祠デストロイヤー
我社保
1st BREAK 御矛螺様(1)
「……さませ、目をさませ……
「う、ううっ……!?」
青年・立鳥が目をさますと、そこは仄かに月の光が落ちる暗澹たる森林の中であった。そこが「
村人全員悪人村は東北地方にある長閑で平和な因習村である。
女子供も村の歴史上両手で数えられる程しか殺しておらず、男もさほど殺していない。儀式での死亡率も5割と良心的。
実にのどかな村である。
「どうして俺はこんなところにいるんだ……!?」
頭をおさえながら、立鳥は言った。
それに、自分の目をさました声の主がどこにも見えないのがおかしかった。もしかしたら、悪い神の仕業かもしれない。
いや、むしろ神を騙る怪異か……!?
「私だ……こっちだ……」
「これは……」
声のする方を向くと、そこには祠があった。木製らしい。
木のささくれが指に刺さってイラッとした。
「壊しやすそうな祠だ……」
立鳥は祠を破壊する事を趣味にしていた。
三連休を利用し、祠を破壊する旅に出ていたのだ。
この村人全員悪人村は「次の目的地」への通過点でしかなかったのだが、これは思わぬ発見と言えよう。
立鳥の祠破壊の流派は「
回転しながら突き出される一撃は祠に強制的に弱点を生み出す、必殺の攻撃。もとを辿ると槍の雑兵が戦乱の世を生き残るために編み出した技だと言うが!?
「もしかして、お前、俺に破壊されたいのか?」
「私は……死に時を見誤ったのだ……こうして……祭られては……死を待つばかり。確実に生贄を遣して来る村人の悪意に気圧されて……私は」
「安心しな……祠さんよ。俺が必ず破壊してやらァ」
そこで、立鳥の意識は闇に落ちる。暗がりの中、「ありがとう」という声がやけに響いていたのは、なに故か……?
(あれは……祠を破壊したいあまり……俺の脳が見せたただの夢だったのだろうか……)
立鳥はふとそう思うが、その考えはすぐに消えた。
指には木のささくれが生えていた。
足はふとんから出てみれば、足には土がついていて、すっかり乾いている。
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