第24話 マタニティとワキヤック
『マタニティ』。
教会の清く美しく正しい教えの裏で、表に出せないような暗殺、恐喝、洗脳、排除などウエットワークを請け負う影の組織。
誰もが幼少から洗脳を受け、死ぬことも
今回の獲物はワキヤック・カマセー。
神聖な教会に楯突く愚かな男。
我々に追われているとも知らず、人通りの少ない路地へ足を運んだ―――
殺るなら今だ!
仲間達と目で相槌をし、ひと目の無い路地へ突入―――が!?
「「―――居ない!?」」
先程まで茶髪の男と歩いてたはずだ。
すると後ろに強烈なプレッシャーを感じ、振り向くとモヒカン筋肉と茶髪のイケメンが仁王立ちしている。
「マタニティごわすか?」
幾多の死線を踏み越えてきた猛者の貫禄を醸すモヒカン。
情報によれば十歳の子供だというのだが、どう見てもその様には見えなかった。
すぐさま毒ナイフを取り出すが―――
キン!―――からんからん…
「【黄石の加護】、物騒なもんはだめだぜ?」
茶髪の男が素人目で見ても名剣だと理解る剣で、目にも止まらぬ速さによる我ら3人の毒ナイフを切り落としてしまった。
「なっ!?【黄石の加護】!?だとすれば物理も魔法も刃が立たない鉄壁の輝石の騎士だ!」
「輝石の騎士!?なんでそんな男がこんな田舎に―――だが、もとより狙いはそこのモヒカン!」
三人一斉にもう一つの忍びナイフを取り、一斉におそったのだが、
「「ぐああああ!?」」
猛烈な箸の痛みについ膝をつく俺達。
恐る恐る足に目を向けると、3人共両足の腱が切られている。
いつの間にかモヒカンの男が素足になっている。
まさか足で切ったとでも言うのか?
俺はすぐさま他の仲間に口笛で合図を送るが―――
「残念だけど、建物の上の子達は私が片付けちゃったわ」
声を追って上を見上げると奇抜な格好をしたモヒカンエルフババアが手を降っている。
そのとなりには、手の肉が腐り落ちて苦悶の表情を見せる仲間の姿がある。
「ひえッ!?」
「私の【腐食魔法】は生き物なら誰にでも効くから、生殺与奪は目線は目に入った時点で私が握ったようなものよ〜」
「こっわ……」
流石のランメルトもこれにはどん引き。
「おいばっちゃん!殺すなよ、地下で働いてもらうからな」
「大丈夫よ〜このぐらいなら回復魔法で直しちゃうから〜」
「(おいおい、腐食して肉が落ちて骨が見えてんのにそこから治すってそんな回復魔法、教会より上じゃねぇかよ…)」
先ほど腱を切った一人が威勢よくワキヤックに問いかける。
「地下で働かせる!?一体俺達をどうするつもりだ?」
「せっかく若い奴ら寄越してくれるんだ、奴隷契約して労働力として働いてもらうに決まってるだろ?簡単に死ねると思うなよ?」
「敵の物になるぐらいならいっそ―――ご、ごべべべべ」
舌を噛み切ろうとした瞬間、いきなり吐き始める『マタニティ』の方々。
「【マインドシェイク】。魔力が低いと簡単な黒魔法が通って楽ね〜」
エルフババアの魔法によって平衡感覚を失い、更にそのまま昏倒して気を失ってしまった。
「うぐぐ、……!、ここは…」
『マタニティ』の少年は目を覚ます。
足の腱は回復してあり、立ち上がることが出来た。
ここは病院か何かだろうか?清潔でベットかふかふかだ。
こんなベットで寝たのは初めてで、深い眠りをしていたのか…たしかモヒカンの男にやられて―――目の前にいる!?
「‘立ち上がらずそのまま俺に従え’」
後頭部したの首の辺りが熱くなり、頭が真っ白になるような感覚、これは〈奴隷契約〉!?
