第40話 辺境大連合VS王国軍④

「くくく、圧巻ではないか!」


王国騎士団全勢力20000。

第一王子ロバートの眼前に並んでいる。


「では騎士達よ、我々の王都を守りなさ―――」


「その必要はねぇだろ母上?」


騎士に命令を下す第一王妃イザベラの言葉をさえぎるロバート。


「今回の大罪人であるアルベルトは西軍に居る情報は掴んでいる。聖戦なり!騎士達よ次期国王ロバートに続き全軍で西軍を―――アルベルトをほふろうではないか!がーハッハッハッハッ!」


「「「オー」」」


「ちょ、お待ちなさいロバート?全軍で出向いてしまって王都の守りはどうなるのです?辺境軍は四方から来ているのですよ!?」


「何の役に立たない平民どもにでもやらせればいいでしょう!選ばれしこの俺と騎士達がいれば何とでも成りましょう」


「おぉ…、何と立派になられて……では私はイライザさんと一緒に実家に一度身を潜めましょう。イライザさん、よろしいですね?」


「は、はひ!もちろんです伯母上様〜」


イライザは唐突な無茶振りに対応。

その姿を見て退屈だと言わんばかりの目でロバートは許婚を見下ろす。


「そ、そんな!」「我々はどうなるのです!」「ロバート様我らも一緒に!」


「ええい諸侯共!貴様らは貴様らだけでなんとかせよ!何の為の貴族位か!」


ロバートは一蹴すると騎士達を顎で使って貴族達を抑え込む。


「国王様お慈悲を!」「せめて我らもご一緒に?」「女神の裁きをお受けになりますよ?」


「ええい貴様ら教会にどれだけ寄付していたと思っている!こんな時ぐらい自分達でなんとかしろ!!徴兵しないだけありがたいと思え!」


「「「(その徴兵するための神殿騎士はまるっと居ないんだよ!!)」」」←(神殿騎士は全員聖女に同行し西軍に寝返り中)


教会も一蹴!

ようやくかとロバートら王国軍は西を向き剣を掲げ


「進めーーー!!」


「「「オー!!」」」


物資も持たずに辺境西軍に進軍。

ホウオウ歴297、鳥の月三周目の事であったと後に記されている。






しばらくすると辺境西軍が見えてきた。

ロバートが掴んでいる事前の情報では約辺境西は軍3000。

ざっと自軍の1/6である。

これは圧勝だと破顔するロバートは眼前に西軍をとらえると、戦車の様な魔道具が扇状に配置されていることも目もくれず全軍に


「全軍突撃!!!!」


と命令を下す。

その結果―――


ギュィィィイイン!!


戦車型魔道具からのエネルギー砲同時放射は王国軍約4000を蒸発、負傷者約約1000を生み出すことになった。

全軍突撃命令からほんの2分の出来事である。

すべての王国軍は立ち止まり、高台の白馬から見下ろすロバートは呆然とした。

エネルギー砲の軌道上がくっきり地形が変わっている。

コレはまるで小型【ハルマゲドン】である。


「な、何だアレは!?誰か俺に教えろ!」


とロバートは吠えるがもちろん誰も知らない。

とりあえず王国魔導師団前に出てが集団魔法を謎の陸上兵器に放つ!


「「「【サンシャインフレア】」」」


集団魔法【サンシャインフレア】。

大規模なガス爆発を起こす魔法で、一度発動すると魔力尽きるまで爆発し続ける凶悪な火魔法。

その規模は半径500メートル以上であり、爆発が終えた後は磁場嵐が起き、地面はマグマになっている程の高温を物語る。


「おお、やるじゃねぇか魔導師団。あの耄碌もうろくジジイの介護倶楽部だと思ってたぜ。褒めてしんぜよう!」


「「……」」


余計なことを言う王子に疑心の目を向けながらも付き従うしか無い社畜魔導師団。

それは王国騎士団も一緒で、戦いに勝利してもこの王子に付き従わなければいけないというのは焦燥感を越え悟りの域に到達し、目が死んだ魚のようになっている。


「―――ばっ、馬鹿な……」


ロバートは高熱と磁場嵐が吹きすさぶ戦場で無傷でゆっくりと前進し姿を表したその陸上兵器【ガランス】に驚愕と畏怖を感じた。


「お、おい!誰でもいい!誰かあの兵器をどうにかしろ―――」


「お前がどうにかしてみろ!」


突如【ガランス】の砲塔に着地した綺羅きらびやかな服装の少年。

金髪で美しく精悍な顔つきは気高さを感じる。

その右腕には、自分の身長よリ長いの棍を持っている。


「アルベルト!?アルベルトカー!?全員奴の首をはねろ!そうすれば私の勝利―――」


「こちらのこの兵器【ガランス】のキャノンはあと各自4発残っている。更に精鋭3000人は君等のことごとくを殲滅するだろう。そこで私から提案がある。王太子同士の一騎打ちでどうだ?」


