第14話 許嫁とワキヤック


魔の森に拠点ができて割とすぐにバルバロッサとタイタニスは魔王国へ帰った行った。

バルバロッサは飛行魔法の【フライ】という魔法を使いこなすことができ、『魔境』の危険区域を避けて空中から帰ることができるそう。

最後にバルバロッサと再会の際はサキュバスを紹介するという男の約束を交わし空へ消えていった。

タイタニスはアルと何か会話を済ませた後、ワキヤックを人睨みするだけでバルバロッサに背負われて空の彼方に消えた。


そして外壁は魔石コンクリートと言う最新建築材の開発によって、ワキヤックの全力正拳に耐えうる強度を得ることが可能となった。


冒険者ギルド魔の森支部や魔獣解体所、大浴場、宿舎などの建物も建った。


未発見の素材や鉱石、霊草なども発見され途方もない富を得ることに成功。


そしてチキン領で〈電動魔石モーター〉を利用した新時代の魔道具〈自動馬車〉の開発に成功。

この魔の森中域までの流通に革命をもたらし、同時にチキン領も飛躍的に経済が発展した。


そんな変化の中で、拠点から割と近くにあった『魔境』にワキヤックは引きこもっていた。

一年ぶりに拠点に戻ると10歳の年齢になっていたことをデベロッパー(仮)のブレイドに聞いた。


「坊っちゃん、いきなり現れたから驚いたぜ?モヒカンが見る影もなくボサボサになるまでどこにいたんだ?」


「ちょっと『魔境』にな」


「は?」


10歳になるとワキヤックの見た目にも変化があった。

身長も150cmぐらいまで成長し、ゴリラの様な筋肉がに身についていた。


魔の森に拠点を求めて一年半ぶりにカマセー領に帰るワキヤック。





―――カマセー領 屋敷―――


「ワキヤックくんが居なくなって1年半か…」


「あの馬鹿が一体どこへ行ったのやら…それで先輩、今日はどんな用事で?」


客間にはハゲヤックとフコウデ・カワイーソン子爵が居た。


「ハゲヤック、ワキヤックくんに特別な人はいるか?」


「へ?何を…!まさかサチウスちゃんをワキヤックと?」


「本人が、望んでなぁ…はぁ」


「正気ですか先輩、わしが言うのもなんですが、あの子は普通の子ではない。サチウスちゃんは苦労しますよ?」


「それは…しかし、サチウスがどうしてもというのだ。私もワキヤックくんであればやぶさかではないよ」


「パパー!パパー!」


突如元気な長髪の女の子が客室に入ってくる。


「イレギュラちゃん?だめだろ、お客様が来て―――」


「ワキヤックっていう変なお兄ちゃんが玄関にいるのー」


「「えええ!?」」


エントランスに急いで向かうと、居た。


「ワキヤック?今まで、今まで一体どこに!?」


「いやー父上、ご心配をおかけしました」


「と、とにかく無事で良かった…そういえばカマセリーヌは?」


「驚きすぎて泡吹いて倒れちゃった。」


「カマセリーヌぅ!!」


久々にイレギュラと会ったワキヤック。

妹が以前会った時は2歳ぐらいでワキヤックを覚えていないようだ。


「あ、カワイーソン子爵?どもっす」


「あっはっは!いいタイミングだ、君にも話があるんだ?」


「?」


――――――――――――


「はぁ!?サチウスを俺の許嫁に?俺は筋トレや鞭打ちで喜ぶ変態豚野郎だけどサチウスはそれで良いのか?」


「え(どん引き)……ワキヤックお前……」


「ふむ、できれば聞きたくない情報だが、決めるのは娘だ」


ワキヤックの自虐に困惑するフコウデとハゲヤック。


「一回、久しぶりに会いに行きますよ。話し合いますかカワイーソン子爵」


「それは助かる。いつ頃来られるかな?」


「今!」


早速自室でモヒカンをバチッと決めてから屋敷の門へ行く。

そこにはカワイーソン子爵の〈自動馬車〉が駐車されていた。



ギギギギィイイイ!!



