【第三話 絶望の異世界転生】

星聖歴 1218年 6月


 空を飛んだ日から、はや一か月。私はようやく魔法が使えるようになった。

 すごい魔法が使えるようになったかというとそういうわけでもない。まぁ、《地球級》ぐらいの魔法は使えるようになった。

 というのも、この世界の魔法はとても複雑なものらしく、《無(む)》という属性を持たない魔法が一種あり、他にも《火》《水》《風》《土》《雷》《氷》《癒》《光》《闇》《呪い》《祈り》《毒》の属性を持った魔法の種類が十二種ある、そして魔法の種類は合計十三種存在する。

また、魔法の強さを段階的に区切って表した魔法級にも《水星級》《金星級》《地球級》《火星級》《木星級》《土星級》《天王星級》《海王星級》と、八段階ある。………本当に難しい。

 それにしても、魔法の強さを分けたときの名称………地球での太陽系の惑星の名前に準拠してる。ほんと誰がつけたんだ! 初級とか中級とかでいいじゃないか! と思うが、まぁ、私は地球からの転生者なので分かりやすいという利点はあるが………。

 それで今、私は三個目の《地球級》という普通の人間からしたらなかなか魔法ができるレベルらしい。

「——もっ、もう一回打てる?」

 母さんが私のはなった魔法が自分の背を越す大岩を真っ二つにしたことが信じられないらしく、もう一回見て自身の目で見たものが本当だったか確かめたいらしい。

「いいよ。——《我が放ちたいのは雷、我が目の前にある障害を空から放たれる雷で砕いて散れ! サンダークラッシュ!》」

 すると、空から轟音が鳴り響き、今度は真っ二つにされた大岩を粉々にする。

 どう? と尋ねるように母さんの顔を覗くと、驚きすぎて固まっていた。

「母さん? どう?」

 私が呼びかけるとようやく母さんは我に返った。

「私が《地球級》魔術を使えるようになったの魔法の修業を始めてから、三年はかかったのに………。う、うん?」

 母さんは何かぶつぶつ呟いているがまったく聞いていなかった……。

「どうだった⁉ 俺の魔法!」

「すっ、すごかった! 私驚きよ、こんなに成長速度が早いなんて……! ねぇ、お父さん?」

「あぁ、驚きだ……。………なぁ、エオ。父さんと手合わせしないか?」

「手合わせ?」

「あぁ、剣と魔法ありで、エオギブアップって言わせたら俺の勝ち、エオが俺にいちげきでも食らわせられたらエオの勝ち。どうだ?」

「うーん」

 私は少し悩んだ。剣か………魔法を教えてもらった時ぐらいからやり始めた剣の練習、練習してから一か月しかたってなく、素振りとある程度の型など基礎の基礎しかやってない。そのため、まったくと言っていいほど自信がない。あと、彼方時代に授業で少しかじったぐらい………。

「もし、俺に一撃入れたら、父さんがなんでも一つお願いを聞いてやってもいいぞ!」

 と、提案してきた。

………父さんにしてほしいことか……。

そういえば少し見てみたいものがあった。…それは父さんの職業の鍛冶師だ。

 鍛冶師という、剣や魔道具、はたまたアンティークなどと多数の物を作るというこの職業に私は惹かれた。

「………じゃあ、勝ったら父さんの鍛冶師の仕事見せて」

「………えっ、そんなんでいいのか?」

 父さんは拍子抜けだったのか、ぼけたような返事をする。

「まっ、いっか。じゃあ木剣持ってきたり、準備してくれ」

「分かった」 


「よし、準備はできたか?」

「うん…」

 私は持ってきた木剣をぶんぶんと数回振り、型を体から思い出させる。

「ねぇ、父さん。父さんに一撃入れるのって木剣じゃないとダメ?」

「いやそういうのはないが………」

「わかった」

「じゃあ、母さん。審判頼む」

 そろそろ始まるかと思い、私は木剣を両手で握りしめ、自身の体の中心に持ってきて構える。

「はいはい。じゃあ始めるわよ……よーい——始め!」

 母さんがスタートした瞬間、さっそく父さんが仕掛けてきた。

 父さんは何も自身の体に魔法を付与せずに素の身体能力で猛スピードで私との間合いを一気に詰める。

 そして、私は即座に無属性の身体強化の魔法ストレンサニング・フィジカルアビリティを付与しようと、詠唱を始めようとしたが——、

「はぁぁあ!」

 父さんの木剣が俺の剣へと当たる。

「うっ!」

 私は父さんのパワーに押し負け、地面を全身土まみれになるほど転がる。

 うっ……。

 肩に痛みが走る……触れるといつもより方が膨らみ少し腫れているような気がした。

 自分の息子に…しかも剣を習って一か月の子供に全力で木剣たたきつけるの? 

と、痛みで顔を引きつらせ、涙ぐみながら思う。

こんな経験初めてだ……。

「なんだ? 泣いてるのか、男だろ! 根性見せろ‼」

 男じゃないし……今は男だけど、前世は女だ! 一応人前では男っぽく話して、一人称も俺って言ってるけど中身は女! 

………。いや違う……。前は女だったけど今は男……だ! 私は……『俺』は男として生きていかなければならない! せっかく、前に踏み出すことが、前を見ることが、頑張ることができたんだ! これしきの痛みどうってこと……ない! 

「おお、さすが立ち上がった。それでこそ俺の息子だ!」

 ………このまんまじゃ終われない、親父に一発でかいのをぶちかます‼‼

 俺は涙を拭き、もう一度剣を構える。

 今度はもう、身体強化魔法付与してある。

 さぁ、ここからどう攻めるか……。

 今俺が覚えている魔法は約三十種類、そのほとんどが《水星級》《金星級》のいわゆる初級中級魔法だ。だが二個、サンダークラッシュともう一つ《地球級》魔法が使える。……そのもう一つは父さんには見せたことがない……それしか決め手にならない。

 そう思い、まず俺は父さんに剣を構えて駆け出す。

「はぁぁぁーあ!」

 俺の自身にかけた魔法ストレンサニング・フィジカルアビリティの効果で素の自分の速さより、1.5いや2倍近くの速さが出ている。だがこの魔法にはデメリットがあり、いつも出している自身の力の百二十パーセントの力を出すため、筋肉や骨格に負荷がかかり、次の日筋肉痛になってしまう…。

 一気に間合いを詰めた俺は勢いよく剣を振る。

「はっはっは! そんなんじゃ当たんないぞ!」

 父さんは俺の剣の太刀筋が読み、片方の足を後ろに下げて、剣との距離すれすれで避ける。

 だが、そんなことは百も承知。避けられることなんてわかっている。

「背中ががら空きだぞ!」

 父さんは俺が剣を躱され少し体制を崩して背中が空いてることに気付いた。

 《我が操りたいのは土、歪め大地! マッド・アース》

「…………………。父さんは足が空いてるね?」

 俺はニヤッと口元をゆがませる。

「なに?」

 すると、父さんの足元の土が泥へと変わり、沼のように地面に父さんを引きずり込む……。

「とった!」

 父さんの型にめがけて剣を振り下ろそうとする。

 もしかしたら………。

「……やるじゃないか、エオ……だが甘い!」

「!」

 突如、俺の剣が振り下ろせなくなる。——そして次の瞬間、俺の体は衝撃波を受け、数メートル飛ばされる。

「うっ!」

 家の石でできた塀に背中を打ちつける。

 やっぱ強い……。

 しかもさっきの衝撃波は《無》属性の魔法だ。

 くっそ! 大人げない! ——やっぱり決め手になるのはもう一つの《地球級》魔法しか………でもあれは……。

「なかなか、いい発想じゃないか……。この手合わせでのエオの勝利条件が分かっている…。お前は一瞬でも俺の隙をついて一発当てればいいんだからな。さあ、来い!」

「まだ!」

「ほう……」

 俺は剣を真上に投げ上げ、手を前に上げ、両手の手のひらから魔法陣を出現させる。

「《インクリース・ウォーターボール》!」

 父さんを囲むように無数の水の球が現れ、空中で静止する。そして

「《我が放ちたいのは光、うち放て! ダーツ・レイ》!」

 一筋の光線が水の球に入り込み、屈折や反射を起こして、目で追いきれない速度になる。そして、父さんに向かって何本にも枝分かれした光線が父さんに当たった。——のか?

 たちこもる煙が父さんを包み、姿をぼやけさせる。

 ようやく、煙がはれ、見えたのは腕の服の布が少しだけ破けただけで、傷が一つもなくぴんぴんしている父さんの姿だった。

 そして父さんは土ほこりを手で叩き(はたき)。

「やぁー、危なかったぞ。あれ、なかなかやるな……。父さん久しぶりにわくわくしたぞ!」

「まじかよ……どうやって…」

「ん? あれはな、剣を魔力で強化したんだ。 だがそれだと弱いから《無》魔法の——での強化と、《癒》魔法の——で、木の密度を上げたんだ」

 そう、父さんは自身満足げに話す。

 剣を魔力で強化? その上魔法を二重にかけるなんて……。次元が違いすぎる……。これも長耳族(ちょうみみぞく)の特性なのか?

 特性とはその種族が持っている固有の性質だ。例えばエルフ族やドワーフ族を含む長耳の種族は魔法を無詠唱で扱うことができるとか、またドワーフ族は手先の器用さ、エルフ族は魔力総量が多いなどという特性がある。

 だが、俺みたいな人間族には特性が存在しない。

「ここまで追い詰められたし、父さんも少し本気出そうかな?」

「はっ?」

 本気出す? といったか父さんは……。まだ本気じゃない? ——………いやでもこんなんじゃやられないよな、長耳族は。——なら、こっちも出し惜しみはなしだ‼‼

「行くよ! 父さん!」

「どっからでもかかってこい!」

「《ウォール・プリズン》!」

《土》魔法で父さんを閉じ込める。しかし、本気を出し始めた父さんはこんな土くれなどいとも簡単に、切り刻み、今日見た中のトップスピードで、俺に接近し、剣を交わす。

父さんの剣には重みがあり、俺を剣もろとも空中へ押し上げる。

「うっ!《我が操りたいのは水、我が周りに集え! ウォーター・クッション‼》」

 すぐに、飛ばされた俺は魔法を発動し、空中で水の枕を作り、衝撃を受け流す。だが

「まだまだー!」

 父さんは俺がいる空中に飛び上がり、剣で俺を地面へと叩き落す。

「がはっ!」

 起きろ!

