「あっもうこんな時間だ。急がなきゃ」




夏休みも半分が過ぎても、まだまだ暑い日々が続く。


クーラーのきいた涼しい部屋で目を覚ました祥子。




今日は、近所に住む幼ななじみの彼氏を迎えに行く約束をしていた。


時計を見れば、約束の1時まであと30分しかなかった。




急いで洋服を着て、簡単にメイクをした。


急ぎ足で階段を下りると、少し呆れた顔で母親が台所から顔を出す。




「やっと起きたの?高校最後の夏休みなんだから、少しは気を引き締めなさい。ご飯は?」




「いらない。行ってきまぁす」




祥子は逃げるように家を後にした。


彼氏の啓一の家までは歩いて10分くらい。




祥子は遅れてはいけないと、駆け足で啓一の家まで向かう。


幼い頃から何度も通ったその道は、祥子の思い出が詰まっている。




啓一の家は、山のふもとにある。


街灯も少なく、人がほとんど通らない寂しい道。




しかし、祥子は寂しさを感じない。


その道は大好きな啓一の家へと繋がる道だからだ。




舗装された道が終わり、左に竹やぶ、砂利が敷き詰められた道。


この道を過ぎれば啓一の家が見えてくる。

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