第25話 サウス辺境道中とワキヤック

「くっそ!!足止めしやがって…」


2時間でチキン領を駆け抜け既にサウス辺境地に差し掛かった時、何と同じ領土にも関わらず止められてしまったのだ。

モヒカンの集団が来たとなればまぁ警備兵は止めるでしょうが、江戸時代の日本のような検問に納得がいかないワキヤック。

しょうが無いのでどこぞの貴族領の堀の外を回っていくことにする―――ところで、そこぞの豪華な服を来たアイドルみたいな人が出てきた。


「まてまて、この方々は私の知り合いだ!確かに亜人もエルフも居るし、全員モヒカンで見るからに怪しいが…」


「ご領主様が言うのであれば…」


「ご無礼を致しました。ワキヤック殿ですね?」


「え?俺会ったこと無いけどにーちゃん誰?」


「私はランスロット・ターニュと申します。武術大会でお見かけして…いやはやまさか我が領地においでとは思わなかったもので…」


「そーなんすか?とりあえずここのターニュ領を突っ切れると助かります。今イースト領に向かってるんで」


「左様ですか…では東門から出るとよいでしょう。せっかくなんで私がご案内しましょう」


「「押っ忍、お願いしまーす!」」




ターニュ領は治安の良い豊かな土地だった。

道が臭くないし、人々の行動一つ一つにどこぞ無く知性を感じる。


「へぇ〜もしかしてここの領民は教育を受けてるんすか?」


「お?見て理解るかい?ここの領民というより、南の辺境伯様であるダルク様の思いつき…先見の明により南の辺境全土で7〜12まで文字や計算と歴史何かの教育を義務付けたんだ。そのおかげで治安も良くなるし物量も以前の3倍にまで上がったよ」