「《我を守るのは大地、壁を作れ! ウォール・プリズン》!」

この時間で考えろ! 父さんに一撃入れる最適解を——もう来やがった!

父さんの腕が土の壁にめり込み、土の壁にひびが入る。

「くそっ、バケモンかよ!《ウォーター・ボール》! 《ウォーター・ボール》!」

 足止めにでもなってくれと水の球を何度もぶつけるが効果は薄い……。

 これで身体強化魔法なしだろ⁉ 

 身体強化魔法を使うと体の表面が淡い黄色い光に包まれるため、父さんが身体強化魔法を使ってないのは分かる。

「《風》魔法……!」

 父さんは剣で何もない虚無を切り裂く。すると、風が地面や空間を切り裂いてこちらに向かう。

「《我が起こすのは疾風! 吹き荒れよ! ウィング・ブラスト!》」

 さっきから落ち着ける猶予がなく魔法の詠唱が早口になっている。このまんまだといつか魔法すら発動するタイミングがなくなる。

くっ、このままだと負ける………。——やっぱりあれしか………。一か八かにかける!

「《我が落としたいのは火、地面を焦土へと変えろ! グランド・メテオ!》」

「お前まじか⁉ ここ庭だぞ⁉ 家を消し飛ばすつもりか!」

 父さんは上空へと高く跳ぶ。

 これは賭けだ、父さんがこの隕石を木の剣でできれるかどうかの。そしたら、魔力も消費して少しは隙が生まれる…はず!

「はあぁぁぁぁあ‼‼」

 父さんは自身の魔術熱波で体から熱を放つ。

 魔術はこの世界の誰もが持っている。自分以外使えない自分専用の強力な力、また魔法とは異なる力だとこの前教わった。また、十歳前後で発現するともいわれた。

 俺ももう十歳になったから魔術が発現するのではないかと思ったが、一向に発現する感じがない。——もう、同年代のカラナは発現してるっていうのに……。

 あぁ、くそっ! 俺にできない技を使いやがって‼ ——熱っ!

魔術熱波の温度は地上にいる俺でも熱く感じるぐらいのものだった。そして、自身の魔術を木剣に付与し、空中で静止し深呼吸をする。そして、強者に立ち向かうことを喜びとするような者みたいに口元をニッと緩ませる。

「一の太刀! 岩砕き——滅(めつ)!」

 父さんは大きく振りかぶって、目にもとまらぬ速さで剣を振り下ろす。——刹那、魔法で降らせた隕石は真っ二つに割れる。そして、腕をしならせながら隕石を木っ端微塵にし、小石程度に変える。

「まだ、腕はなまっていなかったな………」

「——《チェンジ・サンド》!」

 俺は風魔法で自分を上空へ浮かせる。そして、父さんが変えた小石を俺は砂に変え、目くらましをする。

「砂のせいで目を開けられない……。だが、魔力でどこにいるか見えるぞ! ——……ここだ!」

「うっ!」

 くそっ! これが最終手段だったというのに……!

 父さんは目が見えなかったとしても、俺の剣をタイミングジャストではじく。

「はっ!」

 また、熱波を出して、砂や俺をその衝撃で飛ばす。

「うっ!」

 また地面に逆戻りだ。でも、父さんもさすがに疲弊してきているようだ。その証拠に息が少し乱れている。しかも、今すぐに追い打ちをかけてこない……。

 追い打ちをかけない……いやかけられないのか………? あんな広範囲、高出力の魔術だ。なにかしら弱点があるはずだ。そして今動けないこととなにか関係があると仮定しよう………。もし体の内から放っているものであったとしたら、体の中のどこかが非常に熱くなるはず……。熱い……から冷ます? そうか、体を冷まさないと動けないのか……!

もし、冷ます途中で動き始めたらどうなる………? ——。

「はぁーー‼」

「動けないのが分かったか……。だが! 氷魔法——はっ! あぁぁぁぁあ!」

 父さんが氷で強引に自身の温度を冷ました。だがしかし温度が急変したせいで悶える。

 強引に体を冷やしたか……。でも、動きにキレがなくなったのは確か! このままやる! ここで引くかぁぁあ!

「はぁぁぁぁあ!!!」

 父さんと俺の剣が交差する。力も今は互角。

 押し切って見せる‼

「はぁぁぁあ!」

 父さんはもう一度自身の魔術熱波を発動させる。

「ここで引くかあぁぁぁぁあ‼‼‼ 《我が右手に光よ宿れ! シャイニング・ハンドォォォォォォォオ‼‼‼‼》」

「うっ…!」

 父さんは目を反射的に瞑る(つむる)。

 洞窟探査や暗い場所でろうそく代わりに、自身の手を発光させるだけの魔法を応用し、一瞬だけ明るくさせ、目潰しに使った。

「…《癒》魔法…——これで今度こそ…! 決まりだぁぁあ‼」

 剣の先端を父さんめがけて突き出す。

「見えていなくとも、見えている‼‼」

今度は剣と剣はぶつからず、相手の体をめがけて両者ノーガードで剣を突く。

「——うっ‼」

 父さんの木剣は俺の胴に突かれた。——俺は今日、何度上空から叩き落とされたか……。

 父さんは左手で自身の左わき腹を触る。

「………やるじゃん。エオ」

 わき腹にはかすり傷ができていた。

「よっしゃー!」

「よし、約束だから俺の仕事を見せてやる。………でもすごいな、エオの剣はギリギリで俺に届かないと思ってたんだが……」

「それはね、剣を《癒》魔法で長さを伸ばしたんだ。《癒》魔法は植物を成長させたり、修復させたり、自分や他人の体を治す効果のある魔法が多いから………まぁ、魔法は手合わせ中に父さんに披露してたし、詠唱は覚えてたから……」

「……敵に塩を送ってたってわけか……」

 父さんは静かに納得する。

「でも、今日初めて《癒》魔法が使えた! やっぱり、戦いは人を成長させるんだな!」

「そう! 戦いは自身の殻を破くためにあるんだ!」

 あっ、声が大きい父さんに戻った。

「………、ねぇ、エオ? あなた……?」

 背中に寒気が走る。恐る恐る声の下法に振り向くと……表情は笑ってるのに、目が笑っていない、絶対に怒ってる感じがする母さんが現れた……。

「これ、どうしてくれるのかな?」

 このあたりを母さんは指をさす。……いやな予感がしながらあたりを見回すとは芝生が土に埋もれ、地面に穴が開き、塀の石が崩れていた……。

「んっ………」

 挙句の果てには家の屋根の瓦がところどころ崩れているところをニコッとしながら親指で指さして見せた。

 その現状を見て父さんはスッと母さんの前に正座する。俺も父さんお隣に座り正座する……。

「片付けしてくれるわよね……?」

「「………」」

「返事は……?」

「「はい!」」

 ……これは魔法や剣の練習、挙句の果てには鍛冶師の仕事を見せてくれるという父さんとの約束も当分先になりそうだ………。


        ×   ×   ×


 ようやく一週間かけて、瓦礫の跡片付け、塀と屋根の補修、芝の修復が終わった。

 そして今日はようやく父さんの鍛冶師、魔道具製造の仕事を見せてもらえることになったため、トイレの隣にある鍛冶小屋に来た。

「父さんこれ何?」

 壁にかかった、独特な形をした漆黒の大剣を指さした。

「あぁ、これはな、魔剣だ。父さんの自信作なんだぞ! これは魔法が持っていた——」

「父さん、このピアスは?」

「これは俺と母さんとユアが身に着けているピアス型の魔道具だな」

「やっぱり!」

 すごい! これが魔剣! これが魔道具! これが異世界!

 私はずっと目を輝かせて、部屋を見渡す。

「なぁ、もしよかったら…魔道具、作ってみるか?」

「えぇ? いいの⁉」

「あぁ、いいぞ。この前俺に買ったご褒美だ!」

「やったー!」

 そんなずっとはしゃいでる私を父さんは優しく見ている。


        ×   ×   ×


星聖歴 1218年 10月


 風が吹き荒れる、ある日の深夜。

 遠い家の屋根からエオンの家を見つめる男がいた。

「——やはり、ここにいるという情報は正しかったですね」

その男はあくる日にいた角が生え紳士服を着た赤目の悪魔。

紳士服の悪魔はようやく、数年探していた『ある人』を発見した。

「返してもらいますよ………その体。それがあの『お方』の命令。——『それ』は今のあなたにはふさわしくない。………今は私が十年前、一部壊したため本来の力は発揮しないが、その体の心臓は膨大な力を秘めている。…それは我々の計画に必要な最重要物………」

 その悪魔は虎視眈々と目を光らせる………。


        ×   ×   ×


「うっ、うっ………」

 エオンは唸り(うなり)、体から汗が出ている。……夢でうなされていた。


——エオンの夢の中。

「ここはどこ?」

目を覚ますと、私は何も先の見えないくらい真っ暗の空間でポツンとある椅子に座っていた。

「あれっ、俺は何を…してたんだっけ………?」

 俺は椅子からゆっくり腰を上げ、あたりを見回した。

 あたりはやはり真っ暗で何も見えない。

 少し歩いたが………何も見えない。しかも、暗闇は一向に晴れない。

 もう少しだけ歩くと——突然、鏡が現れた。

 鏡はエオンの。今の自分の姿を映す。——だが、瞬きをした瞬間……私の姿は転生する前の私…。巣羽彼方を映す。

「………どうして、私の転生の前の姿を………?」

 私は視線を落とし、自身の体を確認する。………私の体は巣羽彼方だった。

 私はこんなあり得ないことが起こっているというのに驚かなかった。…いや、驚く気力がなかった。すると、

「彼方ー!」

 私を呼ぶ………未来の声がした……。

 えっ……?

