アンナは祥子を諭すように話した。




「啓一と一緒にいる事しか考えてなかったんです。でも……なんだか」




祥子はアンナに不安な気持ちを話し続けた。


自分でも分からない自分の気持ちを。




「祥子ちゃん、純粋に人を好きになる事は否定しないよ。でもね。男に寄り添うだけが女の幸せじゃないのよ?自分の夢も持って、一緒に成長出来ないとね」




アンナは優しく祥子にアドバイスをする。


祥子はそのアンナの優しい言葉に、少しだけ自分を見つめなおすことが出来た。




まだ答えははっきり出ないけれど、少しだけ救われたような気がした。


自分の事から逃げて、啓一にその矛先を向けていた事。




一緒に夢を追っているのではなく、啓一にまかせていただけ。


祥子はそんな答えに行き着いた。




「アンナさん。ごちそうさまです」




「良いんだよ。啓一君オーディション上手く行くと良いね」




「はい」




そう言って祥子はライブハウスを後にした。




「ずいぶんあの子に入れ込むな。気になるのか?」

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