フコウデの圧巻のドライブテクであっという間にカワイーソン子爵領に着いた。

〈指導馬車〉のアクセル全開でドリフトやら急ブレーキで目がガンギマリだったフコウデ子爵。

ハンドルを握ると性格が変わるらしい。

ハゲヤックは車酔いでダウンしていたので、先にフコウデとワキヤックは屋敷に向かった。


屋敷に着くと、垢抜けたメガネの清純派黒髪ロング美少女がワキヤックに笑顔を向けた。


「ワキヤック様!お会いしたかったです!」


気が付くとワキヤックに飛びついて来たサチウス。


「ワキヤック様の大胸筋…堪りません…クンクンクン…ふひひ♡」


「い゛っ!?」


サチウスとは一回しか会ったことがないはずだ、なんでこんな事になってるのだろう?


「お、お久しぶりですサチウスパイセン(焦りの敬語)」


「わたくしが一つ年上ですがどうぞサチウスと及びください…旦那様(ポッ)」


「いやぁ、まだ婚約も決まったわけじゃ―――」


「え?ワキヤック様……?私の何が問題なんですか?教えてください!何でもします!悪いところは直します!お願いワキヤック様!ワキヤック様ワキヤック様ワキヤック様ワキヤック様ワキヤック様ワキヤック様ワキヤック様ワキヤック様ワキヤック様ワキヤック様ワキヤック様ワキヤック様」


「いひーん♡」


いい感じに病んでるので心地よくなるマゾのワキヤック。

意外と相性がいいのかもしれない。


「ちょ!?サチウス?ワキヤックくんが困っているだろう?」


「ご、ごめんなさい!私…ワキヤック様に…私をよく思って欲しくて……私、重たいですよね?(チラッ)」


「重たいねぇ!(ニカッ)」


「あああ!!捨てないでぇ!!ワキヤック様…うっうっうっ……」


結局サチウスに押し切られる形で婚姻を結ぶことになった。


と、コレを良しとしない人物も居た。

ボウギャック男爵家の令息、ワンパクであった。

以前スタンピートの時に会った少年。


カワイーソン領地をサチウスがワキヤックを連れて

案内という建前の初デートをしているとどこからともなく現れた。


「オイ!ワキヤック!!サチウスを賭けて決闘だ!」


と、出会って3秒でいきなりそんな事をバザーの広場中心で叫ぶものだから―――


「よし、わかった―――フンッ!」


「あぼめぎゃ!!」


ワキヤック速攻のラリアット。

ワンパクは空中を一回転してから地面に落ちた。


「て、てめぇ……」


恨めしそうな目でワキヤックを見つめるワンパクがの先をある人物が横切った。


「お久しぶりがんすワッキー!」


「ガンちゃん久しぶりだな!」


その人物はガンス・チキン。

魔法合同研究ですっかり仲良くなったワキヤックのマブダチである。

ワキヤックが疾走する前に魔の森拠点へ親父のイバリンと一緒に〈自動馬車〉の試作品の自慢をしにくるぐらいには仲が良い。

あだ名で呼び合う仲である。


「ワキヤック様、ガンスくんとやけに仲がいいんですねぇ〜(ガン見)」


「お、そうだな」


「そんな睨まなくても大丈夫がんすサチウスちゃん。いやー申し訳なかったがんす。父上がサチウスちゃんとの婚約話をワンパクくんにうっかり漏らしてしまったがんす」


「お、うっかりだな」


「「ワハハハハハ」」


「くそッ!ガンス!お前俺を裏切るのか?」


「今はワッキーのほうが仲良しがんす「うぐっ(ショック)」そもそもいつまでもサチウスちゃんに告ってもない負け犬のワンパクくんに裏切りとかイキって欲しくないがんすね」


「くっそぉお!ぜってぇ許さねぇからな!!父上に言いつけてやる!!」


そう言って護衛と一緒に消えていった。


「あれ、ガンちゃんってワンパクと仲良しだったろ?あんな冷遇で良いのか?」


「良いがんす。最近ボウギャック領にいい噂聞かないがんす」


「そういえばボウギャック領で人身売買とか薬物が流行しているとか父がヘンドリック様と話してました」


「へ〜」


まぁ自分には関係ないと日和見した翌日、ヘンドリック将軍がカワイーソン子爵に頭を下げて助けを求めて事態が急変。


「娘のミリーナがウラガネー・ボウギャックに人質にされた!力を貸してくれ!」

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