「久しぶり、彼方……」

 そこには死んでしまったはずの未来の姿………。

 ………。

「んっ」

 未来は「どう? ハグでもする?」と聞くように、私に向かい両手を伸ばした。

「未来っ!」

 私は未来に駆けて、胸に飛びこんだ。

 触れている感触がある……。

「未来会いたかった!」

「うん……私も……」

「あれ、どうしたの? ……その傷」

「あぁ、これね……。彼方を庇った時にできちゃった!」

「えっ?」

 未来の胸から彼女の顔を覗く……。

 そこにはさっきまではなかった傷が無数にできた未来がいた。

「んっ!」

 私はその傷だらけの姿を見て、絶句し反射的に未来を突き放す。

「どうしたの彼方……? 痛いよ、突き放して……。まさかこの傷が怖かったのかな?」

 未来は不敵な笑みを浮かべる。

 おかしい、初めて見る未来の顔だ。こんな顔未来はしたことない……。

「誰だ!」

「………未来だよ。忘れちゃったの?」

「………。そんなの忘れるわけない……その傷だって私のせいというのもわかっている」

「そうだよ、だから……!——」

「でも! 未来は『私のせいで』なんてことは言わないし、そんな怖い顔しない‼」

「ふっ………」

 未来は口元を歪ませる。

「わかっちゃうんだ……」

未来…は私の方に手を向ける。

次の瞬間、鎖のようなものが私の足に絡まる。

「なんだ、これっ⁉」

 それは切り取ったような口が何個も何個もつなげて鎖にしているどうしようもなく気味が悪いものだった。そして、それは一つ一つの口が別々で私に向かい暴言や嫌味を吐いたり、嘲笑ったり、くすくすと馬鹿にして笑う。

「んっ……! んっ……‼」

 無数に繋がった口の鎖は徐々にもう片方の足、腕、胴体、そして私の首に巻き付き、

『ちュウ、チゅウ』

 鎖の口の一つは私の唇に張り付こうと他の鎖についている口を引っ張る。

 そうだ! 魔法……! ——……使えないっ……! 魔力を感じない……。まさか! この転生前の、巣羽彼方の体だからか!

「んっ、んっ……」

どうすれば……! 万事休すだ……!

「はぁぁぁあ‼」

 すると、私の後ろから、叫ぶ男の声が聞こえた………。

「誰っ⁉」

 私に向かい駆け寄ってくる男は赤いラインの入った白のロングコートを着ていた青年だ。

 ………どこかで……。

「はっ!」

 白いコートを着た青年が私に縛りついた鎖を斬る……。

『痛イ、ィたい、いたィィィィ!』

 鎖が口をそろえて絶叫する。

 だが白いコートを着た青年はその声には耳を貸さず、その鎖を木っ端みじんにする。……すると、鎖は黒い煙を出して消失する。

「あら…切られちゃった……」

 未来?は鎖が切られたことに少し驚く。

「大丈夫かい?」

 白いコートを着た青年は私を抱き寄せてさわやかに笑う。——しかし、目元は隠れて見えない。

「おい! そろそろ、正体現したらどうなんだ?! 悪魔………」

「ふっ……ふふふふふふ、あははははは‼ ………。 ——何故分かった……?」

 未来?は漆黒に包まれ、姿を変える。——それは紳士服を着た赤目の角の生えた…悪魔?に

変わる。

「……。お前から悪魔臭がするからね………」

「……あなた……まさか、私のこと知っていますね………」

「さあ? それはどうだろうね?」

「………。おかしいですね。記憶力はいいほうなのにあなたの顔をまったく出てこない……」

「まあ、今後出会うかもね………」

「………。あなたのせいで悪夢を見せてこの女の精神を破壊しようと思ったんですが……もう無理なようですね……。………では私はこのあたりで引くとしよう……」

「………逃がすとでも……?」

 白いコートを着た青年はその悪魔を睨み、自身の腰についた鞘に納刀してある剣に手をかける。

「ここは夢の中の世界………悪魔にとっては自身のフィールドそのもの……」

 悪魔は手を自身の前に上げる。

 その動作を察知した青年は悪魔に向かって走り出し、剣を抜く……。

 刀身のない剣………?

 それに気づいた悪魔が、

「刀身のないはりぼての剣でどうするつもりですか?」

 と、青年を小ばかにする。

 すると、青年はニッと、唇が上がった。

「エンチャント《ウィンド。スラッシュ・カット》……!」

 刀身のなかった剣に緑糸の淡い光が集まる。

 青年は空気を横に剣で切り裂いた。——すると、刀身がないはずなのに悪魔の腕は地面に落下した。

「うっ……!」

 悪魔はこれ以上この男の近くにいるのは危険だと感じ、後ろに跳んで離れる。

 ………悪魔は自身の腕が切り落とされたことに気付き、そして信じられないと、目を丸くする。

「なんですその剣は……? 魔剣? いや、聖剣か? ………いや、そんなことは関係ない……では私は今度こそ引かせてもらいます。」

「逃がさないっ!」

 青年がまた悪魔との距離を詰めるために走り出すそうとするが、

「いいんですか? この女がどうなっても……?」

 私の周りに《火》魔法でできたであろう無数の火の球体が取り囲む。

 そして、その球体は一つ一つと爆発し始め、他の球体にもあたり誘爆する。

「きゃっ!」

「くそっ!」

 白いコートを着た青年は私にすぐさま駆け寄り、自身のコートを頭から被せ、

「エンチャント《アブセンス。マジック・ブロック・フィールド》

 すると、刀身に透明な光が宿った。そして白いコートを着た青年は剣を地面にさし、魔法を防ぐドーム状の障壁を作った。

「大丈夫ですか……?」

 そう問われ、私はうんうんと首を縦に上下させた。

 煙がはれると悪魔の姿はなくなっていた。

『あなたの顔覚えましたよ——』

 と、言い残して……。

「逃がしたかっ……!」

「ごめん、私のせいで……」

 私は面目なさそうにしゅんとさせて謝る。

「いっ、いえ!」

「あの、お怪我はありませんでしたか?」

「あっ、はい…! 大丈夫です……」

 私は自身の体を見回して大丈夫だと答える。

「それはよかった! ………はいはい、分かったよ。——おっと時間だ、では私はこれで……」

「あ、ちょっと………!」

「なんですか?」

 私から離れていく青年を呼び止める。……、

「私あなたにどこかであった気が……!」

 確証はなかったがどこかで見覚えのある顔、どこかで見たことある剣だった。

「……未来で会いますよ……」

 そう言い残し、白いコートを着た青年は闇の中に消えていった。


        ×   ×   ×


「はぁっ! ……はぁー、はぁー、はぁー」

 私はベットから飛び起きる。

「どっ、どうしたの~彼方君…」

 私の隣でなぜか寝ているアイラが寝ぼけた声で聞く。

 なんで、この妖精、私の隣で寝てんの……?

 と、疑問点もあったが、

「いや、悪夢を見てたんだと……思う…」

「思うってw……」

 アイラは少しあきれながらも笑う。

「もう~、私最近寝れてなくて眠いんだけど……」

「あぁ、ごめん……」

 私は素直に謝る。

 ていうか、妖精も寝るもんなんだね………。

「じゃあ、寝るか……」

 もう一度私は布団に入り、目を瞑る(つむる)。

 すると、ゆっくりとゆっくりと眠気が襲って、熟睡する。


        ×   ×   ×


「………」

 アイラは目をこすって、眠いふりをやめる。

「誰かに、魔法障壁を破られた……」

 自身が作ったこの村を囲む膨大な半球状の魔法障壁が破壊されたことを察知する。

 アイラの作った魔法障壁は魔法を防ぐ用の壁ではない。それはいわば、その半球状に囲まれた中の範囲を外からの魔力探知から阻害し隠すためのものだ。しかも、魔物だけが気づけないように細工してあるものだ。また、魔物が近づいたり、入れないようにする魔物専用の結界魔法もその障壁の上から掛けていた。

 それを破壊できたということは

「う~ん…、あの魔法障壁は結構な手練れじゃないと破れないと思ったのに……」

 アイラ少し難しそうな顔をする。

「………まずいな……。——悪夢を見たってことは悪魔か……、しかもあの魔法障壁を破るほどの結構な手練れ………侯爵級以上か……。まだこの近くにいるようだし……」

 アイラはエオンの家の外に出て、魔力の残滓をたどる。

 すると数キロ先に邪悪な魔力があることを察知した。

(この辺りかな?)

そして、アイラは自分の膨大な魔力を解放して自分の体の数十倍のあるだろう風でできた球体を音速で放つ。

 手ごたえはあった気がした。すると、さっきまで感じていた邪悪な魔力はふっと消えた。だが、

「流石にあれだけじゃ、殺せるわけないよね……。じゃあ、僕は本来の役割に戻りますか」

 アイラは光の粒子に姿を変え、エオンの身に宿りなおした。


        ×   ×   ×


「くそっ……」

紳士服を着た赤目の悪魔が爪を噛む。

「やはり、実力行使しかないようですね……とは言えこの腕です」

 紳士服の悪魔はぶらぶらしているがかろうじてつながっている腕を抑える。……その腕からは血が止まる気配もなく流れ続けている。

「今はいったん引くとしましょう……」

 紳士服の悪魔は自身の周りから煙を出して姿を消す——。


        ×   ×   ×


 この世界に転生してからざっと半年たった。

 今日はあいにくの雨だ。

 最近はずっと雨が続いている。じめじめしていた雨で少し気分が憂鬱だ。

「なぁ、母さん。シチューってまだ?」

「はいはい、ちょっと待っててくださいね」

 父さんがおなかを鳴らし、椅子にだらーっと背をそりながら母さんに聞く。

 今日の夕飯はシチューだ。

 母さんのシチューはおいしいからな。父さんがあんなになるのもわかる。だが、さすがに怠けすぎじゃないか?

