

そう思って急いで目をそらし、出口へ行こうと引き返そうと体を反転させた。



「すみませんっ、じゃあ。」

「待って、」


急いで帰ろうとしたのに、きゅっと手を掴まれる。

君の手が触れる。

ああ、もう離れられない。

この温かさをまた感じてしまったら、振りほどくなんてできない。



「話しませんか。」



なぜか涙が出そうになった。

こんな残酷な世界があっていいんだろうか。

私と君はもう、どうにもならない。一緒になってはいけない。

そのことが苦しくて、辛くて、ぐっと唇を噛んだ。

お話しできません、そう言おうと朝倉さんの顔を見た。

君も、私と同じ。

目に涙を薄らと溜めて、私の方を見ていた。



ただただ真っ直ぐ、私を見ていた。



そんな顔をさせているのが自分だってことが苦しくて仕方がなかった。

そんな朝倉さんの表情に負けて、私はコクリと頷いた。

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