第28話 破滅のモヒカンVSマタニティ②

「すぐに『判定者』達を集めよ!!」


激おこぷんぷん丸無火着火ファイアーのヤクキメ枢機卿はいつもの豪華な服を来て教会の中枢に来ていた。

ちなみに『判定者』というのは『マタニティ』の中でもよりすぐりの実力者達、しかし既にあの『破滅のモヒカン』と呼ばれる化け物のところへ向かったという。


「ほう、いい心がけだ。しかし…悪寒がする、念の為使う…そして念には念を入れアーティファクト〈テレフォン〉で王都へ連絡…〈ハルマゲドン〉を使うやもしれん…」





―――教会前、イースト領中央広場―――


「な…こんなの、無理だろ?」


『判定者』のリーダー、ターメリック・スパイシーは既に戦意を喪失していた。

『判定者』全員で『破滅のモヒカン』に襲いかかったが、「チエラァ!!」という雄叫びと共に正拳突き一発で仲間の腹部が貫通。

左右からの挟み撃ちも裏拳から扇突きからの逆突きで肉片がパアン。

背後からの不意打ちは、モヒカンから放たれる雷撃で感電。

前方からの3人一体のの攻撃も、口から吐かれるドラゴンブレス(?)によって打壊。

人の形をしているが、モヒカンから雷は出るし、ブレスも出すしで『マタニティ』の精鋭、『判定者』をもって相手にならなかった。

……本当に人間なのだろうか?


「カルダモン!俺はを解き放つ、時間稼ぎを頼めるか?」


「OK、それしか無いもんね……」


同じ『判定者』にして妹のカルダモン・スパイシーと顔を見合わせ、アイコンタクトを取ってお互いに頷く。


褐色の肌を持つスパイシー兄弟は魔族の兄弟。

物心ついた時には『マタニティ』の構成員として育てられれていた。

メキメキと頭角を表し、王都にいる最強の騎士団をも相手取ることのできる猛者に成長した。

亜人を忌み嫌う、ましてや魔族を敵と教えを説く教会で最も強い存在が魔族の兄弟というのはとんだ皮肉だ。

そんな二人が生まれて初めて恐れを抱く。

あのモヒカンは魔獣で考えれば明らかにS級を越えている。

数刻で教会を半壊させ、構成員達を駆逐し、2千居た構成員の人数は半分まで減っていた。更にここでさらなる悪夢に苛まれる―――


「別のモヒカンが現れたぞーー!!」


エルフの様なモヒカンババアが天より隕石を落とし、獅子獣人は鋭い爪で目終えない速度で構成員達を次々に消していく!

というか、隕石を落とす魔法は伝説に聞く【メテオ】だろうが、そんなお伽噺の魔法を使う存在がなんで今ここにいるんだよ!と心で叫ぶカルダモン。

目見えて残りの構成員の数は3分ももたず100人を切っただろうか、敗北の2文字が濃厚に脳裏によぎったが―――


「ぎきゃああああ!!」


身の毛もよだつ雄叫びと共にモヒカンを鋭い爪で叩きつけた。

その化け物は全長3メートルでリザードマンの顔にエルフの耳、ドラゴンの腕と尻尾、ホークマンの翼、ライオンの足を持つ…


「『バイオキマイラ』を開放したぞ!もうこの領地は駄目だろうな…生きている『マタニティ』の構成員は即時撤退せよ!」


ターメリックは出来うる限りの大声で叫んだ。

枢機卿の切り札、『バイオキメイラ』。

『魔人の尻尾』の研究者が幾多の生物たちを犠牲にして作り上げた新世代の生体兵器。

一度放たれれば破壊の限りを尽くすだけの凶暴な怪物。


先程の攻撃で地面に埋もれたモヒカンがヌルっと起き上がる。

独得な構えを取りながらすり足で距離を縮める。

知性など無い『バイオキマイラ』は本能のままにモヒカンに攻撃を加える。

その攻撃を捌きながら、隙をみてカウンターの横蹴りで膝を粉砕し、逆足で前蹴りで腹を突き刺し、更に差し脚の指で肉を掴みながら土台にし、そこから顎に飛び膝蹴りの足技のコンボ。

