第30話 王国騎士団とワキヤック

『マタニティ』解体、ヤクキメの余罪の洗い出し、マウンテン師との指南修練などなど多忙な日々をイースト領にてワキヤックは1ヶ月すごして居た。

『モヒカンズ』は復興後カマセー領に帰っていった。

ランメルトもシャーロット嬢に耳を引っ張られてノース領へ帰った。

残ったのはアルとワキヤック。

お互いに〈スワイ〉と〈ショウ〉の基礎を習得し、これから帰ろうカマセー領に帰ろうという所。


「そう言えばさ、なんかあっち(西に指差す)から凄い波動砲っていうか無茶苦茶な魔力のエネルギーが飛んできたんだけど、なんか知ってるか?」


「それは…〈ハルマゲドン〉だと思いますけど…王都にある王族だけが起動できるアーティファクトっていうなんかすごいやつですよ」


「はえ〜王都からね…そういや王都に言ったことねぇや」


「行かなくていいならあんな所行かないほうがいいですよ」


「え?」


「なんでもありません」


そんなこんなこんなで帰り道の西門に差しかかった所で形相しいご立派な鎧を着た騎士団が待ち受けていた。

西門に行列が出来ていて、時間がかかる。

なんでもいいから早くして欲しいものである。

さで、30分ほどで自分達の順番が回ってきたところで、検問の騎士が大声をあげる。


「いたぞー!!」


すぐさま周りの騎士たちがワキヤックの周りに集まり囲む。


「私は王国騎士団団長バーンズ・レッドハンドである。王命である!ワキヤック・カマセーを国家反逆罪で捕縛する」


「お?おー…(『マタニティ』潰したからその関係かな?)わっかりました、俺どうなるんすか?」


「む、10歳の子どもと聞くが…冷静すぎないか?これから王都にて裁判にかけられる。罪状が決まり次第罪を償ってもらう」


「ほーん、中央の裁判か。中央の手が回っているなかでの裁判って事は冤罪で適当に罪状決めて処刑、あやよくば都合の悪い罪をなすりつけて消すのがお決まりだよな〜。まっ、王都に行けるしいいか。コレなら父上も納得するだろうし。アル、そんな訳でちょっと行ってくるわ」