 だが、俺もさすがにお腹が空いてきたため、母さんを手伝ってご飯の時間を早めようと試みる。

「あっ、俺も手伝うよ」

「そう、じゃあ——」

 どこからか爆発音が聞こえた。それも、俺の魔法では出せないほどの音……。

……すると、俺の家が震度三ぐらいの強さで左右に揺れる……。

父さんはその爆発をいち早く察知したようで玄関を開けた。

「……村が焼かれている………」

 父さんの表情はこちらからは見えなかったが、言葉が詰まっていたため、到底信じられないことが起こっている事は分かった……。

私も家の窓から村を見下ろす(みおろす)。

 ………そこは地獄絵図だった…。村は火に包まれ、建築物は崩れていく。また、その村の住人はアンデット族、獣人族、ゴブリン族などの魔物と言われる種族に一方的に蹂躙されている………。

 すると、直径十メートルはある火炎球が村があるほうからこちらに向けて飛んできた。

「くっ、まじかよっ…!」

 父さんが《無》魔法で、家を包む球体の魔法防御障壁を築いた。

「………っ」

 魔法防御障壁がその火炎球の軌道をそらしたが、その強さにひびが入り、砕け散る。

「このままだと子供たちと家が………」

 母さんが私とユアの身を案じる。

「そうだな、ここはいったん避難するしか……」

「ええ、そうしましょう……」

 父さんと母さんは家より家族の命が大事だと決断した。


「さあ、行くわよ。二人とも…!」

 父さんと母さんは最低限の身支度をして、私とユアに避難することを促す(うながす)。

 ——私たちが足早に家を出た。ふと、数歩行くと私はこの世界で暮らした家を名残惜しく足を止めて遠目で眺める。

 また、みんなで……テーブルを囲んでご飯……食べれるよね……。

 そして、私は視線を戻し、避難するために足早にその場を後にした。


——私たちは少し山道を登った先にある屋敷に到着した。

ここはエリナリアとカラナの家だ。

 父さんは玄関にあるベルを鳴らす。数秒したら、

「はい……」

 エリナリアが扉を開けた。……エリナリアは辛そうな、悲しそうな顔をした。カラナはエリナリアの裾をつかんで泣いていた。

「どうしたんだ……エリナリアちゃん、カラナちゃん……?」

 父さんがエリナリアの表情を見て心配する。

「…いえ…お父さんとお母さんが村のみんなを助けに行くって………」

 エリナリアは言葉を詰まらせながら言う。

「まさか、あいつら………」

 エリナリアとカラナの両親が戦火の中に行ってしまったことを聞き、父さんは険しい顔をして唇を噛む。

「俺らも行かないとっ……、なぁ母さん!」

「ええ、さすがにあの二人だけでは不安よ……」

 母さんは私とユアに視線を送る。

 私は村があるほうを木と木の間から見下ろす(みおろす)。すると、村の中心の上空静止している黒い服の男が見えた。

 黒い服の男はぎょろっとこちらに視線を向ける。

 私と目があった気がした……。

 まさかね………。

「エリナリアちゃん、エオとユアと一緒にしてくれないか?」

「えぇ、分かりました」

「すまない、ありがとう——」

 ——すると、急に空間が歪み、さっきの黒い男……もとい、角が生えた紳士服を着た赤目の……悪魔?が現れた。

「誰だっ⁉」

 父さんがいち早く急に現れた男に気付く。

「……っ⁉」

 母さんも男が急に現れて驚く。

「………こんにちは。侯爵悪魔が一人、『フード・ディート』でございます……」

 フード・ディートと名乗る悪魔は自身のコートを左手で横にひらりと引き、貴族のお辞儀をする。

 さっきまで、数キロ離れたところにいたはずなのにっ!

 すると、父さんと母さんは剣を引き抜き臨戦態勢に入り、エリナリアは私たちを自身の後ろに下げる。

(侯爵悪魔はここ三百年出現情報を聞いたことがないぞ……)

 父さんは冷や汗をかいている……それほど強敵なのか?……でも侯爵って……。——侯爵悪魔は悪魔の上位種、………それほど強いってことか……。

「おっと、剣を抜くなんて怖い怖い……」

 フード・ディートは両手を頭の位置に上げ、茶化すようにニヤニヤする。

「……お前の目的はなんだ⁉ 俺たちの村を焼いて……!」

「私の目的はその少年をもらいに来ました」

 悪魔は私のことを指さす。

「エオを……だと⁉」

 父さんと母さんが目を見張る。

「——えぇ」

「なんでだ……なぜエオなんだ⁉」

「それを話すことはできません」

「………っ」

「………自分があなたについていけば、村の人たちや家族や友人は助かるんですか?」

「えぇ、あなたが私についてきてくれるのならば、我が軍はあの村から手を引きましょう。もしよかったら、《呪い》魔法で契約してもいいですよ」

「………」

 私は悪魔のもとへ一歩踏み出す……。

「待って……」

 誰かが私の服の裾を引く……。それはユアだった。

「兄さん言っちゃやだ………」

「でもな、ユア。俺がこの悪魔について行けば村の人…今悲しんでるユアの友達だって助かるんだよ……」

 私はユアを説得する。

「でも……この人に兄さんがついて行ったら……もう会えない……気がする……」

 ユアは涙ぐんでいたとしてもその手を離さない。

「………」

 悪魔はそのユアの言葉に対して何も弁明しない。

 すると、私の肩を大きくて硬い父さんの手がガシッと掴む。

「息子を……お前みたいな胡散臭い悪魔に渡す親があるかっ!」

「でも、俺がこいつについて行かないとっ……!」

 母さんは私のもう一つの肩に手をそっと置き、首を静かに横に振る。

「……私たちの息子は渡さない。村だって私たちと私たちの仲間が救う」

 フード・ディートは思っていた回答とは違い、「はー」とため息を吐き落胆する。

「……あなたたちは馬鹿ではないと思ったんですがね……交渉決裂ですか………。では、実力行使としましょう……」

 父さんと母さんはもう一度剣を構え直す。

「先に行け! エオ、ユアを、みんなを頼むな………」

「エリナリアちゃん、カラナちゃんも先に行って私たちはこいつを倒してから合流するから……」

「………。分かった……父さん母さん……」

「絶対来てねっ! お父さん、お母さん!」

「……じゃあ、行くわよ。二人ともっ!」

 私とユア、エリナリアとカラナはその場を後にする。

 しかし、私はこの時思ってしまったことがあった。

 父さんと母さんは私とユアに『別れの挨拶』を言ってるのではないか……と。

だがそんなこと考えたくなかった。こんなに仲のいい家族。この世界の大切な家族……を失うことなんて考えたくなかった——。


        ×   ×   ×


 私たちは一時間ぐらい歩き続け、山一つ越えた。

「——お父さんとお母さん大丈夫かな……」

 ふと、私におんぶされているユアがそんなことを呟く。

「……そうだね、父さんと母さんは無事かな……?」

「……まぁ、無事ではないですね………」

 私の右の耳元で男性の声が囁いた。

 この声! まさか、フード・ディートっ!

「くっ!」

 私は腰についている護身用の剣を鞘から引き抜いて、自身の右にいるであろうフード・ディートに向けて顔も見ず、体を動かさないで剣を振る。

 エリナリアも自身の手をフード・ディートに向け、《氷》魔法で氷柱(つらら)を生成し放つ。

「ふっ、殺意マシマシですねー」

 フード・ディートは私の剣とエリナリアの氷柱をバク転しながら避け、馬鹿にしたように笑う。

「父さんと母さんをどうした?」

 私の胸の内からふつふつと怒りがこみあげてくる。

「……えぇ、死にましたよ…」

「うそっ?」

 ユアは信じれない…と絶句している。

「………。絶対に殺す…」

 私は表情を変えず剣を逆手で持ち、詠唱を始め、《火》魔法で火の球体を作り、フード・ディートに向けて撃つ。——だが、悪魔は軌道が見えているようで、わざとすれすれで避ける。

 私はその間。ユアを木の陰に避難させる。

 ユアはボロボロと大粒の涙を流している。

「ユアはここで待っててね。兄ちゃんがどうにかするから」

 私は心配させないように、微笑む。

「………うん」

 エリナリアもカラナをユアと同じ木の陰に隠し、

「カラナ…あなたもここにいて、ユアちゃんを守りなさい……あなたはユアちゃんよりお姉ちゃんでしょ?」

 と、頼む。

「うんっ……」

 まだ、さっきまで涙を流していたあとが残っているカラナは鼻水をすすりながら頷いた。

 私とエリナリアはフード・ディートの前に立ち、見つめる。

「フード・ディート……お前は本当に悪魔だ。罪のない人を大勢殺して……」

「なら、貴方も悪魔でしょう。あなたが私について行けば、君の両親も友達も村の人々も犠牲にならずに済んだというのに……」

 くっ——私は唇を噛む。

「黙れっ!」

 私は《風》魔法で風の太刀を作り、何個も飛ばす。

「ふふっ、甘いな」

 フード・ディートは柔軟な体の動かし方ですべて避ける。

「くそっ!」

「はぁ!」

 エリナリアは《氷》魔法で地面を凍らせて、フード・ディートの足を止める。

 しかし、フード・ディートは足を上に上げただけで薄っぺらい氷のように、エリナリアの足止め用の氷をバキバキにして砕く。

「噓でしょ……」

 エリナリアは自身が出した氷がこんないともたやすく破壊されたことに絶句する。

「はあっ‼」

 エリナリアは間髪入れずに何度も氷を打ち込むが一向にダメージが入っている気がしない。

 私はエリナリアの魔法を十分に発揮させるために《水》魔法で雲を作り雨を降らせる。

「ふんっ!」

 エリナリアは私が出した魔法の意味を知り、

「《我が出したいのは氷、すべての水を氷に変え、その姿を凶器へと変化せよ! アイス・ラミフィケーション・ニードル》‼‼」

 雨は氷に変わり、氷が鋭利な針へと変わり、無数の針の雨がフード・ディートを襲う。

「なかなか、連携をとれてますね。しかしっ‼ ——こんな、小さな針?………なんだ?」

 針はあまり効いてないようだが——毒は効いているようだ……!

 私は《毒》魔法で雲から水が落ち、氷に変わる瞬間に水に毒を混ぜた。

「あなた、まさか……氷の針に毒をつけましたね………」

フード・ディートは片膝をついて、私を睨む……。

初めて膝をついた。これなら……。

「しかし、この程度の毒——」

「——《グランド・メテオ》!《グランド・メテオ》‼《グランド・メテオ》‼‼」

 私は何度も何度も《地球級》魔法、自分が打てる最上級魔法を打ち込んだ。

「ここで仕留め切らないと……! エリナリアさん‼」

「分かったわ! 魔術氷花(ひょうか)!」

 エリナリアの魔術によって後ろに巨大な氷の花が開花する。

「——《全てを氷に変えろ! 『一章 全氷羅雪・変』(いっしょう ぜんひょうらせつ・へん)》」

 地面や植物が凍って、この山全体を氷山へと変える。

しかし、私たちは凍らない。生き物はエリナリアが敵視するものしか凍らないのだ。

 煙で包まれて姿が見えないフード・ディートは何層の氷に包まれて、身動きをとれなくさせる。

「これでお終い……《第二章 深積闇——》うっ……」

 エリナリアの詠唱中、後ろから煙をまとった何者かに剣で刺された。

「なかなか素晴らしい魔術ですが……発動経験が少ないためところどころ氷に粗さが見えます……」

 フード・ディートがエリナリアの体から剣を抜く。

「まだだーーー!!!」

 エリナリアは身を反転させて、フード・ディートに攻撃しようとするが——、

「さようなら……」

 フード・ディートの手がエリナリアに触れた………次の瞬間手から炎が上がり、エリナリアを包む——。

「カラナ――」

 エリナリアは見るも無惨な姿に変えられる。

「あっ、あっあっ………」

 私は《地球級》魔法の連発で魔力を使いすぎ、体が重くなり、重くなった足取りで無惨な姿に変えられてしまったエリナリアに一歩一歩と近づく。

 まだ、かろうじて息はある……。

 私はエリナリアに触れ、《癒し》の回復魔法をかけて、気道確保する。すると、呼吸がゼーハーゼーハーとままならなかったエリナリアは正常な呼吸を取り戻す。

しかし、今の私の魔力では五分も持たない……。この、悪魔はいまだに無傷………。どうする⁉

すると、木の陰で隠れていたカラナが激高して飛び出してきた。

「あぁああああぁああ‼‼  魔術空靴(そらぐつ)! ——《風》魔法ウィンド・シュート

 カラナの魔術は空中を自由に素早く走れるものだ。

カラナは風魔法と合わせ素早く空中と地面を交互に素早く駆け回り、風の斬撃を飛ばす蹴りでフード・ディートと距離をとりながら攻撃する。

 フード・ディートは斬撃を浴びてもずっとニヤニヤしている。しかも、まったく効いている気配すらなかった。

「すばしっこいネズミと同じですね……しかし……」

 そして、カラナは地面に一瞬降りた、その時だった。

 フード・ディートは地面を覗き、口を歪ませた。

「——あぁああああ‼‼‼」

 カラナの両足は太ももを境にして消えた。地面に地雷魔法が埋め込まれていたのだ。……カラナは羽をもがれた鳥のように自由に飛翔できなくなり地面へと落下する。

「痛い、痛い痛いイタイ‼‼‼」

 切断された部分から大量の血が流れ出て、カラナは足を抑えて悶え続ける。

「………お姉ちゃん……?…」

 カラナはそう言い残して、

「カ……ラ…ナ……?」

 私は呼吸が早くなる。

 まだだっ……。

 まだ、カラナの心臓はエリナリアと同様、動いている………。

カラナが落ちてきたのは私の目と鼻の先……。《癒し》の回復魔法ヒールで止血すればまだ間に合うかもしれない………。早くっ! 私が何とかしないとっ‼ この二人だけでも『私が』助けるんだっ………!

私は両手でエリナリアに《癒し》の回復魔法をかけていたが、片手で《癒し》の回復魔法でを掛けることに切り替え、空いた片方の手をカラナに押し当てて《癒し》の回復魔法を唱えた。

「……もはや、詰みですね………」

 フード・ディートは笑っている。フード・ディートはもう一度右手で手刀を作り私の癒し魔法をかけている手を斬り落とそうとする。

 ここで、魔法を切ったら二人は………どうする? どうすればいいんだ私……⁉

 ユアは絶体絶命の私を見て、私の方に向かい魔法陣を作りながら走ってきた。しかし——、

「兄さん逃g――」

 まだ習っていない魔法を見よう見まねで発動させようとするも、フード・ディートに蹴り飛ばされ、ユアは木に頭をぶつけ気絶する。頭からは少し血が流れた。

「ユアっ‼‼‼ ………ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ‼‼‼‼‼」

 私は涙を流し、絶叫しながら、策略など考えず無我夢中でフード・ディートに剣で斬りかかる。

 しかし案の定、私はフード・ディートにあっけなく蹴り飛ばされ、体が転がり地面を擦る。

「うっ……、うっ……」

 もう……起き上がる気力だって、魔力だってない………。体が重いし、痛いんだ……。

 すべて…すべて私のせいだ……。何も守れなかった……。父さんと母さんとの約束も守れなかった………何もっ‼ と自分へ無力さを嘆く。

 何が異世界転生だ……こんなことになるぐらいなら…転生なんてしたくなかった………。

「魔力超過ですか……まぁ、これで終わりですっ」

 フード・ディートは手刀を振り下ろす。だが、

「——まだ絶望するには早いんじゃないと思うよ」

「えっ……アイラ……なの?……」

 聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。だが、私はアイラを見なかった。

「………。なんで、もっと早く……来てくれなかったんだ………」

「…っ。……ごめん……。……」

 アイラは何か言いたげだったが、それを飲み込んで、申し訳なさそうに謝る。——私はそのアイラの申し訳なさそうな声を聞いた後、徐々に瞼が重くなり、視界が真っ暗になり、意識が消える。

 ………ごめん、アイラ。君はいつも私に生きる希望や元気をくれるのに……アイラに怒りの矛先を向けて八つ当たりして……。全部自分が招いたことなのに、自分のことは棚に上げて……。だけど、私は思ってたんだ……アイラは父さんや母さん、そしてこの私が戦って負けた悪魔以上に強いと感じたから、どんなに絶望的な状況になったとしてもアイラならどうにかしてくれるんじゃないかと………そんな願いがあったんだ…………。


だからごめん……アイラ――。


        ×   ×   ×


 エオンは意識を失ってしまった。

「貴方はどちら様ですか……まぁ、いいです。あなたもろとも死んでください…」

 フード・ディートはエオンとアイラを範囲にとらえた《闇》魔法の球体放つ。

 《闇》魔法の球体は地面を抉り、エオンとアイラに向かい、ものすごい速さで接近するが、アイラはそれより速く瞬間移動するようにエオンを抱きかかえて、高く跳び回避した。

 そして、アイラは木にエオンをももたれかかせると次に瞬間移動をしたような動きでにユア、エリナリア、カラナを回収しエオンと同じ場所に集め地面に横たわらせた。

「《癒し》魔法ブレッシング・ヒール、《プランツパワー・コンバージョン・ヒール》」

 なぜか髪が伸び成人女性ぐらいの身長になったアイラは、エオたちに手をかざさずに魔法のヒールを、しかも複数同時で行った(おこなった)。

「同じ属性の魔法を並行して発動できるなんて……あなたなかなかやりますね」

「そうでもないよ。私なら魔法を十個同時に発動できる——」

 すると、アイラの後ろから無数の魔法陣が現れ、それぞれ別の属性、別の形状、別の強さを持った魔法が飛び出す。

「くっ……!」

 フード・ディートが顔をしかめる。そして悪魔はアクロバティックに魔法を数個避けるが、

「うっ……」

 アイラの魔法の一つがフード・ディートの左肩を貫く。

「………殺意マシマシでいいですねー……」

 フード・ディートはニヤニヤしながら煽る。

「………」

 フード・ディートに煽られても一切表情を変えずに絶え間なく魔法を浴びせる。——いつものアイラからはまったく見られない悍ましい顔で………。

「うっ……くっ………」

 一つまた一つとアイラの魔法がフード・ディートの体を貫き、表情が曇る。

(まずいですね………魔力防御もあっちの魔法の練度が強いせいで一瞬でも気を抜くと貫かれる………!)

