第37話 辺境大連合VS王国軍

久しぶりにゆっくりとカマセー領でくつろぐ(岩石背負いマラソン50km、滝行、瞑想他)ワキヤック。

イレギュラちゃんやカマセリーヌが王都のお土産に大興奮だった。

王都の化粧品やお人形はこの辺の物よりも遥かにいい。

イレギュラとニュウがお人形で遊んでいる(面倒見がいい)中、ワキヤックはコロシアムで戦っていた時に思った巨大なドームか何かでやる娯楽でも作ろうかとぼんやり過ごして一ヶ月。

アーノルド辺境伯から戦の招集がかかった。


「いよいよか…よし、出陣しますか父上!」


「うう、いやじゃ〜」


「頑張るザマス!無理しないことザマスよワキヤック?」


「ぱーぱ、にいちゃ、いってらー!」


「ご武運をお祈り致します」


カマセリーヌ、イレギュラ、ニュウの3人から激励をいただきつつ出立!


「全勢力…と行きたいところだが、公爵令嬢や家族の守りもほしい。精鋭だけで行くぞ!カマセー兵の半数と『モヒカンズ』最強!バルバロイ!」


「おうよ!」


「『モヒカンズ』魔法のスペシャリスト、カルダモン!」


「うっうーん。任せてくださいまし」


いかにも日本人が湾曲したインド人のイメージような黒いはだとターバンで魔法のランプが出てきそうな趣き。

どうでもいいけど男色である。


「強靭強固の『モヒカンズ』の盾、リザードマンのジャッジ!」


「……ウス」


無口なリザードマンのジャッジ。

身長170ぐらいの世界的に珍しい亜人のリザードマン。

強固な鱗で最高のタンクとして活躍が期待される。


「そして、今回最重要の『モヒカンズ』軍師、兎獣人コウメ、」


「は、はい……」


小柄で華奢な兎獣人の目隠し少女のコウメ。

バルバロイが連れてきた気弱な少女だが、頭脳明晰で軍師として活躍するだろう。

『モヒカンズ』の中では珍しくモヒカンではなく、セミロングの可愛らしいピングの髪型。

オドオドして愛らしい彼女だが、その強靭な脚力は素のワキヤックを超える。


「他の『モヒカンズ』はカマセー領の護衛をしてくれ」


「「ハッ!」」


「さて、俺からは以上だ!ハゲヤック父上!兵に激励を!」


「わしに〜!?…とにかく生き残れ!最悪命令なんぞ無視しても構わん!生きてこそじゃ!!」


「「「おおおおおおお!!」」」


これから戦場に向かう兵にどうかと思うが、差別ある亜人や魔族、エルフも混合する兵たちに生きろ言ってのけるハゲヤックの言葉は居心地が良い。

そういうところはワキヤックもしっかり尊敬している。


さてカマセー軍は〈ビッグ自動馬車〉ことバス詰め込めるだけの物資をぶち込み、回復補助担当の女性エルフや最新兵器【ガランス】の狙撃手とハゲヤック以外は全員走って現地へ向かう。

隣で走っていたバルバロイにワキヤックは疑問を問う。


「そう言えばアルの姿が見当たらないけど?」


「坊っちゃんよぉ、ハゲヤックのおっさんとも話してたろぉ?アルは今回の総大将だからもうすでにウエスト領で王子してるぜ〜」


「へぇ、アルベルト様ねぇ…」


「ワキヤックくんはアルベルト様に失礼が過ぎますよ!」


バスの中から大声で怒鳴ったおっぱいはマーリン・アークホワイト大魔導士。

姉のマリアがアルの母親で、マジの兄弟みたいなもんだった人。

今回の戦場に必ず参加すると言って聞かなかった。

まぁ大魔導士だし大丈夫でしょ。


他の領地にはよらず一直線にウエスト領を目指すこと2日、無事ウエスト領につくことが出来た。

ウエスト領には、現在ボウギャック領主の構成中クソガキのワンパクとワリカン。

緑の特殊な鎧を纏った正装らしき緑石の騎士ヘンドリック。

西の辺境の首領ことアーノルドとその横には騎士姿のウラガネー。

見渡す限りに兵士と騎士で埋め尽くされた。

その先頭の高台には座するアルベルトとその横にはイバリンがいて、口上が始まった。


「皆の者!よくぞ集まってくれた。私はそこに5台ある珍妙な兵器【ガランス】を造ったイバリン・チキン男爵である!これより死んだとされていた第二王子、アルベルト・ホウオウ王子からお言葉がある!心して聞くように!」


