第11話

ガチャ。

扉が開く音がした。

ひょこっと大翔さんが顔を出した。

とっさに背中の服をつまんでいた手をおろした。


「瑞希ちゃん?」

「大翔か。」

「表暇だからこっち来ちゃった。」

「うん、いいよ。こちら、桜庭杜環。」

「こんにちは。」

「桜庭さんって言うんだ!改めてよろしくね!」

「あっ、よろしくお願いします。」


満面の笑みを浮かべ手を差し出してくる大翔さん。

おずおずと手を出すとガっと握られブンブン握手をしてきた。

桜庭ちゃんって呼ぶ〜だなんてニコニコしてる大翔さん。

その明るさがまぶしかった。

俺のことは大翔って呼んでって言われたけど、大翔くんって呼ぶことにした。


「ねえ、裏にいるってことは、桜庭ちゃんもこっちの人?」

「えっと、」

「ハーフなんだよ、この子。」

「えっ、ハーフ?」

「みたいです。」

「それは困ったね。」

「ん。でも、大事な友達の子だから守ってやりたいんだ。」

「なるほどね。僕も協力するよ!」

「ありがと。」

「あっ、ありがとうございます。」

「んーん!気にしないで!」



大翔くんは、ちょっと待ってね〜と言うと大きな本を持って戻ってきた。

「俺、ハーフの子について、研究してた時期があるんだよね。」

「そうなんですね。」

「そうなの、って言っても、だーいぶ前だけどね」


きゅるんとした瞳で笑う大翔くん。

一瞬流しかけたけど、だいぶ前?

私と同じくらいか年下かと思ったんだけど。


「あぁ、大翔は若く見えるでしょ。」

「はい。」

「僕もうかなり生きてるよ!研究したのは100年くらい前かなぁ。初めての契約は覚えてるけど、何年前かまでは覚えてないや!」

「私は大翔よりちょっと年上。」

「そうなん、ですね。」


忘れてた。この人たちは悪魔なんだった。

研究したのが100年前ってことは生まれて何百年も経ってるってことだよね。

悪魔の世界はわかんない。

でも、さ、悪魔って人の寿命をもらって生きてるんだよね。

私、かなりヤバい状況かもしれない。

もしかしたらこのまま、命取られちゃうんじゃないか、そんな不安がよぎる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る