見慣れた景色も、今日はなんだか寂しく見える。


いつもなら家を右に出て、啓一の家に向かう。




でも今日は違う。


啓一の家とは反対の方向へ歩き出した。




祥子にとってはとても久しぶりの事だった。


予定も無く歩き出した祥子は、気がつくと啓一との思い出の場所ばかりを回っていた。




それは、この町のすべてに啓一との思い出が詰まっているからだ。


他の人にはなんでもない場所も、二人にとっては大切な場所。




祥子はひとつひとつを思い出しながら歩いた。


いつの間にかあたりは暗くなり始めていた。




そして最後に祥子が立ち寄った場所。


それは啓一が一番輝いて見えたライブハウス。




音楽をやっている楽しそうな啓一が祥子は一番好きだった。


祥子が啓一と多くの時間を過ごした場所でもある。




「祥子ちゃん?」




そんな時だった、ライブハウスの前を掃除していたアンナが祥子に気がついた。




「あっアンナさん。こんにちは」




祥子はアンナに挨拶をした。




「どうしたの祥子ちゃん?一人なんて珍しいじゃない」

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