第13話

帰る時、もっと悪魔のことを知った方がいいと言われ、大量の本を持たされた。

こんな一気に持って帰れないって言ったのに、大丈夫だよ、軽いもん!なんて言って。

それは悪魔の話でしょ、私はまだ人間だよ。

羽だってこんなに小さい。

悪魔みたいに飛んだりできるわけじゃない。



「はぁ。」

ついつい漏れたため息。

「桜庭さん?」


急に名前を呼ばれ振り向くとそこには、朝倉さんがいた。

「こんなところで会うなんて、奇遇ですね。」

「ほんと、びっくりです。」

「荷物、大丈夫ですか?持ちましょうか?」

「いや悪いです!大丈夫!」

「俺、鍛えてるんで大丈夫ですよ。」


そう言うと私の手からひょいと荷物を持ち上げそのまま朝倉さんの腕の中におさまった。

「本ですか?たくさんですね。」

「そう、なんです。」

「なんの本ですか?参考書とか?」

「そんなもんです。人から貸してもらって。」

「そっか、勉強熱心なんですね。」

「いや、そんなことはないんです。」

「そうですか?俺勉強嫌いなのですごいなぁって思いますよ。」


横で笑ってる朝倉さんはなんだか楽しそう。

朝倉さんといると、悩んでたことも、ぐるぐる考えてたことも全部真っ白にできた。

純粋に、朝倉さんとの時間を楽しむことができていた。


「あ、ここで大丈夫ですよ。」

家の近くまで送ってくれた朝倉さん。

同じ方向かもわからないのに。


「もう、ほんとにすぐそこなんで。」

「でも、重くないですか?」

「はい、もう大丈夫です。私も多少力があるので。」


朝倉さんから重い本たちを受け取る。

「じゃあ、また。」

「はい、また。」


そう言って一度後ろに踏み出したが、朝倉さんはすぐに歩みを止めた。

少しためらうように私の方を向いた。


「あのっ、もしかして、迷惑でしたか。」

「えっ?」

「さっきから上の空、っぽいし、あれからLINEの返事もなかったので、迷惑だったかなと。」

「いや、そんなことは全然なくて。ただ、最近忙しかっただけで、迷惑なんかじゃ全然ないです。」

「そっか、それならよかった。また、次もデートしてくれますか?」

「ふふ、もちろん!」

「じゃあ、約束、ですからね。」

「はい!」


胸がドキッとした。朝倉さんとの約束が嬉しすぎて顔がニヤけてしまった。



デート



その響きに心がユラユラ揺れた。

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