しかしその状態から横っ腹に尻尾のヘビがモヒカンの胴体に噛みつく。

牙はモヒカンの肉体に食い込んだ。


「強い!兄ちゃん、これならあのモヒカンを―――」


「まて、あのモヒカン何かやるぞ」


モヒカンが『バイオキマイラ』に目を向ける。

先程の傷は既に修復している。

尻尾のヘビの眼球に思い切りビンタをすると眼球がバウンドし、嫌がる尻尾のヘビは雄叫びをあげる。

モヒカンは胴体から流れる血をモヒカンの電撃で肉を焼き止める。

手を振りかぶって手の握りを螳螂拳の握りにして風の魔力を纏い振り落とす。


「【鎌鼬】」


鋭い真空の斬撃が袈裟にかけて切り裂く。

自己治癒が’あるとはいえ、悶え狂う『バイオキマイラ』は周辺を破壊しながら

粉塵を巻き上げる。

3mという巨体を見失ったらしきモヒカンは、地面のから『バイオキマイラ』強靭な猛蛇の大口が襲いかかる。

しかし一度見ましたと言わんばかりに、ドラゴンのブレスをその大口の中に吹き込む。

そのまま腹部まで強力な火炎が入り込み顔のいたるところから火が漏れ出る。


『マタニティ』の凄腕構成員『判定者』のスパイシー兄弟は唖然として見つめる。

こんな化け物と戦っていたのかという感情と『バイオキメイラ』がんばえー感情が混ざり合いお互いを見つめて、なんだか笑ってしまった。


すると獣人モヒカンが助太刀に入ろうとすると、モヒカンに激怒されている。

邪魔をするなと言わんばかりに獣人のケツをスパンキングした。

苦悶の表情の後、ちんポジを探る時の男性特有の歩き方で去る獣人モヒカン。

そこでモヒカンは魔力を纏い始める。

先ほど体を焼いてただれた肉体がみるみる修復する。


「ねぇ兄ちゃん、あれって【魔装】じゃない?もしかしてもしかするとあの『バイオキマイラ』相手に本気じゃなかったなんて、無いよね?」


「よし、枢機卿は無視して…生き残った全員で逃げよう!」


その判断は正しく、魔装を纏ったモヒカンは正拳一発で『バイオキメイラ』は全身から血を吹き出し前のめりに倒した。






「(『バイオキメイラ』はファイアードラゴンも一撃だったし、ガイオンも刃が立たないし、あの悪魔だって上機嫌になるような凶悪な生物兵器だったじゃん。ちょっと何やってんだよーーー!!倒せよゴミがぁーーー!!クソクソクソクソクソクソクソ)」


わざわざ狙ってくださいと言わんばかりの豪華な服を来た枢機卿のヤクキメは教会を既に離れ、逃亡のため教会の隠し通路を通って表に出た。

しかしそこで『マタニティ』の構成員が口々にする『破滅のモヒカン』と目が合った。


「おっ、アイツ豪華な服着て権力者だな?」


不味い不味い不味い!


先ほど部下に持ってこさせたアーティファクト(古代のオーパーツな魔道具のこと)の〈テレフォン〉という1990年代のクソデカ携帯のような物を取り出し王都へする。


「オイ私だ!ヤクキメ・フーリンだ!フリード、貴様と私は王都学院の頃からの仲だったな、そうだ!私ごとで構わん、イースト領に【ハルマゲドン】を撃てーーー!!」


何やら大声を出したと思ったら、気が狂ったかのような笑い方をする。


「ククク、アーハッハッハッハ!!終わりだよ、全部全部!もう私を殺してもこの領地もろとも消滅するのだヒャーハッハッハッハ!!」


ヤクキメは不正のデパートであり、逆にイースト領の教会が残っていると色々明るみに出ると不味いことが数多くもともと自分が逃げてから【ハルマゲドン】を撃ち、全てを無かったことにする予定ではあった。

ちなみに【ハルマゲドン】というのは―――


「もうフリードという男ががアーティファクトであり、史上最凶の破壊兵器【ハルマゲドン】を起動してしまっただろう!この兵器を利用すれば半径20kmは焦土と化し10年は草すら生えない神の兵器なのだーー!!」


という訳である。



すると数分もしないうちに地響きが置き始め、北の方から全長3km程のエネルギー波が向かってきた。

見渡す限り魔力の塊で、触れた瞬間に大地であろうが魔獣であろうが山であろうが消滅していく。


その力を理解するものは絶望し、それを見たものはあまりの光景に白昼夢と思うものがほとんどである。


そのエネルギー波が到達するまでにヤクキメの肩関節を外し、足の健を切っていたモヒカン。

その光景を目にした瞬間顔が破顔し、テンション爆上がりでそのエネルギー波に向かって一直線に走っていく。


走っていく途中でモヒカンは人の目に見えるほどの魔力を纏い、空間は湾曲し、大気が震え磁場嵐が起きる。

北門の前に仁王立ちすると、モヒカンは熊の様に両手を大きく開き、エネルギー波に衝突する。


ビギャギャギャギャズギイイイイイイ


稲妻のようなパソコンの故障時の音のような甲高い高音が周囲を包む。

高次元のような、宇宙のような…第六感に触れたような不思議な感覚だったとその時をその場を体験したものは後に語った。


超高密度の魔力と魔力の衝突による拮抗が、神をも知らない高次元の空間を一時的に作り出してしまったのだ。


力の拮抗の中で、徐々にモヒカンがエネルギーを掴み上げる。


「どっっせいやぁああああああ!!!!」


エビのように仰け反りながら上空へ投げ飛ばす。

エネルギー波の方向を変え、宇宙に到達すると核爆発のような光を放ち爆発。

後に消滅した。


「……へ、へへへ、へへへへへへへ?なん…なん………お前ッ、一体ッ、何なんだよおおおおおお!!!!」


ヤクキメはこの世界に生まれてから一番の大声を上げた。


先程まで税を尽くした世界屈指の巨大な教会を半壊させ、2000人ともいう『マタニティ』という組織を1時間もかけずに壊滅させ、数十年という『魔人の尻尾』の研究で出来たS級魔獣をも超える『バイオキメイラ』を倒し、数々の領地や外敵を滅ぼした古代兵器のエネルギーを退けた神をも越えうる貴様は…貴様は一体……一体なんだ!!??









「―――え、ワキヤックですけど?」

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