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そんな葛藤が、何度も何度も頭の中を回る。
しかし、あれだけプロになるといきまいていた手前、みんなの前で何もせずにやめる事は出来なかった。
隣でずっと応援してくれる祥子にも、そんな弱い自分を見せる事は出来なかった。
自分の事をただ信じ、純粋な目で応援してくれる祥子を、最近はまっすぐ見る事が出来なかった。
「ありがとうございました」
啓一は、アンナと蓮に挨拶をし、スタジオを後にした。
「啓一、がんばろうね」
帰り際、祥子は必死に啓一を励ます。
そんな事しか出来ない自分に、少し引け目を感じながらも、それが自分の役目だと言い聞かせていた。
「分かってるよ」
そんな祥子に、啓一は少し冷たく返す。
練習もあまり上手くいかず、本番はどんどん迫ってくる。
帰り道、それ以上会話は弾まなかった。
二人は啓一の家へ続く道まで来た。
そこには小さな街灯がポツリとついている。
ここは、いつも二人が分かれる場所。
ここまで祥子が見送って、啓一は家に帰る。
それが二人のお決まりパターンだ。
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