「はい……かしこまりました(一体僕をどうするつもりだ?たしか地下で働かせるとか…)」
「まず名前を教えろ」
「僕は『マタニティ』構成員テッポ・ウダーマです」
「ならテッポ、『マタニティ』の本部はどこだ?」
「イースト辺境地の首都イーストにあります」
「よし、イーストに行くか!」
「「はぁ!?」」
テッポとランメルトは声が被った。
「ちょっと待て、ワキヤックはこれから向かう気か!?」
「押忍、善は急げっす。テッポ、お前には案内人をしてもらう」
「うぐぐぐ…!一体本部をどうするつもりだ!」
「ぶっ潰す!」
「はっ、バカバカしい!本部には僕以上の精鋭が2千人いるんだぞ!貴様が強いのは認めるが無理な話だ」
「そっか、じゃあ行くぞ!」
「聞けよ!」
「なんか…面白そうだな、俺もついてっていい?」
「いいっすよ。流石に走らせるのはアレなんで俺が馬車を引っ張りますね。よし、『モヒカンズ』全員で行くぞオラ!」
「「御意!」」
いつの間にか全員モヒカンでエルフやら獣人やら魔人やらが入り混じった10人のモヒカン達がワキヤックを囲むように頭を垂れている。
ミシュラムやガラワルも居る。
「おおっ気配が一切感じなかった。どいつもこいつも化け物揃いかよ!!面白くなってきたなワキヤック!」
早速ハゲヤックに報告に行く。
「バカーーーーー!!ワキヤック!今わしはご令嬢達の機嫌取りで胃がキリキリしとるんだぞ!また変なこと言いおって!バカ!バカ!(小並感)」
「なっ―――そんな面白そうなことになるんですか?もちろん専属執事もお供しますよ!」
「いや、いやいやいや、アルくん。君が来たらだめじゃねえかな?いろいろ…さ?」
「何の問題もないですよ?一応言っておきますと、例のスキルを使わなくても『モヒカンズ』に継ぐ実力だと言われてますよ?」
アルはドヤ顔で言うと、横から『モヒカンズ』のガタイの良い犬獣人とミシュラムが
「うむ、実に才能溢れた武人である!」
「アルくんは今じゃA級魔獣にだってソロで勝てるわよ〜」
「ええ!?A級を?(【ホウオウ】無しで!?)マジかよアルくん…凄いんだな?」
「それほどでもあります。ワキヤック様の専属執事ですので」
「ま、ついて来たけりゃいいけど、お前はランニングだぞ?」
「いえーい!」と『モヒカンズ』一人一人とハイタッチするアル。
「(アルベルト様、まさかモヒカンにはならないよな?将来剣を捧げるお方がモヒカンってのはちょっと…)」
ランメルトが引きつった顔でアルを見つめてると後ろから騒がしい奴らが来た。
サイラス「なぜ僕を誘ってくれないんだ!?僕もいくぞ!」
ヘンドリック「まてまて、教会の『マタニティ』を潰すなどと、ヘタをしたら王家を敵に回すぞ?」
リリシア「アンタにしては殊勝なことを言うわね?ちゃんと帰ってきたらケツでも踏んでやるわよ!」
ジャンヌ「終わったらフリーズドライの商品を沢山お土産にちょうだいね?後冷凍ピザと生パスタ、あとポテトチップスと漬けオーク肉――――――」
シャーロット「ちょっと!私を置いてどこ行くきよラン!ちゃんと護衛しなさいよ!(ド正論)」
エレナ「あーあ、私も行きたいな〜(チラッ)」
イレギュラ「えーまたにーちゃだけ?ずるいずるい!!」
どいつもこいつも好きなことを言っていたが一人だけワキヤックの耳に残った。
「私は領主の娘なので顔が利きます!」
オリヴィアの一言に、
「採用」
馬車に連れて行けるギリギリ3人が決定。
残りは食料やら野宿のテントなどをを馬車にぶち込んで準備ができた。
「よっしゃ!チェスト教会!!」
「「「『マタニティ』ごわすか!!」」」
ワキヤック・アル・ランメルト・オリヴィア・テッポと『モヒカンズ』10人と馬車3台(人力)。
イースト領には、
チキン領→サウス辺境領→イースト領内サバヨーム領→イースト領というかなりの長旅になる。
食料も各領地で買いつなぐか、途中で魔獣を捌くかして食いついで行くことになる。
そもそも、こんな遠くまでちょっかいをかける教会は本当に性格がいい糞虫どもだ。
武術開会で名前が売れていたワキヤックが、この旅で国中に名を轟かせてしまうことになる。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
※唐突にイカれたメンバー、『モヒカンズ』の紹介。
・諜報のガラワル(18)
ハンドサイン・心象煽動・潜伏などを得意とする。暗殺を請け負うこともある。
大柄で生真面目な男。
実力8位。
・暗殺のシノブ(20)
潜伏と捏造、寝技(意味深)と暗殺が得意。
元『マタニティ』の構成員。
実力6位。
・隠密のジミー(22)
誰も気づくことのない平凡な男。
それでもS級魔獣をソロで勝てる実力を持っている。
実力9位。
・軍略のコウメ(15)
兎獣人の女の子。
策略と軍略に長けた智者であり甘いものが大好き。
見た目によらない強靭な戦闘力はさずがの獣人。
実力7位。
・兵糧のミシュラム(782)
エルフのセイリュウ王国最強の大賢者を越えたものにしか与えられない老賢者の一人。
食品開発や新しい料理開発を日々こなす超食いしん坊のばあちゃん。
実力2位。
・救護のナイチン(121)
ドワーフの好青年、回復薬の開発や新しい魔道具の開発などもおこなっている。
実力5位。
・法律のジャッジ(32)
亜人リザードマンのガタイの良い男。
無口で何を考えてるかわからないが可愛いものが好き。
実力3位。
・魔法のカルダモン
インド人っぽい人。
ワキヤックの次に魔力の高い人物。
胡散臭いちょび髭とガチムチマッチョの男色家。
実力4位。
・武術のバルバロイ(47)
獣王ライオネル・ビャッコの王弟。
うまい酒と食事、カマセー領の雰囲気に惚れ込んで移住した。
ワキヤックからワンツーマンに空手を習うことによって類まれなる才能と獣人の強靭な肉体が合わさった最強の男が誕生。
実力1位。
・商業のカイシュウ
王都から来た剛腕商人。
体力と活気と笑顔が眩しい大男。
王都のギルドマスターの息子。
実力10位。
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