5
「さよなら啓一。頑張ってね」
祥子は、ライブ会場の片隅に、怨みと一緒に藁人形を置いていった。
それは啓一との決別を覚悟した証だった。
そして、祥子は啓一のアドレスを消した。
祥子が会場を去って行く時、その背後で藁人形を拾うアンナがいた。
悲しみを乗り越え、新しい道を歩みだした祥子の背中を、ほっとした顔で眺めていた。
アンナは、ほんの少しだけ微笑み、その場所を後にした。
啓一がその後どうなったか祥子はしらないまま、数日が過ぎる。
祥子が啓一の結果を知ったのは、オーディションのテレビだった。
啓一は見事にグランプリを受賞し、メジャーデビューが決まった。
新学期が始まっても、啓一が学校に来る事は無かった。
啓一は歌手の道を着実に歩みだしていた。
祥子は、他のみんなと同じように、自分の進路を見つける事にした。
啓一からの連絡も無い。
確実な別れの言葉も無く、自然消滅のような状態になっていた。
周囲からも、祥子は啓一に捨てられた元カノとして噂された。
事実だし、祥子もそれを気にする事は無かった。
祥子は一人、自分の心に整理をつけて、現実を歩みだした。
今思えば、地獄少女にお願いしなくて良かった。
自分で怨みを晴らさなくて良かったと、祥子は自分に言い聞かせていた。
まだやりたい事の見つからない祥子は、進路を短大に決めた。
もう少しだけ学生を続けて、自分のやりたい事を見つける事にしたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます