2nd BREAK 御矛螺様(2)
村の食堂で朝食を食べてから、立鳥は森に向かった。
だんだんとあの祠のあった木の立ち並びが見えてくる。
そして、とうとう見つけた。
「祠だ……!」
懐からねじ回しを取り出すと赤いレザーグローブがギチギチと鳴るくらい強く握り締めた。
股間は強く反応している。
この黒ずんだ祠を破壊したらどんな音が鳴るのだろう。
この祠はきっと卑猥な音を出して鳴いてくれる。
そう考えれば、ねじ回しは怒張していた。
「螺子廻流“
螺子廻流“怒突起”は最も基本的な螺子廻流の技である。時計回りの回転と、秒速1メートルを凌駕する圧倒的な腕のバネによる最速の突き。
バキ……イイ……ドゴアアン……!
祠は壊れた!
「まさか、ひと突きで壊れるとは……イキやすいんだなァ……でも……壊れ方がイイっ……このひび割れはいわばアヌスだ……これは祠の陰茎か……イイ
立つ鳥は跡を濁そうとしていた。
しかし、そこに複数の足音が近づいて来る。どうやら、破壊音を聞き付けて、村人がやって来てしまったらしい。
立鳥は膨張した股間をそのままに、村人を振り返る。
村人達の先頭に立っているハゲ頭の老人は粉々になった。
「きさまあ……きさまあ……きさまあああ! まさかその祠を壊したんかっ!?」
「ああ、ああ、祠はな。壊さなきゃ……建てるだけじゃダメなんだっ。何故かわかるか、長老。祠は『壊れてこそ』なんだっ。壊れなければ完成ではない。見ろっ……このひび割れは、アヌス。この大きな木片は陰茎。俺は、俺は……この祠とセックスをしたんだっ。……わかるだろ、俺の
「あ、あ……あ、あああ……!」
長老は涙を流した。
祠は美しかった。木々を掻き分けて、土を踏み締めて、そこに女子供の死体を置けば、祠は村に富を齎してくれた。
若い頃、何度この祠でへのこをシゴいたかわからないっ。
その祠が、その祠が、その祠が……!
こんな、こんな男に壊されて、気持ち良さそうに崩れているっ!!
「ワシの方がその
「運命は俺を選んだぞっ! 長老ォっ!」
「そうか……ワシから……この村からその
「「はい、長老……」」
立鳥は空気の濁りを感じた。
「村の習慣を味わえ──『
長老のひと声。
その後に──しゃん、という鈴の音。
瞬きの間に、夜になっていた。村人達は全身を和装に包み、顔面をのっぺりとした仮面に隠した怪人に変身している。
「まさか……その姿……」
「いまさら怖じけづいたか……! だがもう遅い……この儀式に則り貴様を殺すっ!!」
「ダーク因習村……!」
ダーク因習村。
それは、通常の因習村では有り得ない怪異性を保有した不条理な習慣を良しとして、人間を無慈悲に殺す悪しき組織っ!!
「ダーク因習村がダーク因習村たる由縁はその殺人数にあるっ! しかし、だが、貴様らの殺人数はふた桁のハズ……!? まさか! 『殺人数』のカウントを『村人』にのみ限ったなっ!?」
「そう!」
村人全員悪人村は立鳥のように、「立ち寄った旅人」を生贄にしていたのだっ!
「人の命を粗末にしやがってェ……ゆるせん!! 俺が相手になってやる!」
「すこしは腕が立つようだが、怪人と化したワシ等にただの人間である貴様が勝る道理など──」
立鳥は細身の村人の背負い投げに8メートルほど飛ばされる。木の幹に背中を打ち付け、呼吸に困難を来たす……!
「──ないのだよ」
「ぐ、ううっ……!」
「我々の
「たしかに……お前ら強いよ……! 俺のチンポが萎えるくらいさっ。でも……」
立鳥は血を吐きながら、祠の破片を握り締めて立ち上がった。
「おぼえておけ……」
村人達はどよめきを隠せない。ただの人間が怪人のパワーを前に生命力を取り戻している!! まさか、この男……!
「俺がお前らに勝る道理が無い様に……」
この男は……!
「お前らが俺を殺せる道理も無いんだよ……!」
「ダーク因習村の生まれか……!」
「正解っ!」
螺子廻流は人肉を喰らうことで超天国に行けると信じていたダーク因習村──「
「力を貸してくれ……祠……!」
「承知した……! 燃えろ、立鳥跡濁っ!!」
祠の破片が輝きを放つ!!
そして、形を変えた! 目には目を……歯には歯を……! そう! ダーク因習村にはダーク因習村を! そう!! 怪人には怪人を──っ!!
「ドライバーに祠をセット! クラッシュして変身だ!」
「これは……!」
腕輪だった。その腕輪にはねじ回しのような装飾がついている。そしてスロット……。祠を模した小さなアイテムもある。
「ああっ!? それはっ!」
「俺とあの
「キアイイイイイイイイイイイエエエエエエエエエエエエエ!! あいつ殺そ!? あいつ『敵』そ!!?!!?!?!!?!?」
スロットに祠をセット……!
ねじ回しをつくと、祠にひびが入る。
全身に力が溢れ出す……!
瞬く間に、立鳥の頭は鉄仮面に包まれていた。
赤い複眼が輝く。
祠デストロイヤー 我社保 @zero_sugar
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