「さよなら啓一。頑張ってね」




祥子は、ライブ会場の片隅に、怨みと一緒に藁人形を置いていった。


それは啓一との決別を覚悟した証だった。




そして、祥子は啓一のアドレスを消した。


祥子が会場を去って行く時、その背後で藁人形を拾うアンナがいた。




悲しみを乗り越え、新しい道を歩みだした祥子の背中を、ほっとした顔で眺めていた。


アンナは、ほんの少しだけ微笑み、その場所を後にした。




啓一がその後どうなったか祥子はしらないまま、数日が過ぎる。


祥子が啓一の結果を知ったのは、オーディションのテレビだった。




啓一は見事にグランプリを受賞し、メジャーデビューが決まった。


新学期が始まっても、啓一が学校に来る事は無かった。




啓一は歌手の道を着実に歩みだしていた。


祥子は、他のみんなと同じように、自分の進路を見つける事にした。




啓一からの連絡も無い。


確実な別れの言葉も無く、自然消滅のような状態になっていた。




周囲からも、祥子は啓一に捨てられた元カノとして噂された。


事実だし、祥子もそれを気にする事は無かった。




祥子は一人、自分の心に整理をつけて、現実を歩みだした。


今思えば、地獄少女にお願いしなくて良かった。




自分で怨みを晴らさなくて良かったと、祥子は自分に言い聞かせていた。


まだやりたい事の見つからない祥子は、進路を短大に決めた。




もう少しだけ学生を続けて、自分のやりたい事を見つける事にしたのだ。

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