第4話 冒険者パーティ『竜の物語』

「よし、パーティ名『竜の物語』にしよう!」


ただのモヒカンだと味気ないのでラストをつけるとなんかかっこいい感じになったと満足げなモーヴ。


「えっと…まぁモーヴがそれでいいってならいいけど…」


「へ、決まりですか?じゃあ…E級冒険者パーティー『竜の物語』を登録します…登録しますよ?」


受付嬢とアゲポヨが困惑している。

そもそもモーヴもアゲポヨもモヒカンではない。

お前一体何なんだよって名前ではある。


「竜の物語って…どういう事?」


「そりゃあ、ハッ◯ンで冒険だよ!」


「は、ハッ◯ン?」


「しかし、モヒカンが居ないのは…テンションが上がらないな?俺が自身がモヒカンに刈り上げたいところだがそれは御本人に悪いしな」


「そういう…感覚あったのね?」


そんなこんなで名刺みたいなやつこと冒険証から『無双の剛剣』の名が消え、「竜の物語」に変化した。

しかも


「ありゃ…なぁ受付嬢さんよ、冒険証のここ、さっきまで‘E’だったのに‘C’になってんよ?故障じゃない―――」


「いいえモーヴ…いえ、モーヴ様からオークキング討伐の証明が冒険証から検出されました。よってモーヴ、ムノー、アゲポヨ、セーソの4名は揃ってC級に昇格です!おめでとうございます!」


「やったー」

「ほーん」


「C級冒険者になると貴族の方からの直接的な以来なども増えて報酬がDの時と段違いですよ〜」


「面倒くさそう。Eに戻らねぇ?」


「無理ですよ!そんな事したらこのギルドの実績が減っちゃいます!」


「いいじゃないモーヴ!この調子でどんどん有名なりましょ!あそこで指くわえて見てる図体だけの男がもっともっと悔しがるわよ!」


「ぐぬぬぬ」


指ではなく折れた大剣を加えて訝しそうに睨みつけるガタイのいい男が部屋の隅の物陰に居た。


「……うん、まぁ、励めよ青年(肩ポン)」


「お前のほうが年下だぁああああ!!」


涙目になりながら何処かへ去っていった。

ギルドにたむろしてる他の冒険者からブーイングを受けていた。


「さて、このデブゲッチョ領でやることはやったな!目指すは北の国境!」


「えっと…本当に行くの?獣王国…」


「そのつもりだぜ!元から世界を一周冒険してぇと思ってたんだよ!…前にも言ったが、嫌なら無理についてこなくても―――」


「いくわよ!?」


「よっしゃ!出発だ!次の目的地は国境の要であり北の辺境の首都ノース…だったっけ?」


「もぅ締まらないじゃん。次の目的地はここからひたすら北上すれば着くわ」


「さっすが元ご令嬢、頼もしいぜ!」


「そ、そう?(モジモジ)」


意気揚々とギルドを出る二人を待ち構える人物が居た。

太っちょの高そうな貴族の服を来て騎士を4人護衛を連れている。

モーヴとアゲポヨを見て一礼。


「はじめまして、領主代行のラード・デブゲッチョと申します」


「「ど、どうも?」」


「そちらの男性の方、今噂の冒険者モーヴ殿と見受けます。」


「今噂のモーヴ・ビィエスエス殿とお見受けしますが?」


「うっす」


「(うっす?)では早速依頼内容の説明を食事でもしながらいかがですか?」


「もし、断ったら?」


モーヴの一言に護衛の4人が一斉に腰の剣に手をかける。

その瞬間モーヴの姿が消え、現れたところで騎士達の剣の柄が折られていた。


「「〜〜!?」」


思わぬ事態に困惑するデブゲッチョ一行。

その様子を覗いつつ、モーヴの口が開く。


「この程度ならポーターの俺ならどうにでもなる「「ぽ、ポーター!?」」、と言う事を理解してもらえたか?」


「は、はい〜!」


先程の余裕はどこへやら。

青ざめたラードは引きつった顔で答えた。


「それを踏まえて…依頼を聞こう!」


「で、では美味しい食事でも…」


「いや、今ここで聞く。無理なら俺達は去る」


「で、では…お前達!」


パンパンとラードが手を叩くと騎士達が少女の獣人を連れてきた。

兎獣人の女の子。

首には奴隷の首輪をし、怯えた目つきでこちらを見てくる。


「ちょっと!獣人奴隷は犯罪よ!新しく即位されたアルベルト陛下のに見つかれば処刑されるわよ!」


「誤解なさらないでいただきたい!彼女を救出し、これから北の国境を超え、彼らを祖国へ返そうとしているのです。その護衛をしていただきたいというのが今回の依頼です。護衛クエスト、ランクで言えばDになりますかね?」


