今まで姿を見せなかった蓮が、アンナの前に現れた。




「あんたかい。なんとなくね。男に頼って夢を見ても、最後に馬鹿を見るのは女なんだよ」




アンナは寂しい顔をしながら、食器を片付けた。


蓮もそれ以上は何も聞かず、そっとカウンターに座った。




アンナは、食器を片付けながらなんとも言えないため息をついた。


まだ若いまっすぐな思いを羨ましく思いながらも、どうしてもそんな子を見ると心配になってしまっていた。




自分も昔、そんな悲しい思いをした事があるからだ。


そして、男に泣かされる女を何人も見てきたアンナ。




蓮はそんなアンナをそっと見ていた。





-啓一、明日は思いっきりやってきてね!待ってるから-




ライブハウスからの帰り道、祥子はそんなメールを啓一に送った。




-おう-




啓一からの返信はその一言だった。


翌日、啓一のオーディション当日。




祥子は駅まで啓一を見送った。


何か吹っ切れたのか、朝の啓一の顔は晴れやかだった。

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