「がはっ!」

 魔法を百…二百以上浴びたフード・ディートは動きが遅くなり、その一瞬を突かれ、一メートルぐらいの光の剣が腸(はらわた)に刺さって肉を抉る(えぐる)。

 フード・ディートの動きが一瞬止まる。

 その機を逃さなかったアイラは魔法の発動スピードを速め、一気に魔法を浴びせる。——言葉を発する隙も与えず……。

 数秒間魔法をフード・ディ―トにもろに浴びせたアイラは、一旦魔法の発動を止める。

(さすがに瀕死までは追い込んだだろう……)

 ……煙が晴れて、フード・ディートの姿が見えた。

 その姿は四肢が千切れ、体のあちこちに穴が開き、血が流れ続けていた。

「………くっ、貴様……!」

(まだ会話ができるなんて…。さすが侯爵悪魔……この程度では死なないか……だけど……)

「君にはここで死んでもらう……」

 アイラはまた自身の後ろで魔法陣を何個も発動させる。

 だが、後ろから近づくかすかな殺気をアイラは察知した。

 アイラは宙を一回転し、その殺気をまとった何者からか距離をとる。

「っ! 誰っ!」

 殺気があった方を見る。

「……あら、まぁ。躱されちゃった」

 あーあ、と少し残念そうに嘆く。

(誰? この女の人……。角が生えてるから悪魔?……いやそんなことよりこの悪魔…強い!

この今私が倒した悪魔より………)

「ねっ……姉さん!」

(この悪魔の姉か、やはりこいつの仲間か……!)

 アイラは自身の手から魔法陣を発動させ、臨戦態勢に入る。

しかし、自身の左手が光の粒子へと変わっていることに気付く。

(私の顕現時間と魔力が……残り少ない……この状況を打破する方法を考えないと!………あれは!)

 アイラはエオンの首から下げているペンダントを見つけた。

 そのペンダントはエオンが十歳の誕生日にアディアスからもらったものだ。

(これは、私の——。これがあれば……!)

 アイラはペンダントの方に手を向けた。

すると、ペンダントに埋め込まれている結晶の一つが光った。

「………《テレポート》」

 アイラがそう呟くとエオンやユア、エリナリア、カラナの前の空間に穴が開く。

「はっ!」

 アイラが念力のようなものを使い、その空間にできた穴に送り込む。そして、アイラも光の粒子となって消える――。


        ×   ×   ×


「くそ待てっ!」

 四肢をもがれたフード・ディートは地面を器用に這いつくばりながら追いかけようとする。だが、

「もう、無理よ……。私の魔力探知にも引っかからないわ……」

 フード・ディートの姉は言う。

「くっ……」

 フード・ディートは悔しさで唇を噛んだ。

「さぁ、今日はもう帰りましょう……。あなたもボロボロでしょ……」

「……分かった……」

 フード・ディートは姉の言うことを聞き入れ、姉に抱えられて二人は姿を消した——。


        ×   ×   ×


 アイラたちは巨大な樹木が多く生えた神秘的なところにワープした。

「ふぅ~」

 アイラはもう一度エオンから顕現した。——その姿はいつもの小さな妖精の姿だった。

 すると、アイラのもとへ長い耳の白髪の若い女性が歩いてきた。

「お久しぶりです、——様」

「うん、久しぶり『オーフィン』」

「今日はどうかなさいましたか?」

「——こういうことがあってね……」

 アイラは事の詳細を話した。

「……ごめんね、それでその子たちの治療を頼みたいんだけど……」

「まあ、こんな傷ついて……!」

 オーフィンと呼ばれた女性はエオンたちがボロボロなのを見て、驚愕のあまり口元を抑える。

「お前たちっ」

「「はっ!」」

 オーフィンの後ろにいた、こちらも長い耳を持った男二人が他の者も呼び、男数人で一人一人エオンたちを担架のようなものに乗せ丁寧に運んで行った。

「あなた様はどういたしますか?」

 オーフィンはアイラが消耗しているように見え、休むか聞いた。

「大丈夫だよこんぐらい――」

「しかし、あなた様は『あれのせいで………』」

「大丈夫だって……」

「そうですか……」

「じゃあ、そろそろ僕も彼方君のもとに戻って休むとするよ………。あっ、もしよかったらでいいんだけど……」

「なんなりと」

「はは、ありがとう。…じゃあもしよかったら、あの男の子の特訓とかをしてあげて欲しい」

「承知、致しました」

「悪いね……」

「いえ、あなた様のお頼みと申すのならば……」

 そして、アイラは光の粒子となってその場から消えた。


        ×   ×   ×


「うっ……」

 眩い光が瞼に入り、私は目を覚ました。

 ゆっくりと上半身を起こそうとすると、ズキッと体が痛む。——見ると腕や胴体が状態でぐるぐる巻きだった。

 痛みが起こらないようにゆっくり体を起こしあたりを見回すと……見覚えがある場所ではなかった。すると、

「おっ、やっと目を覚ましましたか~」

 と、横から女性の声が聞こえた。

 声のした方に振り向くと知らない女性がいた。その女性は人間の見た目だが羊のように巻いた角を二つ持ち、ピンク色のふわふわした髪と赤い瞳の自身より背の高い獣人?だった。

「だっ、誰ですか?」

 私は戸惑いながら聞く。

「えーっと、私は羊獣人族のメイです。そして、ここは私たちが暮らす森、『ユグドラシル』です」

「えっ? どういうことですか、俺はアイラに………はっ!」

アイラのことはほかの人に話してはいけないという約束だったのに……口を滑らせてしまった……。

「あっ、あの、あいやー」

 私はどうにか今言ってしまったことをなんとかはぐらかそうとしたが、

「アイラ様のことですね、存じてますよ」

「……えっ?」

 その予想外の言葉で私は拍子抜けだった。

「えっと、どういうことですか?」

「アイラ様ってあなたの契約精霊ですよね……」

「はい……でもなんで知ってるんですか」

「それはですね、私たちの住む森ユグドラシルの最長老様にとって大切なお方だからです」

「えっ?」

 いつの間にアイラはこの森の村の村長と知り合いで驚いた。

 どういう関係なんだろう……?

「でもなんで、アイラを助けるならまだしも、見ず知らずの自分までも……」

 私はこの状況に少し疑心暗鬼になったが、アイラの知り合いなら大丈夫だろうと思った。

「それは最長老様からの直々の頼みだっただからです。エオン様たちを助けて、衣食住まで付けて、エオン様の頼まれたことはやれと頼まれたので………」

「あっそうなんですか……。本当に色々ありがとうございます。すいません、自分家もお金もなくて、少しお世話になっても大丈夫ですか………?」

「えぇ、全然問題ありません。むしろ、そういわれなかったら私は無理にでもここに泊まらせてました」

「本当にありがとうございます……この恩はいつか……」

 私は深く頭を下げる。

「いえいえ」

 メイは手と首を振りながら答えた。

「…あっ、他に助けててもらった人って……」

「いらっしゃいますよ。エリナリア様、カラナ様、ユア様ですよね?」

「はいっ、あのっ……みんなの状況はどうなっていますか……?」

「皆様生きてはいます。しかし、エリナリア様は全身に大やけどを負い、カラナ様は両足を失い、お二人ともまだ目を覚ましてはおりません……。しかし、あなたの妹のユア様は頭を打ちましたが比較的に軽いけがです。数日したら目覚めると……最長老がおしゃっていました」

「そうですか…分かりました………。ありがとうございます……」

 三人とも生きていたということに関しては嬉しかった……。しかし、「エリナリアとカラナについては重症」ということに関しては息が苦しかった。

 これが私が招いた結果か……。

「エオンさん、お三方のことは……」

「だっ、大丈夫です………」

 私はそういわれて、取り繕った表情で返答した。すると、

「——そろそろ、いいですかねー?」

 部屋の前のドアにもたれかかった、女性が視線に入った。その女性は羊獣人のメイとは異なり、頭にオオカミのような耳が生え、銀色のくせ毛のショート髪を持った、メイより数センチ身長が高い、青色の瞳のオオカミ獣人が現れた。

「ちょっと、カミール姉さんっ」

「だってよー、こいつなんか、なよなよしていて気持ち悪いんだもん。——聞いたぜー、村の人たちや両親を自分のせいで死なせてしまったんだっけー?」

「うっ………」

 その女性のオオカミ獣人はカミールというらしい。カミールにそういわれ言葉が詰まり、私は何も反論できなかった。

「ちっ!」

 カミールは舌打ちをした。

その後、私の元にすたすた歩き、私をベッドから引きずり出してから壁に打ち付けた。

「いった! 何するんですか!」

 私はカミールの行動に腹が立ち、睨みつけながら言った。

「なんで、子供のくせに……!」

「——やめてっ!」

 カミールは私に殴りかかろうとしたが、メイが私の前に立ち、仲裁に入った。

「何やってるのカミール姉さん! この子は子供なのよっ!」

「だって、こいつ子供のくせに妙に大人ぶって、自分がすべて悪いって顔して!」

「………あなたに何が分かるんですか……」

 私はカミールの言葉が癇に障り、言い返した。

すると、拳を強く握りしめたカミールが、怒りで震えている。

どうやら私は彼女を焚きつけてしまったらしい。

「フンッ!」

 私の顔面にまたカミールの拳がクリーンヒットした。

この時、私の怒りにも火が付いた。

「このっ!」

 私はメイをどかし、カミールに拳を入れた。

 カミールは私の拳を食らっても動じなかった。

すると、すぐさまカミールは私のみぞおちに拳を入れた。

私はその衝撃で口から胃液を吐いた。

「何もわかってないくせに……何も知らないくせに……好きかって言ってーーー‼‼‼」

「じゃあなんだ、言ってみろよ!」

「俺がいなかったら村は平和で……! みんな死んだり、傷を負ったりしなくて済んだんだ! 父さんも母さんも死なずに……! エリナリアも! カラナだって! 重傷を負わずに済んだ‼」

 また私はカミールに拳を炸裂させ、今度は顔に入った。

「いい拳だ! だが甘いっ」

一瞬、カミールはよろけながらも満足したようにニヤッと笑った。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

私はいったん殴るのを止め、自身から流れている血を拭き取った。

「くっそー! 俺があいつについて行くって言ってたら……。俺がこの世界で生きたいって思わなければ……!」

「いいじゃんか! 生きていたいって言っても……それが子供じゃないのか⁉ 子どもが生きているのが親の喜びじゃないのか⁉ 村の人たちへの償いは少しずつ返していけばいいだろ! お前の友達だって、治す方法だってこの世界で必ずあるはずだ! だから、お前が生きれば幸せな未来は必ずあるんだ!」

「………」

 私は少し考えるために止まった。しかし、それが仇となった。

「ふんっ!」

 顔面にカミールの拳がまたクリーンヒットした。

 今考えてたじゃん………。

私はよろけたが、どうにかして体勢を立て直そうとする。すると、と体に痺れるような痛みが襲った……。そうだ、私今包帯ぐるぐる巻きだった。——すごい、体痛い……。

私はぶっ倒れた――。


「このくそ獣人!」

 私は勢いよく起き上がる。

 だが、ボイーンと顔に何かふわふわなものが当たり、弾かれて起き上がることを阻まれ、もう一度横になった。

 ………えっ?

「えっ……?」

 メイが私のすぐ目線の先。私との距離十センチぐらいにメイの顔があった。

そう、私はさっきの部屋のソファーに座っているメイに膝枕をされていたのだ。——そのメイは驚いて呆けている……。なぜ…?

「えっ?」

「えっ………くそ獣人って……」

「……あっ」

 やばい……。確かに目が覚めた時、私が考えている時にカミールが殴ったから、ふざけるなと思いイライラして反射的に発してしまっていた。

「あの誤解なんですよ……。あのオオカミ獣人が………」

「あぁ、………」

 メイが申し訳なさそうに私から視線を外す。

「あの、カミールとかいうオオカミ獣人は……?」

 依然として私と目を合わせてくれないメイはチラッと部屋の隅を見る。そこには、

「んーっ、んーっ、んーっ!」

 と、口に布をかぶせられ何かいいたげに唸り、他にも腕と足を縛られているため芋虫のようにうねっているカミールの姿があった。

 まさか、このメイさんがやったのか⁉ もしかしたら怒ると怖い………?

まぁでも、カミールのその姿を見て、私はさっき殴られたお返しだと思い、

「ふんっ」

 と鼻で笑ってやった。

 すると、案の定カミールはそれに気づき、

「んーっ、んーーーーっ‼‼」

と、さっきより体をうねらせ、自分に巻き付いている縄をほどこうとした。

 一生縄に巻かれとけっ、それか一生首輪でもしてろ! ………おっと、言い過ぎた…。

 さすがにかわいそうかと思い、ほんの少しだけ反省した。

「……なんですか? 騒がしいですよ……」

 女性の声が聞こえ、何の前触れもなく部屋のドアが開けられた。

「最長老様!」

「んーんーんーんん!」(最長老様!)

「最長老様?」

 その最長老様と呼ばれたその女性は最長老というには若く、白い長髪で長い耳を持った美人なエルフだった。

「はい、私がこの森『ユグドラシル』の統括を行っている(おこなっている)、オーフィンです。………まあまあ、どうしたのですか? カミール…」

 オーフィンがずっと体をうねらしながら暴れているカミールに視線を送った。

「んー、んーん、んーー!」

「んー……ちょっと何言ってるかわからないわ……」

 オーフィンはカミールが何を言っているか理解しようと頭をひねらせたが、すぐ諦めた。

「んー……」(ガーン……)

 カミールはオーフィンにそう言われショックを受けていた。

「この口についている布ぐらいは外してもいいですかね?」

「あっ…どうぞ」

 メイは承諾した。

 オーフィンがカミールの口に巻かれた布を外すと、

「うー、ぐるぐる……」

 と、カミールが喉を鳴らし、私を威嚇する。

「あなたがエオンさんですね、アイラ様からお聞きしています」

「あっはい、エオンです。………あのお若いんですね……」

 率直な疑問をオーフィンに聞いた。

「あはい、ありがとうございます。……まあ、エルフは大体二十歳から三十歳の見た目ですし、その見た目が死ぬまでおよそ五百年ぐらいは見た目が変わりませんよ」

「えっ、じゃあ最長老様は何歳なんですか?」

 新たな疑問をオーフィンに聞いた。

「おいっ!」

「…いてっ!」

 女性のオーフィンに年齢を聞いたためが、カミールに頭を叩かれた。——カミールに? あのオオカミ獣人は縄で手足を縛られたはず……。まさかっ!

 もともとカミールがいたところを見た。そこには噛み千切られた縄が……。

「あはは、構いませんよ。みんな、そのこと気になって聞いてきますから。……えっと私は今年で八百三十九歳になります」

「えっ⁉ だって、五百年ぐらいが寿命だって……」

「こらっ!」

 私がまた年齢のことを聞いたためか、カーミルはまた殴ろうとしてきた。だが、

「だめですよ、カミール」

「はい……」

 オーフィンはカミールをやさしい声で注意した。

「私の種族はハイエルフと言いまして、普通のエルフとは少し違うんですよ……寿命もその一つで普通のエルフより長く生きられるようになっているんです…」

「へぇー、そんなことがあるんですね……」

 この世界には、まだ自分の知らないことがたくさんあることがとても興味深かった。

「最長老様、そろそろ本題にいってみては……?」

 メイはオーフィンに耳打ちした。

「えぇ、そうね。では——」

 すると、オーフィンは真剣な顔をして、話を切り出した。

「お三方の容態はメイから聞きましたね……?」

「はい……エリナリアさんとカラナが重傷だって……」

「……そうです。エリナリア様はよく生きていられたというほどの全身大やけどを覆っていて、カラナ様は足を切断されたはずなのに流血は少なかったです……。そのため、一命はとりとめることができました。……憶測にすぎませんがあなたが三人にヒールを行ったからですよね……?」

「はい……ですが、さすがに魔力を使いすぎたためか『魔力超過』というもので倒れてしまいました……」

「そうですか……魔力超過で……。あまり思い出したくないかもしれませんが、エオ様が戦った侯爵悪魔ですよね……?」

「……はい。その悪魔はフード・ディートと名乗っていました……。それに俺はそんなに戦っていませんでした……。主に戦っていたのは父と母だったと思います……」

 私はフード・ディートに全然歯が立たなかった……。そのことを思い出し、悔しくて唇をかんだ。

「すみません。いやなことを思い出させてしまって……」

「いえ……」

「すみませんがもう一つだけお尋ねしてもいいですか?」

「はい」

「エオンさんのお父上とお母上はどういうお方だったんですか?」

「……俺は拾われた子なのですが、育ってくれた父と母は、父はアディアスと言って赤髪のドワーフでした。そして、母はレイナという淡い緑色の髪のエルフでした。……あの、ご存じですか?」

 すると、オーフィンは目を丸くして、

「えぇ、知ってるも何も二人は私が育てたんだから!」

 と、立ち上がり、興奮しながら言った。

「えっ! そうなんですか!」

 初耳で驚きの事実だった。

「そうよー、二人とも生まれた時代はね、戦いが多い時期でねー、二人の両親も戦いに行ったきり帰ってこなかったの。それで私が二人を育てたの。二人はねー、いっつもけんかしてたのよー、何回私が止めに入ったことか——」

「最長老様……」

 メイが咳払いをしてオーフィンの話を遮った。

「あっ、ごめんなさい……。エオンさんもアディアスとレイナのことを余計に……本当にごめんなさい」

 オーフィンは申し訳なさそうに深々と頭を下げた。

「頭を上げてください。…俺も父と母の昔話は興味深かったので………」

 ……あのいつもラブラブの父さんと母さんが……とても意外だった。

「でも、あの二人がねー……」

「俺のせいで……」

 私は唇をかんで、拳を強く握った。

「それはないわよ……。逆に自分の子供のために命を落として誇らしいと思ってるわよ」

「そうですかね……?」

「そうよ! 私だってこの森の子たちのために命を使うとなれば本望よ」

「そういうもんなんですかね……」?

 私が疑問形で聞くと、

「そうよ!」

 と、オーフィンは言い切った。

 親はそういうもの……か……。

「………あの、自分の村の現状を見てみたいんですけど……」

「……分かりました。ですが悲惨なものだと思いますよ……」

「それでも、目に焼き付けておきたいんです……もうこんなことを起こさないように……それと、父さんと母さんにありがとうとごめんなさいを言いたいんです……」

「分かりました……」

「あの、それで――」


        ×   ×   ×


 この『ユグドラシル』で目覚めて一日が経った。昨日は目が覚めたのがもう夕方だったため夜に出発するのはよくないと言われ、今日になった。

私は自身の村に行くための準備を終えた。と言っても、昨日頼んだ花束を三つ持ったぐらいだ。それに加え一人だと危険だと言い、護衛にメイとカミールをオーフィンが付けてくれた。

「では行ってきます。ユアたちをお願いします」

 私は自身のペンダントに三つ埋まった魔法結石の一つに触れた。そして、

「《テレポート》」

 そう詠唱すると私の前に亜空間につながる穴が現れた。

 しかし、便利なアーティファクト……。

 と、言うのも今朝オーフィンにこのペンダントがアーティファクトだと言われた。使い方が分からないと言ったら、「アイラ様が使っていたのを見ましたが《テレポート》と唱えるだけですよ。それ。そしたら行ったところがある場所を思い浮かべて空いた穴に入れば……」と言われ、今試しにやってみたら開いた(ひらいた)。「でも、これ俺以外その場所知らなくても大丈夫なんですか」とまた聞いたら、それは「使用している人が知っている場所であれば他の者が知らなくても転移できますよ」と言われ、「あと、他の人は使えませんよ……。アイラ様専用の魔道具ですので、アイラ様かそのアイラ様と契約しているエオンさんしか使えないですよ」と言われた。