「「(いや、そんな散歩で行くみたいな感じじゃ…)」」


「なんで専属執事の僕を置いて行こうとするんです?こんな面白そうなこと見逃せませんよ!当然ついていきますね!!」


「(おいおい、執事まで…おかしいんじゃ―――ブフォ!?)あ、アルベルト王子!?え?アルベルト王子!?なんで?え?」



「落ち着いてくださいバーンズ騎士団長。私はカマセー領ワキヤック様専属執事アルと申します(ペコッ)」


「お、そんなはずは―――私が直接王子に指南をしたのだ。その顔見違えるはずは―――」


「え、アルって王子様だったの?」


「そんな訳無いですよ。私はただのアルですよ。そもそもこんなところに王子なんている訳ないじゃありませんか?」


「それもそっか!」


「「「あはははははははは」」」



「はい、じゃあ連れてくぞ?」





王都へ向かう道中、手を鎖でぐるぐるまきにされたワキヤックが馬の代わり馬車を引っ張っている。

途中途中で早すぎて女騎士にムチを振るわれて「はひー♡」とか「もっとオナシャス♡」とか更に早くなるので馬が追いつかなくなる。

馬より早く走るなと女騎士が罵倒すると鼻の下伸ばして笑顔で頷くのではっきり言って怖い。

女騎士の中でも王国騎士に選抜されるエリートのヘラルダ・レッドハンドは困惑している。


「(馬より早い、このモヒカン怖いんだけど…でも父さんは馬と同様に扱えって言うからムチを振るってみたけど、喜ぶって何よ?)」


「(美人女騎士にムチなんて、これ前世なら数万クラスのコスプレプレイだぜ!異世界最高かよ!)」


いつも通りなのかニコニコ隣で馬と同じ速さで走っているのに息一つ上がらない美少年執事ことアルに対して複雑な顔で見つめるバーンズ。


とそこに野盗らしきに襲われている馬車を発見。

豪華な馬車からしてどこかの貴族であろう。

護衛の騎士たちが苦戦している。


「あっ、これって助けたほうがいいっすね。ちょっと皆さん頭下げてね。【ボルテックヒート】!」


ワキヤックのモヒカンから凄まじい稲妻が飛び出た。

騎士と戦える程の野盗らしき奴らである、強いことは強いのだろうが消し炭になって跡も残らなかった。

ワキヤックはプレイ再会とばかりにそのまま何事も無かったかのように馬車に戻り、女騎士へ期待の瞳を向ける。

アルは爆笑していたが、王国騎士達は全員青ざめていた。


「ひそひそひそ(父さん!私達が捕らえたモヒカンって本当に人間なんだよね?)」


「ひそひそひそ(国王陛下によれば今年十歳のカマセー領の一人息子だと言っていた…本人も本物だって言ってるし大丈夫だと思う?たぶん?)」


遂に人かどうか疑われ始めているが、とりあえず高級馬車の持ち主が無事なのか確認をする王国騎士団長。

そこに居たのは―――


「王国騎士団長であったか、大儀である」


「んだよ!もっと早く助けろやボケが!」


大変偉そうなババアとDQNっぽい青年であった。


「うっわ、出たよ」


「アルの知り合いか?」


「ええ、まぁ…」


「「アルベルト!!」」


先程の偉そうなババアとDQNが声を合わせて張り上げた。

ふたりとも引きつった顔をしている。

まるでおばけでも見たかの様な。


「え?僕はアルっていいますけど(すっとぼけ)?」


「ええい、何をしている騎士団長!そこの執事を殺せ!第一王妃の命令なるぞ!!」


「―――は、ハッ!」


突如の命令に困惑しながらもアルに剣を向けるバーンズ。


「おーい、やっぱ知り合いじゃん。とりあえずアルさぁ棟梁から例の棍は受け取ったか?」


「え、はい?これですか?」


アルが取り出したのは白銀の輝きを纏った1m程の棒。


「『魔境』で凄そうな鉱物が採れたから棟梁に頼んであったんよ。今更だけど誕生日おめでとさん」


「へ!これ私の誕生日プレゼントだったんですか!ありがとうございますワキヤック様〜大事に―――」


「ええい!早くせぬかバーンズ!!」


「ど、どりゃああ!!」


騎士団長バーンズが斬りかかるとアルは見向きもしないで誕生日プレゼントの棍にて払い腹部に鋭い突きを加える。

騎士団長の鎧は砕け散り、背後に吹き飛び豪華な馬車に激突する!


「「ぎゃあああああ!!」」


DQNとババアの親子は悲鳴を上げて騎士団長ともども背後に倒れる。

馬車も半壊し、走れそうにない。


「―――しますね。名前は何ていうんです?」


何事も無かったかのように話を続けるアル。


「〈白銀棍アルベルト〉とかでいいんじゃねぇか?」


「その名前嫌いなんですけどねぇ…いえ、大事にしますね!」


にこりと笑うアルに突如つかかってくるDQNがいた!


「アルベルトォ!てめぇふざけてんのか!?」


泥で汚れた顔でとにかく怒鳴るっているDQNにアルは「はぁ〜」とクソデカため息をする。


「誰だよ?」


「……あの怒鳴ってる猿はロバート第一王子であのヒステリックババアが第一王妃イザベラです……」


「はへぇ〜そう。この国の未来はやべぇな…ってか、アルって王太子かなんかなの?」


「……第二王子です」


「へぇ〜、偉っら!?今までのご無礼をお許しくださいアルベルト王子様、みたいな?」


「みたいなって言っちゃってるじゃないですか」


「うーん、もう3年だし急に変えるのもねぇ…ま、お前が執事服来てるうちは今まで通りでいいな?」


「押忍!へへへ!」


恥ずかしそうに笑う年相応の少年と、訝しむヒステリック親子。


「無視してんじゃねぇ!舐めやがって!王の力を思い知れ―――【ホウオウ】!!」


DQNことロバートは全身が炎に成り、アルとワキヤックを襲う。


「もしかして…?」


試しにワキヤックは横蹴りを下段(膝下)中段(腹部)、上段(顎)に蹴ると、蹴り足を炎になっているらしく通り抜けた。


しかしロバートは一切反応できない速さで蹴られていて、恐怖で実体に戻っていた。


「て…てめぇ?モヒカン野郎お前俺様を誰だと思っていやがる!そもそもお前は何者だ!」


「ワキヤックですけど?」


「ああ!聞き覚えがあるぞ!お父上様がおっしゃっていた罪人だな!教会に多大な被害を与えたとか!?」


「ブッwwwウケるw」


「笑ってんじゃねぇ!?どういう神経してやがる!?まぁいい……お前をある事無いこと、必ず処刑してやる!!」


「”舐めやがって!王の力を思い知れ―――【ホウオウ】!!”とか言っといて結局自分で殺らないんかい。マジヤバ味噌担々麺www」


ヤバ味噌担々麺の意味はわからないが、あまりの言い草にアルどころか周りの王国騎士すら吹き出す始末。


「ぐあああああクソクソクソクソクソクソクソ!絶対お父上様に言いつけて殺してやる!ワキヤックだったな覚えたぞ!!」


「処刑ね。られるもんならやってみな?クソクソ同じこと言い繰り返すって事は知能スラムのガキ並みかな?」


「げぼあああ!?ぐえっ?ぐぐぐ」


「あぁわたくしの可愛いロバート!!誰かそこの無礼なモヒカンを殺さぬか!!」


煽り散らすワキヤック。

怒りすぎて頭抱えて唸りだすロバート。

なんかまだ怒ってる元気なババア、イザベラ。

大爆笑のアルベルト。

お腹を抱えてぐったりしている騎士団長バーンズ。


大波乱の中。

いざ、王都ホウオウへ。

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