「祥子ぉ。祥子でしょ？」

それは二人組みの女の子だった。

祥子の同級生の夏見と由美だった。

「やっぱり来てたんだ。彼氏の晴れ舞台だもんね」

夏見が馴れ馴れしく話しかけてくる。

今までは、クラスメイトでもほとんど話す事はなかったのに、こんな時ばかりは友達顔をしてくる。

祥子は一応笑顔で答えた。

そんな祥子に、夏見と由美はどんどん話しかけてくる。

今までは音楽をやっていても、あまり女子に騒がれるタイプでもなかった啓一。

しかし、二人から出てくる言葉は、啓一を褒め称える言葉ばかりだった。

彼女の前でも、自分は同級生なんだと言うオーラを必死にだしていた。

いつもより大きな声は、周囲にいるほかの客達へのアピールなのかもしれない。

祥子はそんな二人をどこか冷めた目で見ていた。

結局、会場に入るまでついてきた。

ライブが始まる時まで、二人はとてもはしゃいでいた。

しかし、祥子はそんな気分にはなれなかった。

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