祥子がそのまま視線を前に向けると、コルクボードに貼られた写真が目に入った。


楽しい思い出が詰まっている。




「啓一、あなたは誰にも渡さない……」




薄暗い部屋で、祥子は真ん中の写真を握り潰した。


祥子が幸せだった時間は、啓一と夢を見てる錯角の中にいたときだけ。




深い愛情のぶんだけ、裏切りは怨みを増幅させる。


感情の高ぶりを、もう祥子は抑える事が出来なかった。




毎日祥子は藁人形を見つめ続けた。


この糸を解けば、啓一は地獄に流される。




祥子は当日まで、啓一を地獄に送る事だけを考え続けていた。


知らぬ間に地獄に送られるのでは満足できない。




必ず目の前で地獄に送ってやろうと、祥子は決意した。


そして、ついにライブ当日。




祥子はバッグに藁人形を入れ、会場に向かった。


この中で啓一はライブをする。




会場に到着した祥子に、突然声をかけてくる人がいた。

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