すごいな、チートアイテムじゃん。

と、初めてこの世界のチートアイテムが存在していることを知った。

「もしよかったら、これも……」

 オーフィンは何か小さいものがたくさん入った巾着袋をくれた。

「ありがとうございます……ですがこれは?」

「これは、この森で生えている花の種です。もしよかったらこれを撒いてください」

「へぇ…ありがとうございます」

 私はお礼を言い、私とメイとカミールは亜空間への穴に入った。


「最長老様、あの種って……。渡してよかったんですか? あれはこの森でも五年に一度しか生えない花の種ですよ……」

 森の住人がオーフィンに尋ねた。

「いいの、いいの……」


 亜空間を通ったら、すぐに私が住んでいた家が見えるところに出た。

「……着いた」

「では、私たちはここで待っています」

「分かりました」

 ――まず始めに家から少し離れた村に着いた。

「………何もない……?」

 もともと村があった場所は半球状にくりぬかれ、村がそこにあったという痕跡はなかった。

「嘘だろ……」

 私は見たくなくて視線を逸らそうとしたが、

 駄目だろ。向き合わなくちゃいけないんだ……。この現実に……それを受け入れ、前に進まなきゃ………アイラとの約束を守らないと……『生きなきゃ』……ユアたちのためにも……。

 私は数分間、目を瞑りこの村の人たちがあるべき場所に帰れるように、成仏できるように手を合わせた。

 そして、持っていた花束の一つを地面に置き、持っていた巾着袋から渡された種を取り出した。

 種は風に乗り、村のあった場所全体的に一つまた一つと種は地面に落ちていった。

 いつか、きれいな花を……。

 そう願った。

 ——私は自身の家の前に着いた。

 そこにはボロボロになった自身の家と……家の壁に寄りかかり手を繋いでいる父さんと母さんの永眠した姿だった。

「……と、父さ…ん、かっ母さん………」

 泣かないようにしようと思っていたのに涙が溢れ出して止まらない。

「ごめん、俺……。父さん母さん………ご、ごめんなさいっ………」

『いいんだよエオ、これは俺たちが選んだ選択なんだから……』

「えっ?……」

 一瞬父さんの声が聞こえたような気がした。

いや、気のせいだよな……これも私が言って欲しかった言葉をその人の声に変換して脳が再生してるだけだ……そう、妄想だ……。

『失礼な奴だな……父さんの言葉を無視とは………』

「ひっ!」

 父さんの仏の姿から発せられた言葉かと思い、怖くなる。

『そっちじゃないって!』

『こっち、こっち』

 父さんの声と母さんの声が聞こえる……自身の妄想にしては怖い……。

『だからこっち、だって!』

 父さんの声が叫ぶ。

声がした方に振り向くと………。

『よっ!』

 父さんが私に向かい軽い挨拶をする。その隣には母さんの姿もあった。

「うわーー‼‼」

 私は腰を抜かして倒れた。

『ひどい奴だな。父さんと母さんを見るに驚くとは……やはり、反抗期だな?』

『ええ、そうよね」

 そこには死んでしまった父さんと母さんが私が反抗期と確信して話しているいつもの二人の姿だった。

「………父さん! 母さん!」

 私は体が勝手に二人に抱き着こうとする。

「えっ?」

 しかし、抱き着くことはできず、父さんと母さんからすり抜けてしまった。

『…あ~、エオ、俺と母さんは死んでしまったらしい……』

 やっぱり、私のせい――、

『やっぱり俺のせいで……とか思っているだろ』

 図星だった。

『あ~、さっきも言ったが父さんと母さんはこの選択を後悔していない、自分の息子と娘が生きててくれて……また、顔が見れたからよかったと思う……。だがな、一つ言いたいことがある。せっかく俺たちに会いに来てくれたんだったら、あ~、ならもっと笑顔を見せてくれないか……?』

 父さんは優しく言う。

『あなた、でもさすがにそこに私たちの死体があるのよ笑えないわ』

 母さんはまじめな顔で言う。

『それもそうだな。エオ、俺たちの仏さんを天に返してくれないか?』

 私は静かに頷く。

『そう言えば、エオ、お祈り魔法使えるか?』

「やったことないけど、たぶんできると思う……」

『できないって言わないところがお前はすごいよな………。よし、最後の魔法の練習だ! では、詠唱を始めるぞ。……やってみろ』

「わかった……」

 私は涙を服の袖で拭いた。

……」

 すると、優しい光が父さんと母さんの永眠した姿に触れ、少しずつ光に変えていった。

 私は父さんと母さんの方を向いた。

「………父さん、母さん。ありがとう‼ ぐっ……ぐすっ、父さんと母さんの息子でよかった!」

 私はまた涙を流してしまったが父さん母さんに自分ができる最大の笑顔で感謝の言葉を伝えられた。

すると、父さんは後ろを向き自身の目元を抑え、母さんは瞼に涙をためていた。

『……俺もお前の親、ユアの親に慣れてよかった……!』

『ええ、私も……!』

 そう言うと、魂の父さんと母さんは光に包まれ始めた。

『『ありがとう』』

 二人はそう言って、光に包まれて消えた。

「こちらこそありがとう。大好きだよ父さん母さん……」

『鍛冶小屋にある黒い大剣はエオのだ! この剣がスムーズに触れるようになったら一人前の剣士だ‼』

『エオ、ユアを…みんなのことをよろしくね』

 そして、二人の声は聞こえなくなった。

 ——私は鍛冶小屋で黒い大剣を見つけた。

「これが俺の剣……って重!」

 瓦礫の下から大剣を持ち上げようとしたが、普通の自分の力では無理だと思い、魔法を工夫しながら使い持ち上げた。

 まだ、一人前の剣士じゃないってことですよね……分かってましたよーだ。

 少しむきになった。

 ふと風が吹いた。

 その風は私の体を包んだ。すると、脳内に自身の魔術の使い方が流れてきた。


「《融合》魔術……か」


 ——私は黒い大剣を風魔法で浮かせながら、

「すいません、お時間をかけしてしまって……」

 メイとカミールの元へと戻ってきた。

「いや全然大丈夫ですよ……」

 メイは優しく微笑んだ。

「………」

「どうしましたか?」

「……俺は強くなりたいです……。みんなを守れるように………。もしお願いできるのなら、最長老様に誰かいい先生……師匠的な人を紹介できないか聞いてもらえないですか?」

「分かりました」

 メイは承諾し、私たち三人はユグドラシルへと《テレポート》を使って帰還した。


【キャラクタープロフィール】


 フード・ディート 悪魔族侯爵 年齢 不明(しかし、少なくとも三百年は生きている)

 身体的特徴 角が生えた紳士服を着た赤目の悪魔。

 性格    紳士的だが冷酷、無情。しかし、戦闘を楽しむ性格もあるため、舐めてかかるときもある。

 補足    アディアスとレイナに追い詰められたが《癒し》魔法のレベルが高く回復してから来た。


 オーフィン エルフ族(ハイエルフ)   年齢839歳 誕生日4月2日

 

 身体的特徴 白くて長い髪を持った美人なエルフ。

 性格    義理堅い、気遣いができる。しっかり優しさも持ち合わせている。

 補足    戦災孤児となったエオの両親を育てた。


 メイ    獣人族(羊獣人族) 年齢15歳 誕生日 6月6日


 身体的特徴 人間の見た目だが羊のように巻いた角を二つ持ち、ピンク色のふわふわした髪と赤い瞳。

 性格    おっとりしているが怒らすと怖い?(レイナと性格が似ている)


 カミール  獣人族(オオカミ獣人族) 年齢16歳 誕生日7月7日


 身体的特徴 頭にオオカミのような三角の耳が生え、銀色のくせ毛のショート髪を持った、青色の瞳のオオカミ獣人。メイより数センチ身長が高い。

 性格    短気、喧嘩っ早い。しかし、自分の信念はしっかり持っている。

 補足    カミールも小さいときに親が戦死し、メイの家族に育てられる。メイから姉さんと呼ばれるほど仲がいい。




【現在のこの世界の情報】

《アディアスの魔術 熱波》

 自身の体から熱波を放つ、熱波は衝撃波と同じように扱うこともできる。また、それを剣にまとわせることもできる。

《エリナリアの魔術 氷花》

 第死(よん)章(四段階)まである氷の高威力魔術。第一章で山をも凍らせる範囲の冷気を放ち雑魚を凍らせる。第二章で天候を変え、寒さで体を麻痺させる。

《カラナの魔術 空靴》

空中を自由に走しることができるエネルギーでできた靴を装着する。

《悪魔の階級》

 騎士、総裁、大総裁、伯爵、大伯爵、公爵、大公爵、侯爵、大侯爵、君主[2]、大君主、王、大王、皇帝の十四階級ある。だが、かつていた魔王も大王の階級。

《悪魔の特性》

 中位悪魔だと夢に入ることができ、上位悪魔だと夢に干渉することができる。

《ハイエルフの特徴》

 魔力総量が多いのと千年生きること以外そんなほかのエルフと変わらない。

《獣人の特徴》

 人間の姿をしているが獣の特徴を残している種族。

 ――むかしむかし、獣族は一方的に人間族に蹂躙させられ、食われたりしていた。その一方的に蹂躙させられるのが屈辱だった獣族は。すがるように魔力がこもった湖へと飛び入った。すると、獣族は人間並みの頭脳を手に入れ、その影響で体が人間に近い形になった。だが、耳やしっぽなどのそのもとの獣族の特徴は引き継いでいた。また、獣族は獣人族へと変わったが、恋愛対象はもとの獣族も対象に入っているため、そこでできた子供は獣族のほうの血が強い。

 ……まあ、昔話ですから。

《ユグドラシル》

 エルフやドワーフ、獣人たちが暮らす森の名前、この森の中心にとてつもなく大きい木がある。

《エオンの魔術 融合》

・融合

 物と物(無機物同士)をくっつけることができる。集中すれば融合して新たなものも作れる。薬の調合に向いている。

 ……まだ詳しいことは分かっていない……。


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