その場からは困惑の色は一切無く歓喜の声が湧き上がる。

ワキヤックの関係もあってかもうすっかり生存が確認されていたアルベルトを待ち望んでいたかのような肯定の声。

そしてゆっくりと立ち上がるアルベルトは凛とした通る声で話し出す。


「諸君、志を共にする同士達よ!よくぞ集まってくれた、まずは感謝申し上げる!」


「「「オオオオオ!!」」」


「さて今回…皆が知るところだろうが中央へこれから宣戦布告をし、あの傲慢な中央貴族とやりたい放題の教会を叩き潰す!!」


「「「オオオオ!!ヒューヒュー!!」」」


「そこで、本日はある人物を先に紹介させていただきたい、上がってもらっていいですかー?」


あるがそう言うとガタイのいい大男が2人高台に上がる。

まず一人目の褐色の大男、ワキヤックも見たことのある男から話し出す。


「皆の衆、魔族のわしがここにいるのは恐ろしいかもしれんがここにいるアルベルト殿には恩があるのだ。その恩を返すために今回の戦場に参加するバルバロッサ・ゲンブと部下総勢1000だ!」


「え、魔王!」「マジかよ…」「いや、味方になってくれるってすげぇ…」


「そしてもう一人―――」


「おう!俺か?俺はヘレネス・ビャッコ!」


「あ!?兄者ッ!!?」


ヘレネス・ビャッコ(50)。

獣王国の王にして、全ての亜人を束ねる王。

肉弾戦世界最強と呼ばれる白銀の毛並みの狼男。

バルバロイのにーやんである。


「すまん!カマセー領とやらを観光中にスカウトされたものだからわし一人だ!だが年老いても王族だからそれなりに戦えると約束しよう!よろしく頼むぞ!ウェーイ!」


「え!?獣王!」「コレって隣接する外国と接点があるってことだろ?」「じゃあ外交100点じゃねぇかアルベルト様」


「誰かが言っているが、つまり内部抗争をしようがその後外部から攻めて来られる心配はない!だから…徹底的に捻り粒ずぞ!!」


「「「オー!!!!」」」


口上をは終わり「うう…アルベルト様、ご立派になって…」とか言ってる過保護なマーリンの後ろから、ボーイッシュなゴスロリファッションの、すっかり女の子になった魔族の少女がたどたどしくワキヤックに近づいてきた。


「よ、よぉ、久しぶりじゃねか…元気してたか?」


「まぁまぁすっかり女の子らしくなっちゃって…お元気でしたか、タイタニア…姫www」


「こんの!?似合わないって俺にもわかってらー!」


感情任せのビンタをタイタニアはワキヤックに当てる。

次の瞬間激流のような記憶と経験がタイタニアに流れ込む。

【ゲンブ】のスキルによるモノだが…


「うっ?この世界じゃない!?へっえっえっ!?ギャッ!?嫌だ!女にむち打ちされるなんて…ご、ごぇ…こんな鍛え方…痛い!痛い!」


その後謎儀式のような奇妙な動きを始めるタイタニア、表情が二転三転してどうみても薬をキメて末期のソレである。

ワキヤックは「おい、大丈夫か…」と声をかけようと近づくと…


「うっせぇ!」


正拳突きがタイタニアから飛んできたので咄嗟にマウンテン師の〈スワイ〉で回避する。


「へぇ〜、それって【ゲンブ】ってやつか〜」


「はぁ、はぁ、このド変態野郎…お前が俺をどいう目で見てたか解ったからな…覚えておけよ!」


プンプンして何処かに行ってしまった。


「おん?何だアイツ!」


「へっ坊っちゃんも罪づくりな男だねぇ?」


横に居たバルバロイが茶化す。


「え?アイツが?まだガキで俺の下半身の俺も反応しないぜ?」


「ガハハハハ!流石坊っちゃんだ!」


などとやり取りがあった中で遂に戦線布告が西の辺境から起こった!

それと同時に北、東、南も同様に中央に宣戦布告。

この日ホウオウ王国の未来を決める内戦が勃発する。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る