「アンナさぁ~ん。練習に来ましたぁ」




ライブハウスに到着すると、二人をアンナが出迎えてくれた。


いつの頃からか、このアンナがライブハウスで働くようになった。




とても美しく、人生経験豊富なアンナは、地元の学生達の良き姉さんとして慕われている。


明るい性格で、ライブよりもアンナを目当てに来るお客もいるぐらいだ。




「祥子ちゃん、待ってたよ。啓一はまだ寝てるね?」




「そんな事ないっすよ。ちゃんと起きてますよ」




啓一はまだ寝癖が少しついている髪をかきながら、アンナに挨拶した。




「アンナさん、すぐスタジオ入れますか?」




祥子が元気よくアンナに訪ねる。




「大丈夫よ、蓮、準備は出来てる?」




アンナは練習スタジオのほうに声をかけた。




「出来てますよ。どうぞお二人さん」




スタジオの奥から、若い男性が出てくる。


彼もここでアンナと一緒に入ってきたアルバイト。




アンナとは逆に、少し物静かな蓮。


受付担当のアンナと、雑用係りの蓮。




「蓮さんこんにちは。借りますね」




ここでも祥子が前に出る。


周りから見ると、祥子が練習するようにさえ見える。

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