思わね提案に敵味方その場の全員が困惑。


「馬鹿言うんじゃねぇ!こちとらまだ16000(負傷者無視)近く兵力を残してるんだ。不利だからって変な提案出しやがって、却下だ却下!」


「私は貴様に言ってるのではない。その戦場に身を捧げる勇敢な君等王国騎士団、並びに魔導師団の諸君に問う!国内の不毛な戦いより権力者だけで勝手に王権を決めたほうがぶっちゃけ良くない!?」


「「「良い!めっちゃ良い!!」」」


その声は明らかに王国軍の方に声が上がった。


「くっそ、貴様ら〜!俺が国王になった暁には全員クビだクビぃ〜!!!!」


「はい、という訳でそちらの騎士団諸君。そこの馬鹿をマグマが固まったこの広間に引きずり下ろしてくれる?」


「「かしこまり!」」


「ぐえっ―――話せ!無礼であるぞ!ごわっ!?」


味方の騎士にアルベルトの眼前に叩き落とされたロバート。

いつの間にか人の円が出来ていて逃げられない。

敵味方入り混じる観客が同時に監視者に変わった瞬間だった。


6年前、虐めていたひ弱な少年の面影はなく。

精悍さと美しさを兼ね備えた青年に成長していた。

自分が色にかまけていた間に…。


「くそっくそっ!やってやる!覚悟しやがれこの雑魚め!選ばれしものが―――」


「【ホウオウ】展開、さっさと構えろよ、このヤバ味噌野郎」


「ほっ、【ホウオウ】!その名で呼ぶなぁーーー!!」


人族の王族のみに継承されるユニークスキル【ホウオウ】。

お互いに身体を炎とかし激突―――の刹那。

ロバートが大袈裟に無駄に豪華な剣を振り下ろす力を利用し、棍をシーソーのように反作用を扱いながら瞬時にロバートの首元へ。

アルベルトの棍は【魔装】をしているので、【ホウオウ】状態のロバートでも首ごと引っ掛け地面に叩きつけ拘束する。


「ゴエッ!?」


「【ウォーターボール】」


「ごぼっ!?ご、ごぼ!!ごぼーぼぼーぼぼ!」


地面に突っ伏したロバートに対してすぐさま下級水魔法【ウォーターボール】でロバートの顔を包む。

【ホウオウ】とは不死鳥のように魔力が続く限り首が刎ねられてても顔ごと潰れても、炎となって元に戻る再生のスキル。

しかし、それを聞いたワキヤックに「相手を倒すのに(血の)スプラッシュが必要かって行ったらそんなことはねぇ。空気無くなったら死ぬだろ、そもそも炎だし?」の一言で編み出した対【ホウオウ】戦術『どこでも水没プレイ』である。


水柱を湧きあげる中級水魔法【スプラッシュタワー】や、大規模な津波を起こす上級水魔法【タイダルウェーブ】と違って【ウォーターボール】という下級魔法は持続魔力はかなり少なくてすむ。

結果、人間が溺れるに必要な時間水球を維持することなどアルベルトには容易い。

そして水を燃焼する程にロバートの【ホウオウ】の炎は至らなかった。

2分程すればピクリとも動かなくなり、「パチン」とアルベルトが指を鳴らすと水球は弾け落ち、いとも容易く勝負はついた。


「「「オオオオオオ!!」」」


敵味方総出でアルベルトを称える。

アルベルトは白目を向いて気を失っているが生きてはいるこの馬鹿王子をどうしてやろうか考えていると、背後から切羽詰まった表情でアルベルトに近づいてきた!


「アルベルト陛下、すぐに全軍退却のご命令を!!」


「何を言ってるんですかコウメちゃん?勝負は今ついた……あれは?アレは一体……?」


悪寒に気が付いたアルベルトは王都にを見上げる。漆黒のガタイの良い丸メガネの坊っちゃんヘヤーの空手の道着を着た男が王都に立っている。

王都の外壁は約10m、謎の男の上半身はくっきり見えるので全長20mはあるだろう。

巨人、だがその並々ならぬ魔力は巨人では片付けられないほど。

まるで……神そのもの。


そして―――


[オォォォォオオオオスゥゥゥウウウ!!!!]


王都から数キロも離れた西軍まで、馬鹿げた魔力が込められた咆哮が空間を震撼させながら到達する。


「うわぁああ!?アレは……魔神がんすねッ!?コレ魔神?」


「ガンス?やけにお前に似てないか?」


「父上、気のせいがんすよ(すっとぼけ)。そんな事よりアルベルト様を撤退させないとがんす」


「そうであった!アルベルト陛下!すぐさま【ガランス】へお乗りください!」


「わかった―――!!あの巨人の近くの上空にいる人影…いや、アレはまさか!?」


上空より人々を見下す11の影。

争いは終わり、生存のための戦いが始まった。

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