第2話

近くの図書館で本を探す。

今日は、悪魔のことを思い出したから悪魔の本。

そう思って手を伸ばすと誰かの手に触れた。


「あっ、ごめんなさい。」

「俺も、すみません。」



手の主と、目が合う。

光に反射してきらりと光る綺麗な瞳。

その瞳から、目が離せなかった。

時が、止まったような気がした。

初めて感じた電流が走るような衝撃だった。

何か言わないと、そう思うのに言葉が出なかった。

世界が煌めきを放ったかのように、彼はキラキラと輝いていた。

なぜかはわからない、ただ彼は、一粒の涙を零した。


「えっ、大丈夫、ですか」

「あっ、すみません。なんだか懐かしい気がして。」

ドキドキとする心臓。

全身が、彼に会えたことを喜んでるみたいだった。


「私もなんだか心臓がおかしいんです。初対面なのに。」

ううん、違うのかもしれない。

私たちは、どこかで出会っているのかもしれない。

「不思議ですね。」


彼は微笑んで言う。

「でも、あなたにずっと会いたかった気がします。」

彼がそっと私の手を取った。

触れられたところから熱が全身に伝わる。

「私も、です。」

はらはらと私も泣いてしまった。

そっと涙を拭う彼を見て、また胸が苦しくなった。


ねえ、私たちは、どこで出会ったんでしょう。

運命の糸が絡み合っているのかな。

鳴り止まない鼓動。

背の高い彼の瞳を一生懸命見つめたところで何もわからなかった。

でも、心臓が、心が彼を求めている。

ずっと探していた。

そんな気持ちになった。



その後は、連絡先を交換して一旦さよならをした。

綺麗な漆黒の髪。

端正な顔立ち。

その全てが目に焼き付いて離れなかった。

そんなのおかしいってわかってる。

でも、願わずにはいられない。

これが、“運命” なんだって。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る