母親は心配そうな顔で祥子に話を続ける。




「分かってるよ。もういらない」




祥子はそんな母親から逃げるように、自分の部屋に戻った。


ベッドに横になって天井を見つめる。




横に置いてある携帯を見ても、何も受信していない。


いつもなら何かしら啓一との予定があるのに、今日は連絡もしていない。




何となく一人でいられない気分になった祥子。


目的はないが、祥子は着替えを始めた。




啓一とのペアリング。


一緒に買ったネックレス。




机の上に飾られた二人の写真。


部屋をゆっくりと眺めると、そこには啓一との思い出が詰まっていた。




幼い頃からの写真。


コルクボードに貼られた写真には、二人の笑顔があった。




しかし、今の祥子にはそんな姿も遠い記憶に感じた。


今は、写真の中の啓一を見るのもなんだか辛かった。




「行って来ます」




祥子は行き先を決めないまま、家を出た。


生まれた時から住んでいる町。

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