第12話 拠点確保とワキヤック
謎の魔族、バルバロッサが仲間になって奥に進む一行。
遂に凶悪なB級魔獣やA級魔獣がで始めてきた。
「前方からグランドホーン!後方にはシルバーウルフの群れか!?俺とハサンで前方を食い止める!ラーラとレイルは後方のトサケンさんの手伝いに回ってくれ!」
「「了解リーダー!!」」
冒険者パーティー{剣風}の号令が響き渡る。
グランドホーンとは全長3メートルの巨大な鹿のような魔獣。
頭部にそそり立つ巨角には高名な魔導士10人分の魔力を溜め込んでおり、ノータイムで放ってくる凶悪な魔法で豊かな領地が半壊した事例があるA級魔獣。
全長2メートルのシルバーウルフは群れを成して獲物に襲いかかる。
頑丈でしなかやな銀の毛皮は物理だけではなく、様々な魔法が通用しない。
鋭い牙は盾や鎧が意味をなさないB級魔獣。
そんあ凶悪な魔獣たちにはさみうちにされた。
「前方はわしに任せろ、そこの冒険者たちは後方を守るが良い!」
「よし、任せたぞ!」
ブレイドとハサンは後方へ向かう。
バルバロッサは馬車を引くワキヤックの前で仁王立ち。
「そう言えば小僧、いやカマセイヌヒコ殿。お前さんにはまだわしのスキルを見せておらんかったな」
「……あ?鎌瀬って俺か?もうすっかりワキヤックだった」
自分の前世の名前を当てたのはそのスキルとやらの力なのか?
こちらに向かって突進してくるグランドホーン。
角には雷鳴をまとわせている。
周囲へ飛来する雷鳴が大地をエグりながらバルバロッサに衝突する瞬間―――
ゴッ
カウンターで頭蓋が沈没し、目と耳から血が溢れ横たわるグランドホーン。
カウンターに使った一撃、それはワキヤックにとって馴染みのある技
「変速正拳突き?」
鍛錬用の正拳突きを実践用に改良した会心流空手の変速正拳突き。
なぜこの男が?
「わしのスキル【ゲンブ】は触れた対象者の今までの経験を刹那で疑似体験し自分の物にできる。故にこういう事もできる!!凄いであろう!」
それが本当なら他人の経験を自分の物にできる反則的な能力だろうが…何ともつまらない能力だと思ったのはワキヤックがマゾだからか。
「この能力のおかげで魔力で貴様に劣るわしが難なく勝てたというわけだ。初撃を払い受けした時に発動したからな」
「へぇ、いいじゃねぇか!そういう風に努力もせずに強いやつも俺は大歓迎だぜ!ドMだからな!」
「そうであった…(引き)。貴様の経験したSMクラブでの目隠しハイハイ罵倒コースをわしも経験してしまった…」
「あーあ、この世界にはSMがねぇからなぁ〜今は精通もまだだからいいけどよー」
「わしの魔王国にはラミアやアラクネ、サキュバスなども居てな?そういうのが貴様の好み―――」
「マ゛ッ!?魔王国…覚えたぜ。絶対に行くぞ魔王国!」
ドMなら誰しもが夢見る3大ドスケベ生物。
触手のラミア。
緊縛のアラクネ。
そして男の性欲終着点サキュバス。
ワキヤックの知らないSMがそこにあるだろう。
「悪魔をしばき倒せるようになったら冒険者になって魔王国巡りってのがいいかな〜」
「おい?シルバーウルフに苦戦しているのではないかあの冒険者とやらは?」
「あっ、いけね」
急いで後方に加勢しに行く二人。
「(鎌瀬よ、貴様がタイタニアの体をまさぐったのは許せぬが魔の森から救い出してくれたこと切に感謝している)」
―――ワキヤック開拓班 後方―――
「ハサン!守りはいいか?」
「うす、リーダー。【パリィ】」
ハサンが【パリィ】というスキルを使うと襲いかかってきたシルバーウルフ3体が透明な何かにぶつかったかのように後方へ弾かれた。
その隙に斥候のレイルは影から毒ナイフを取るとシルバーウルフへ投げつける。
「今ので【影収納】の毒ナイフは全てだ。ラーラ!」
「わかってるってば!【アイシクルランス】」
ラーラの周囲に1メートル程の氷槍を10本ほど生成し、シルバーウルフへ発射。
3本が同じ個体を貫くが、他のニ体は身を翻し無傷。
更に後方からもう三体が姿を表し五体を相手にしなければならなくなった。
「【剣術】!うおおおおお」
ブレイドは凄まじい速度で剣を振るい一体の首を跳ねることに成功したが、剣を振るった後の硬直を狙われ肩を噛みつかれてしまった。
「リーダー!」
急いで駆け寄ったラーラの背面からシルバーウルフが飛び出してきたが、隻腕のトサケンのレイピアがその首を貫通した
返す刃で肩に噛みついたシルバーウルフもレイピアで一刺し。
現場を20年離れたギルドマスターのトサケンだが腕はなまっていない。
肩をラーラに回復魔法をかけてもらいながら周囲を見回すと、シルバーウルフ残り2体がいない!?
「しまった!中央の馬車か?あそこには棟梁とアルくんがいるぞ」
場所が近いハサンがすぐに向かう、馬車の中からシルバーウルフと棟梁が飛び出てきた。
棟梁の斧を噛み砕き、次はお前だと棟梁を襲うシルバーウルフを棍で打ち除けるアル。
下顎を打ち抜いたが、外傷はなくピンピンしている。
下段構えで距離を取るアルだが、背後の茂みからもう一体のシルバーウルフに不意を突かれた。
「しまった―――」
「【ファイアーボール・スプリットファスト】」
ワキヤックから放たれた無回転の火の玉がシルバーウルフを捕らえた。
当たる寸前に身を屈めたのだが、なぜか縦に落ちて当たってしまったのだ。
魔法自体はさほど効いていなかったが、当たった衝撃による硬直の刹那でワキヤックが距離を詰めると浴びせ蹴りがシルバーウルフの顔面を捕らえ、地面に叩きつけられると、凄まじい衝撃とともに顔ごと地面にめり込んだ。
「大丈夫かアル!」
「助かりました!でももう一匹―――」
「わしが片付けた」
バルバロッサがシルバーウルフ喉を掴み、へし折っていた。
「これで6匹全てですね…しかし、」
馬車の馬が殺られてしまった、しかも2体とも…。
「ここまでだな…」
カマセー領を出て2日という短い期間であったが、【拳銃拳】というワキヤックのでたらめな技によって一直線上に突っ切って来たため思っているよりはるかに進んでいる。
馬が居なくなったのなら帰り際を間違えると全滅の恐れすらある。
「さすがの即断ですワキヤック様、撤退…致しましょう」
トサケンは苦渋の判断という顔でワキヤックに答える。
しかし、ワキヤックはきょとんとしている。
「へ、何言ってんの?ここを拠点にするんだよ」
…………?
「そもそもなぁ、AだのBだのって魔獣が出るのに馬を庇いながら奥まで行けると思ってたのか?行けるとこまで行ってそこを拠点にして補充ができるようにする。それを繰り返しいずれ『魔境』っていう感じ」
「な、考えられてるようで何も考えてない!?つまり行き当たりばったりで拠点を作るって事かーー!!なんつぅ…」
このワキヤックという少年は神童だと、女神の使徒
だとカマセー領内では言われていたのだが、ここにきてブレイドはワキヤックを理解した。
シンプルな思考の持ち主、言い方を変えるとただのバカ。
ギルドマスターであるトサケンを信用して今回の依頼を受けたが、彼もまた目が曇っていたらしい。
「あのなぁ!拠点ってのは物資の確保と強固な外壁が必要不可欠なんだぞ!!ここで!どうすんだよ!!」
「はぇ〜勉強になりやす」
「っつあー!やめた!ワキヤック、俺はアンタに遠慮していたが拠点づくりに関しては口を出すからな!」
「ワキヤック様、このブレイドという男の父は辺境の土地を開拓し、町を興したという経歴があります」
「じゃあ万事任せる」
「あーくっそ!護衛だってのにもう…」
「とりあえず、死んじまった馬捌くから馬肉食べようぜ!」
新鮮な馬肉を食べて一休みした一行。
まずは外壁ということでバルバロッサによる【ロックウォール】という魔法で、厚さ2m高さ8mの岩壁で囲んでいく。
その間にその囲む領域をワキヤックの剛腕で平らにしていく。
その過程で出た木材は
途中でダイブイーグルの番が空から降ってきたがワキヤック神速の手刀で首を落とし焼き鳥になった。
無事外壁がヤフードームほどのスペースを囲う頃には小屋も完成し、スペースはほぼ平地になっていた。
「あのさぁ。勘違いしないでほしいんだが、こんな簡単に仮とは言え拠点は普通確保できねぇからな!」
「「「イェーイ↑!!」」」
日が沈み始めた頃、互いにハイタッチをして先程のダイブイーグルの焼き鳥を食べながら、棟梁がこっそり持ち出したワインを飲んでいた。
この拠点がいずれゲンブ魔王国とホウオウ王国の架け橋になることをバルバロッサは予感していた。
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