「たしかダルク様って女性領主何でしょ?舐められたりしないっす?」


「しないさ、実力で領主になったからね。しかしウエスト領が武術大会の時に〈魔石農業〉を教えてくれて助かったるよ。……中央の連中は金を吹っ掛けてきたけど(ボソ)」


「ホウジヨ先生も喜んでるでしょ」


雑談をしながら一行は西門か東門まで歩いていると、仰々しい連中が道を塞いできた。


「おやおや、ここは臭いですな。いけませんなランスロット殿、このようなヒトモドキ共と一緒にいては。女神様も悲しんでおります」


「これは司祭殿、お言葉ですが彼らは客人だ。無礼ですよ」


いきなりでてきて道を遮った教会の連中を訝しむランスロット。


「これは怖い怖い、しかしですな〜神聖な教会の近くをヒトモドキが通るのはいただけませんね?」


「要件を言え」


「交通料金貨100枚、といったところですかな」


ふざけやがってとランスロットが剣に手を伸ばすと、ワキヤックが止めた。


「流石に領主が教会に手を出しちゃ不味いですよ」


「おや、そこの奇抜なガキはなかなか賢いようですね?では金貨95枚に負けてあげましょうゲフッフフッフ」


「なんで俺達がシバきます」


「は――――――」


その瞬間ワキヤックが目にも止まらぬ速さで司祭を掴むと耳を掴みながら足をかけ地面に叩きつけた。

すぐに両腕関節を外し、手刀で足の健を切る。


「あげぇやぁあああああん!!??」


謎の奇声をあげる司祭にお付きの僧侶たちがギョッとする暇もなく『モヒカンズ』達とアルとランメルとも加わって一方的な暴力ですぐさま制圧する。

舐め腐った僧侶全員の足の健を丁寧に切り、ターニュ領中央の噴水近くに逆さ釣りにした。

すると領民から圧倒的声援が巻き起こった。


「ぐくく…このような事をして、ただで済むと―――」


最後の力を振り絞って、先程の偉そうな司祭が宙吊りなりながらワキヤックを睨んで小物ワードを口ぐさむ。

ワキヤックが悪〜い顔になって司祭に問う。


「ねえおじさん、僕達ねイースト領に行くんだけど何しに行くと思う」


「ふん、精々道中楽しむが良い!神の裁きを受けよ…」


「『マタニティ』、ぶっちゅぶちまーす」


「―――はへぇ?何を言って……」


「お前らが好き放題するための武力を根こそぎ潰しに行くんだよ、こ・れ・か・ら♡」


「む、無駄だ!数千という手勢に精々恐れおののけ!女神様こやつら裁きを―――わしを救ってくださーい!!」


「あーすっきりした、じゃあ俺達行きますね」


「待ってくれ!俺もついて行ってもいいか?」


「駄目です。定員オーバーなんで」


「そうか…ならば是非ダルク様に会っていってくれないか?ちょっと寄り道すれば会えるから。必ず力になろう!あの糞虫どもに煮え湯を幾度も飲まされた恨みつらみがあるからな…」


「やめときまっす。そこまでしちゃうと本格的に中央から目をつけられちゃいますからね。なんか中央には古代兵器とかいう王家にしか使えない魔道具があるんでしょ?それ使われたらヤバいでしょ。とくにこの辺はカマセー領とは比べられないほど中央に近いし…」


「ふむ…しかし古代兵器などと所詮眉唾―――」


「古代兵器はありますよ」


ひょっこり顔をだしたアル。

アルを見た瞬間ランスロットは震え上がる。


「あ、あっるべ?なぜ?なぜ?」


「私はカマセー領ワキヤック様専属執事、アル・アークホワイトと申します。姉のマーリン大魔導士が実際に古代兵器のメンテナンスをしておりました。」


「は、はぁ左様ですか…」


「へへ、ビビるよな。俺達死んだって聞いてたし〜」


「何の話だよランメルトさん?」


「ワキヤックは気にしなくていいさ…」


動揺してイケメンが台無しだったが、落ち着いてきた所でアルが再び話し出す。


「古代兵器は実際にありますし5年前獣人国に向けて実際に発射されてます。極大エネルギーは自領のホロビッピ領まで灰塵かいじんと化しました」


「なに!?獣人国の進行が原因と聞いていたぞ!どこまで腐ってやがる連中め…い、いえ?貴方様のことではなく――――――」


「え?なんですか(すっとぼけ)?そう言えばあくまで噂ですが、ちかいうちにウエスト領からクーデターが起こるとか、起こらないとか?」


「へぇっ!?そうなの!俺も一枚噛みたい!」


横から入ってきたワキヤック。


「そういった事をジャンヌ様が詳しく武術大会聞き及んでる気がします。『マタニティ』は僕らに任せてあのメスゴリラ…じゃなかった、ダルク様にお伝えしたほうがよろしいのでは?」


「ハッ!そうさせて頂きます。いやー↑楽しくなってきたぞー!!では皆様のあのゴミムシ共をぶっちゅぶすためのご武運をお祈りしております!」


いつの間にか東門についていた一行はそのままターニュ領、そしてサウス辺境地を後にする。

ちなみにオリヴィエ嬢はずっとおねむであった。




――――――――――――



サウス領・領主邸


「くくく―――ぐあーーーはっは!!愉快だね!!ウエストの連中とアルベルト様がね!本当はアタイが『マタニティ』をぶっ潰してやりたかったが、それより戦の準備をしなくてはな!」


「ダルク様!ついに中央を…!!」


「ああ、よく今まで堪えたもんだよランスロット。あたしらはやはり戦場こそ本業よ!中央のご機嫌取りなんてもううんざりだった。早く帰ってこいジャンヌ!この高ぶりは夫を襲った時以来だね!!」


「唐突な下ネタはやめてください!南の代表なんですよ!?」


「そんな青くせぇこと言ってっから31にもなってそんな童顔なんだよ」


「私が貫禄無いことは関係ありませんよね?ほんとメスゴリラ―――」


「あん?生意気言ってっと犯すぞガキ」


「そんな事言って、旦那の前じゃ初心なくせに、笑っちゃうんですよねwww」


「このやろぉーーー!!なんでアタイの床事情知ってんだゴラァ!!」


「ひゃー、退散退散ーーーー」


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