「ふーん…」


モーヴは兎獣人の子供の目をじっと見てから、


「よし、受けよう」


「モーヴ!?」


「ただし、金は弾んでもらうぞ」


「勿論です!彼らを送り届けた暁には金貨100枚をお支払いしましょう!彼らを送り届けたら…ね」


「ちょ、ちょっとモーヴ!」


グイッと手を引いてひそひそ話で会話するアゲポヨ。


「ひそひそ(コレ絶対裏があるって!辞めたほうがよくない?)」


「ひそひそ(9割裏があるだろうな。あのデブゲッチョ家はそもそもいい噂を聞かない。だが、俺が護衛を受けなければこの子がなるか解らねぇ。まぁ北の国境には行くわけだしいいんじゃね?)」


「子供のため?…良い……グッとくる!」


「良い?よし、じゃあ引き受けるからな!」


顔がふやけるアゲポヨを尻目にさっさか手続きを済ませるモーヴ。

手続きを済ませるとラード男爵はにちゃあと笑い、


「冒険証にクエストの魔導印を刻みました。ではその餓鬼…ではなく幼気な少女を頼みますよ」


「うっす(こいつ、隠す気ねぇのか)


ボロボロの奴隷服では可哀想ということでまず町で兎少女の服を買ってあげることにした『竜の物語』の二人。

彼等の姿を見送ってラード・デブゲッチョはほくそ笑む。


「一時はどうなるかと思ったが…ククク、馬鹿な奴らだ。高額な報酬に目がくらんで…そんなうまい話あるわけないのに」


「しかし万が一が…」


「そんな事あるわけ無いだろ?『悪魔の尻尾』による手配が万全なんだぞ!後は待ってるだけで俺達は甘い汁を吸えるって訳だ」


「ぐひひ、そうっすね」



――――――――――――



「えっと…ありがとうございます」


兎少女の女の子が第一声を口にする。

青色のワンピース、ピンクのロングスカートにを大変気に入った様なピンクの長髪の目隠し兎少女はかるくぴょんぴょん跳ねる。


「おっと、自己紹介がまだだったな。俺はモーヴ。しがないポーターだ」


「ポーターって言うと、荷物持ち以外何もできないっていうまさにお荷物係の?でもさっき騎士達のロングソードの柄を折ってませんでした?」


「まぁそういう事のできるポーターって事よ。アーシはアゲポヨ。このパーティー『竜の物語』の魔道士よ。よろしくね…えっと、」


「ボタンです。よろしくお願いしますモーヴ様、アゲポヨ様」


早速北の要所ノースまでの食料などをアゲポヨのオークキングの報酬で買っていく。


「ねぇモーヴ?そんなにソイ(大豆)を買い込んで食べれる?私その豆好きじゃないし…」


「は?味噌食べてるだろ?」


「え?ソイって味噌になるの?」


「おう、【腐食コロージョン】って魔法で発酵sさせるといい塩梅になるんだよ」


「へー。そんな魔法王都の学校でも習わなかったー」


「そりゃそうだろ。ミシュラムっていうエルフのばあちゃんのオリジナル魔法だからな」


「へー、ミシュラム。ミシュラム!?ま、まさか…300年前魔神とも戦った伝説の…魔道士の最高位『3老賢者』の一人……だったりします?」


「うーん、そんな大袈裟なばあちゃんではないと思うけど。ただの食うことが好きなエルフのおばあだよ」


「そ、そうかしら…」


そんな買い物の途中、何かを覚悟した兎獣人ボタンちゃんがモーヴとアゲポヨに向かって重い口を開く。


「あの!お二人はいい人だと思うから―――うぐぐ……」


何かを話そうとした瞬間、奴隷の首輪が締まりだす。


「え!?どうしよどうしよ!?」


突然苦しみだすボタンにうろたえるアゲポヨ。


「お、これはやべーな。アゲ姉貴、ちょっとボタンを抑えて立たせてくれ」


「ええ!?こんな時に?」


「こんな時だから!俺を信じてくれ!」


「わかった。ボタンちゃん、ちょっとごめんね」


苦しんでるボタンを後ろから両腕を抑えるアゲポヨ。

モーヴの右腕に魔力が集中する。


「ぬんっ!」


手刀袈裟懸け。


「!何してるのモーヴ!?奴隷の首輪はA級冒険者の全力の一撃でも壊れ―――」


「は、外れました…」


「…あ……すご、」


本当に凄いのは超強度の物を切って、ボタンの首に傷一つつかない技の精度なのだが…。


「それより、そんな苦しんでまで俺達に何を伝えようってんだ?首輪は切ったから好きに喋れんぜ?」


「は、はいそうでした。実はあのラード・デブゲッチョという男は…」

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